【連載コラム第4回】データを征する者は広告を征する!? 〜2016年ネット広告のトレンドワードとクリエイティブ戦略〜

安藤達也

【連載コラム第4回】データを征する者は広告を征する!? 〜2016年ネット広告のトレンドワードとクリエイティブ戦略〜

●過去コラム

【連載コラム第1回】媒体技術で考えるネット広告 〜2016年ネット広告のトレンドキーワードとクリエイティブ戦略〜
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【連載コラム第2回】インフィード広告の成功の鍵 〜2016年ネット広告のトレンドワードとクリエイティブ戦略〜
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【連載コラム第3回】今年は動画広告が勝負所! 〜2016年ネット広告のトレンドワードとクリエイティブ戦略〜
https://goo.gl/JO56SC

「何が欲しいのか?」を事前に知ること

突然ですが、みなさんは誰かにプレゼントを贈った経験はありますか?

その人に何を贈れば喜んでもられるのかを考えるのは、楽しい反面、とっても悩みますよね。せっかく買ったプレゼントなのに、「ほんとはこのブランドが欲しかった…」「この色は嫌いなの…」なんて悲しい経験をしてしまった人もいるかもしれません。でも、もし相手が「今、何に興味があって、どんなものをほしがっているのか」という情報を事前に把握することができれば、喜んでもらえる確立は格段にあがりますよね。

ネット広告では、このような相手の興味関心などの情報=データを活用して効果的にアプローチする手法が非常に増えています。今回のコラムでは、そんなデータ(≒ユーザーデータ)を活用したデータフィード型広告とそのクリエイティブについてご紹介したいと思います。

データフィード型広告:ユーザーデータの種類とその活用例

先にも書きましたように、事前にユーザーの興味関心やニーズを把握することができれば効果的にユーザーにアプローチすることができます。そのために必要なのは「ユーザーデータ」です。

「ユーザーデータ」と一口に言っても、その種類は多岐に渡ります。例えば、ユーザーがサイトへ流入した際のキーワード情報や、接触しているディスプレイ広告等へのアクション情報、また、サイト内でユーザーがどのような行動をしているのかというアクセス情報など、様々な行動データがあり、その活用方法も様々です。流入キーワードや広告接触データからはそのユーザーのニーズや興味関心を予測することができます。また、サイト内の行動履歴からは興味関心だけでなく購買の検討度合いなども分析することが可能です。

ECサイトを運用する場合、「商品ID」も非常に重要なデータです。ECサイトは構造上、ユーザーが欲しい商品を購入するまで、サイト内を回遊し、具体的な商品情報が記載された詳細ページから購入することになります。

商品詳細ページを閲覧している人は購入検討度の高いユーザーであると推測できますから、商品詳細ページを閲覧したユーザーに「商品ID」を付与することで「このユーザーはこの商品が欲しい」という具体的なデータとして保有することができるのです。そうすれば、このコラムの最初で書いたような「あなたのほしい商品はこれですよね?」というコミュニケーションが可能になるのです。

(例)ECサイト構造:ファッションECの場合
TOP-第二階層:大カテゴリ(アウター) -第三階層:中カテゴリ(コート)-第四階層:小カテゴリ(ダッフルコート)-第五階層:商品一覧-第六階層:商品詳細ページ

データフィードを活用したダイナミッククリエイティブ!

データフィードを活用したダイナミッククリエイティブ!

ダイナミッククリエイティブは、「データフィード」と呼ばれる商品名や価格、画像等のデータを動的に配信する仕組みを利用したクリエイティブのことを言います。

例えば、賃貸サイトで渋谷区のマンション詳細ページを閲覧したユーザーには、その物件情報がレコメンドされるのはもちろん、家賃の価格帯やエリア等が類似した物件情報を訴求することができます。つまり、ユーザーの興味・関心に応じたデータに基づいた、最適なクリエイティブを自動的に生成し、再アプローチすることができるのです。

ダイナミッククリエイティブは、ユーザー一人ひとりの興味・関心に基づいた広告を配信できるため、非常に広告効果がよい施策のひとつです。

しかし、これまではそのバナーテンプレートのデザインや構成がフォーマット化されていたため、さらに効果的なクリエイティブを追求するためにPDCAをまわして行く、ということが実行しづらいという課題がありました。

ダイナミック広告専用クリエイティブプラットフォーム:『CADY』

ダイナミック広告専用クリエイティブプラットフォーム:『CADY』

先述のような課題に対して、サイバーエージェントではダイナミッククリエイティブの効果を最大限に発揮させるためのオリジナルのテンプレートの開発・運用プラットフォーム『CADY ~CyberAgent Dynamic Creative』を開発しました。

CADYでは、弊社がこれまでに培ってきた広告クリエイティブのナレッジをベースとして、クライアントの業種・業界毎に効果の高いデザインテンプレートを用意し、運用可能な形でクリエイティブレバー(変数)をコントロールしていくことができます。これによって、従来のテンプレートに比べて200%以上の効果改善を達成した例もあり、今非常に注目されているサービスのひとつです。そのテンプレート例を、以下でいくつかご紹介します。

ダイナミッククリエイティブの今後の展開

ダイナミッククリエイティブは、データとクリエイティブが連携することで、ユーザーの意識に基づいた最適なコミュニケ―ションを可能にしました。しかし、単にデータに頼るだけでは、広告効果もいつかは上限に達してしまいます。

より効果的なアプローチを追求するためには、静的な表現だけでなく、動画やhtmlなどの動的表現も活用しながら、フィード内容の検証とともにそのクリエイティブテンプレートを検証していく必要があるのです。

どのユーザーに、どのフィード情報を、どのように掲載するか。その際のデザインやレイアウト、画像の掲載枚数、配色など、細かな運用を実行しながら、誰にも真似できないレベルのナレッジをマーケティングの資産として蓄積していくことが重要になるでしょう。


著者

安藤達也 (Tatsuya Ando)

株式会社 サイバーエージェント
クリエイティブソリューション局 局長
1983年 兵庫県生まれ。同志社大学卒。  2007年 株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部クリエイティブ局にてコピーライター、プランナーとして活躍後、同社大阪オフィスのクリエイティブテクノロジー局の立ち上げに従事。国内外の幅広いクライアントのWebマーケティング戦略の立案と実行を担当。その後、クリエイティブソリューション局局長に就任。現在に至る。