ECサイトにおいて「レスポンシブWebデザイン」では売れない3つの理由

水上 浩一

ネットショップ売上アップの教科書

水上 浩一です。

2017年12月に大阪EC実践会13期が終了しました。<br>(現在は14期絶賛開催中です)
今回も月商ギネス(最高売上の更新)ラッシュとなりました。
その中には元々大きな売上だったファッションジャンルのショップさんが<br>11月12月と連続で月商ギネスを更新され昨年対比142%という数字をたたき出すことに成功しました。
本当におめでとうございます!

こちらのネットショップさんに1月下旬、お話を伺う機会があったのですが、<br>特にスマホページの改修を積極的に行い、コンバージョン率を大幅に向上させたのが成果要因だとおっしゃっていました。
スマホサイトではモノは売れない、とおっしゃる方もいらっしゃいますが、<br>EC実践会ではこのようにスマホサイトでコンバージョン率を大幅にアップさせて、結果的に売上を上げることに成功している事例が数多くあります。
スマホサイトはうまく改修することで売上を上げることが可能なのです。<br>

ここで一つの問題点が見えてきます。
ネットショップ、特に自社ECサイトにおける「レスポンシブWebデザイン」の是非についてです。<br>(ちなみに今回は自社ECサイトにおけるレスポンシブWebデザインの是非を検討します。各種モールのECサイト、コーポレートサイトや情報サイト等、自社ECサイト以外については検討いたしません。ご了承くださいませ。)

レスポンシブWebデザインを、Googleは強力に推奨しています。
理由の一つには現在Googleが進めている「モバイルファーストインデックス」が影響していることは言うまでもありません。
また当方の検証において、PCページとスマホページでURLが異なる場合、SEO的には不利になるようです。<br>canonicalタグやalternateタグをGoogleのbotは100%読み込まないとの情報もあります。

今回は、「PCページとスマホページのURLが変わらない」ということを前提として<br>「ECサイトにおいてレスポンシブWebデザインは使わない方が成果が出やすい、特にスマホサイトにおいてコンバージョン率が高くなる、という理由を3つにまとめてみたいと思います。
なお、あくまで今回の情報はEC実践会の受講者様、弊社クライアント様等からのフィードバックを分析した結果となります。

また、リソースの問題等で更新の効率を重視しなければならないケースもあるとおもいます。<br>この場合は事情が異なるのでどこを優先順位にされるか、を検討することになります。<br>今回はあくまでスマホサイトのコンバージョン率の観点からの議論とさせていただきます。

■ECサイトにおいて「レスポンシブWebデザイン」では売れない3つの理由

●理由その1:
PCサイトとスマホサイトの構造を同じにしてしまうと階層が深くなりやすい


ネットショップのリニューアルを実施した結果、売上がリニューアル前の60%程度まで落ちてしまい、EC実践会に参加された受講者さんがいらっしゃいます。

商品数が多く、カテゴリや選択肢も多い商材だったため、階層を深くして選びやすくしようと考えて設計されたようなのですが、結果的にコンバージョン率が大幅に下がってしまいました。
特にスマホサイトでのコンバージョン率の下落は激しく、これが売上減に直結したことは明白でした。<br>
こういった事例はほかにも見られるため、
EC実践会では「スマホサイトではタップ数を減らした方がコンバージョン率は高くなる」と結論付けています。


極論を言えば、スマホサイトのトップページである程度、購入商品をユーザーが決めてもらえるような動線が重要だと考えています。
そのため、PCページとは必然的にページの構成が変わることになるのです。
ちなみに、よく聞かれる質問に「スマホトップページは長い方が良いのか?短くシンプルな方がよいのか?」というのがあります。

今、申し上げた通り、スマホサイトではトップページである程度購入商品をユーザーが決めることができるような動線が重要となりますので、結果的に長めのページになることになります。長いか、短いか?の視点では無くて、選びやすいか?どうかを検討した結果、眺めのページになる、という結論になります。

■ECサイトにおいて「レスポンシブWebデザイン」では売れない3つの理由

●理由その2:
PCサイトではSEOの観点からある程度テキストが必要だが
スマホサイトでは直感的に見せたいため、ボリュームのあるテキストは邪魔になる


ここ数年の内にはモバイルファーストインデックスに移行すると思いますが、現状を見る限りスマートフォンサイトの内容だけが反映されるといったことはなく、Googleは、スマホサイトの検索結果における検索順位の決定に、PCサイトの評価を利用しているようです。PCサイト・スマートフォンサイトの内容やページ数等「大きな差異」がないことが前提であることは言うまでもありません。

我々の検証ではSEOの観点からPCサイトにはある程度のテキスト量が必要だと考えていますが、ボリューミーなテキストはスマホサイトで見たときにユーザーの読む気力が萎えてしまい、離脱につながる可能性があります。<br>

