11月11日と12月12日は世界最大のショッピングイベントになる?

佐々 直紀

中国発祥の「独身の日『双11』」(11月11日)と12月12日の「双12」が、ECサイトを中心としたショッピングイベントとして注目を集めています。前回の記事で取り上げたブラックフライデーのように、今後世界的なショッピングホリデーとして定着するのでしょうか。

Adjustは、中国の近隣国である東南アジア地域のモバイルユーザーに注目し、2017年の11月11日と12月12日のアプリ内行動にどのような特徴があったかを調査しました。

「独身の日」とは?

中国のECサイト、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は、中国人学生の間で良く知られていた「独身の日」を商業活動に利用しようと思いつきました。1が4つ並んでいる11/11が「独身」を強く連想することから、2009年に独身者をターゲットにした大セールをはじめて企画しました。その後イベントは中国で「双11」と呼ばれるようになり、2月14日のバレンタインデーと同等の商業効果が期待されるようになりました。2018年はマライア・キャリーが独身の日イベントに参加するなど、ショッピングだけではなく、エンタメフェスにまで発展しているようです。

2017年の独身の日24時間における売上げは「米国の5日間の爆買いシーズンより大きい」ものでした。実際にアリババの売上げは、中国だけで1,682億元(約2.9兆円)と、昨年より40%も上回る結果でした。取引の約90%が携帯端末経由で行われているという点も、アプリマーケティング担当者にとって注目したいポイントです。

今年2018年の総売上は2,135億元(約3.5兆円)で、そのうちの10億ドル(約1120億円)をわずか85秒で売上げる記録を作り上げました。

アプリが独身の日に与えた影響とは?

Adjustは、2017年第4四半期における東南アジア (SEA) のインドネシア、フィリピン、シンガポール、タイのモバイルユーザーをトラッキングしました。新規あるいは既存のユーザーがどのような行動を行っているかを、インストール数、セッション、イベントの3つの指標から分析します。なお、すべてのチャートは同国の四半期全体のパフォーマンスを示しています。

Adjustのデータによると、独身の日のアプリマーケットプレースにおける実績として、第4四半期全体の平均に比べて、インストール率の増加が47%から149%の間で確認されました。

特にタイの増加率は最大で、独身の日のインストールは149%の増加でした。その一方インドネシアの影響は小さく、わずか20%程度のインストール増加に留まっています。しかし、ユーザーが新しいEコマースアプリをダウンロードする傾向が高いなど、東南アジア全体が11月11日の影響を受けていることは間違いはありません。

セッションについてはどうでしょうか?アプリのダウンロード増加は、アプリ内行動の増加に相対するものなのでしょうか?

独身の日における東南アジア地域のセッション率

独身の日における東南アジア地域のセッション率

インストール数の増加だけではなく、独身の日をトリガーとしたセッション数の伸びは、タイで最高の167%でした。その一方シンガポールでは、四半期の他の日の平均よりわずか33%の増加に留まっています。

総体的に言えば、東南アジアにおけるセッション数の増加率は約53%ということになりますが、これはイベント数の増加率とどのように比較したらよいのでしょうか?

東南アジアでは11月11日にイベントが急増

独身の日におけるSEA平均のアプリ内イベント数の増加率は、その年の他のどんな時期に比べても2倍に急増しました。

タイにおける11月11日のイベント発生増加は208%で、全体のトップとなっています。シンガポールも決して劣らず、両国がアクティビティの増加に大きく貢献する結果となっています。

Adjustのデータで見る限り、独身の日のショッピングセールは東南アジア全体に浸透しているようです。

中国の双12はインドネシアで圧倒的な影響力

アジア全体に影響を与えているショッピングデー旋風は、双11だけではありません。

大手ブランドが仕掛けた独身の日に対抗して、当時小規模だったTaobaoが行なった12月12日のショッピングイベント「双12」は、一般消費者を狙った大セールやモバイル端末を使ったサービスの提供を行うイベントとして定着しつつあります。

12月12日当日には、東南アジア地域においてもインストール、セッション、イベントといったアクティビティが急増しています。

上のグラフは、11月11日(紫色)と12月12日(黄色)におけるアプリインストール数の増加率を比較したものです。

この結果で最も顕著なのはインドネシアです。昨年12月12日のインストール数は約170%増加するだけでなく、セッションも136%増加しました。インドネシアでは、中国の双12からアイデアを受けた「Lazada」(アリババが83%の株を所有)などのECサイトが、大規模なセールを展開しています。クリスチャンやカトリック教徒が宗教ボーナスをもらう時期とも重なっていることが、売り上げを更に伸ばしている要因でもあります。

フィリピンでは、12月12日のインストールが11月11日を凌ぐ13%の増加となり、イベントは21%増加しています。

中国で定着した双11と双12に見られる一大ECショッピングイベントは、国境を越えて東南アジアにも広がっていることが自社データの分析からもわかりました。東南アジアの国々ではスマートフォンの保有率が高いことから、モバイルマーケティング担当者は、この地域での11月と12月のマーケティング施策を十分に検討したいものです。


著者

佐々 直紀

1974年生まれ。2000年4月からデジタルマーケティングに携わり、オンラインモールのキュリオシティ、Yahoo!ショッピング、ショッピングサーチビカム、リターゲティング・DMPのVizuryにてAE、AM、マーケティング業務を経験。

2016年1月からTUNEの日本法人の立ち上げメンバーとして、本格的にアプリ計測分野に参入、2016年11月よりAdjustに参画。数々のスタートアップの立ち上げから軌道に乗せた経験を生かし、カントリーマネージャーとしてAdjustの日本オフィスを統括している。

Adjustは、モバイルアプリ向けのユーザーの行動分析、広告の効果測定、及びアドフラウド防止を可能にする総合的なモバイルアプリ計測プラットフォームです。Adjust SDK搭載のアプリのアクティブユーザーは世界で13億を超えており、グローバルで最も使用されています。

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