スマホサイトではやはり直感的に商品やサービスをイメージしてもらった方が良いのでテキストは最小限度にとどめて、画像やイラスト、動画を活用した方が良いと考えています。そうなるとPCサイトではSEOを重視してテキストをある程度掲載して、スマホサイトではテキストを少なくしなければならず、必然的に異なるページ作りになる訳です。

しかしレスポンシブWebデザインではそれが難しくなります。
もちろん、CSSを駆使するとテキストを非表示にはできますが、全体のデザインを調整しなければなりません。

■ECサイトにおいて「レスポンシブWebデザイン」では売れない3つの理由

●理由その3:
そもそもPCサイトとスマホサイトでは画面のサイズが違うので
共通デザインにするのは無理がある


たとえばランキング表示させる場合、PCサイトでは5位~10位ぐらいまで、とたくさん表示させたいですよね?
でも、スマホサイトでは画面のサイズの関係で横に3位ぐらいまでしか表示したくない、と思ったときに融通が利きにくいときがあります。

また、実際の事例ですが、PCサイトをベースにしてデザインを制作したら、スマホサイトではトップページのファーストビューがすべてイメージ画像になっていました。

その後、スマホトップを改修してファーストビューにも商品の動線を設置したところコンバージョン率が上がった、というケースもあります。<br>
ページに設置するバナーについてもレスポンシブWebデザインの場合、PCページでは普通に見えるバナーが、スマホで表示された場合、文字が小さくて見えない、というケースもあります。そのため、スマホでの表示用のバナーを別に用意してデバイス毎に表示を変える、ということになりますが、結局どちらのバナーも読み込むことになるので、表示速度は遅くなる可能性があります。理由2のところでも書きましたがテキストのデバイス毎の表示、非表示のCSSもそのCSSを読み込むことになります。こちらも表示速度の低下に影響する可能性があります。スマホページの表示速度は2018年7月からSEOのシグナルになる、とGoogleも明言しています。

EC実践会や個別のコンサルティング案件では、ファッションジャンルや美容健康系の単品通販や作業服や安全靴等の型番商品まで様々なジャンルで成果が上がっていますが、ほとんどの事例における共通項の一つが「スマホサイトの転換率が劇的にアップした」という事実です。企業向けのB2B中心の自社ECサイトは50:50ぐらいの割合ですが、通常の自社ECサイトの場合スマホ:PCの割合が70:30、ファッションジャンルになりますと、それが90:10と圧倒的にスマホサイトからの流入が多くなっています。

特に、型番商品の自社ECサイトにおいては、レスポンシブWebデザインに変更したら売上が大幅に落ちてしまった実際の事例が存在します。

いろいろ検討した結果、レスポンシブWebデザインを断念してスマホサイトを独自に制作したら売上が以前の数字に戻っただけで無く、さらに月商で500万円ぐらいプラスになった事例もあります。

現在の自社ECサイトにおける環境が、

・現状SEOの観点ではテキスト量がある程度必要だが、スマホサイトではテキストのレイアウトに注意が必要。
・アクセスはスマホサイトの方が多くなっており、売上比率もスマホサイトが多い
・スマホサイトではタップ数を少なくした方がコンバージョン率が高くなる検証結果があり、その意味でもトップページである程度購入商品をユーザーが選択できる動線にした 方がよく、基本構造としてPCサイトとスマホサイトでは異なる。


以上の観点から自社ECサイトの場合、レスポンシブWebデザインは採用しない方が特にスマホサイトにおいて、コンバージョン率は高くなる=売上が上がる、と結論付けたいと思います。


著者

水上 浩一 (Mizukami Hirokazu)

ランチェスター戦略を軸にしたウェブ活用・地域活性化コンサルタント。
「水上 浩一EC実践会 for FutureShop2」講師
株式会社ドリームエナジーコンサルティング代表取締役
8月5日 東京生まれ、神奈川鎌倉育ち。
●EC実践会参加1年間で売上純増2億1000万円(梱包資材)
・県産生鮮品月商1億円超、生花生産直売月商4800万円、
・オープン80日で月商1100万円(ファッション)
・月商200万円→6ヶ月間で月商1450万円等(地域土産)等

ランチェスター戦略の効果的なウェブマーケティング活用を中心とした勉強組織
「水上 浩一EC実践会 for FutureShop2」を全国で展開中。
2017年3月現在17地域、受講者数は2400名を超える。
講演・セミナー回数は年間240回以上、通算2000回超。
ジャンルを問わず短期間で劇的なネットショップの売上アップ実績多数。
大手上場企業から生産者直売店舗等地域活性化までコンサルティング成果事例多数。

http://www.ecjissenkai.com/