よそ様の、売れないと思った【売れる商品】から学ぶこと

幸田 八州雄

毎度、売れる商品は~云々・・・などと、臆面もなく述べさせていただいておりますが・・・。

恥を忍んで告白しますと、かつて「 売れる 」と思ったものが、あまり売れなかったり、その逆に、よそ様の作った商品で、「こんなもん、売れるわけないジャン! 」と思ったものが大ヒットしたり、ということがあります。

商品開発の過程において、市場のインサイトと向き合う時には、謙虚な気持ちでいないとダメだと思うのですが、私は思い込みが激しいタイプで、調子に乗ってしまうことも多く、そういう時には頭を冷やすために過去のハズレ事例を色々と思い出して頭を冷やすことにしています。

過去の大ハズレ事例でいきますと・・・。他社様の事例で、誠に恐縮なのですが、ヤマザキパン様が「ランチパック」を発売(※)した時に、「こりゃ売れる訳がない。ヤマザキパン(様)はなぜこれを発売したのか?」と他人事ながら心配になりました。

で・・・結果は、メチャメチャ大ヒット。果てはランチパック専門店などもできて、もはやヤマザキパン様の不動の看板商品と言ってよいでしょう。

要するに予測が完全に外れてしまったのですが、こういう時には、要因を深堀して考えることで、ヒントがたくさん埋まっています。そもそも、私がなんで「ランチパック」が売れないと考えたのかをご説明させていただきますと

 ①ランチパックのターゲットとしている層が、ランチパックでお昼を済ませたい、
  都会のOL層である(俗にいうF1層でも前半の方?)

 ②女性の自然派志向は年を追うごとに強まっている。

 ③そんな自然派志向の女性がお気軽にパッケージでランチを探すなら
  サブウェイのサンドイッチみたいな手作り感・フレッシュ感のあるものだろう。

 ④ビニル包装に密封された(工場で作られた)お惣菜サンドは、
  フレッシュなイメージとは言い難く、自然派志向全盛のこの時代に
  完全に逆行しているのではないか。

 ⑤(当時)コンビニはお店で焼いたパンをそのまま売るという
  簡易ベーカリースタイルが台頭しており、その場で焼きましたという
  価値を競って演出しはじめていた。
  これは私が感じていた、手作り志向・ナチュラル志向に沿ったものであり
  ランチパックはこれに完全に逆行する商品ではないか。

というようなことを考えて、「売れない!」と考えたわけです。

で・・・結果は大ヒット。大ヒットということは、上の私の仮説(売れない理由)のどこかに誤りがあったのです。

私はこの予測ハズレの要因を以下のように考えました。

 ①【コスメの消費者インサイトに基づいてランチパックを考えてしまった】
  私は普段コスメ・ヘアケア・健康食品等の商品開発を中心にやっているので、
  女性の自然派志向が最も強く出るジャンルで仕事をしている。
  その印象に引っ張られてしまい、自然派志向のバイアスが強く出てしまった。

 ②【ニッチ市場の消費者インサイトに基づいてランチパックを考えてしまった】
  私はいつも大手化粧品メーカーの発想からは出てこない、
  エッジの立った商品で、ニッチマーケットを
  ゲリラ的に攻略することを考えています。
  コスメの世界で、大きく自然派に向かう流れはありますが、
  実はまだまだ自然派というのはニッチマーケット。
  例えばシャンプーで空前のノンシリコンブームが来たが、
  実はシャンプー市場全体では全然ニッチ。
  私が毎日ニッチ市場(自然派)のことばかり考えているので、
  ニッチの消費者嗜好を、マスの消費者嗜好と混同してしまった。


これらが大ヒット商品ランチパックを「売れない商品」と判定してしまった理由だと思います。やっぱり予測を外したら振り返って外した要因を分析することで、経験値がたまっていくもんだなと思います。

自分の中のバイアスやズレを知ることができるのはとても大事なことだなぁと痛感しています。・・・と、ここまで書いて、私の隣の事務職の女性(26歳)にランチパックを食べたことある? と聞きました。

「ある」とのこと。

どんな時に食べたの? と聞くと、「急いで会社に行く途中で買って食べたことがある」とのこと。

お昼ゴハンで食べたことある? と聞けば、「 お昼ゴハンでは食べたことないですね~。お昼にランチパックはちょっとネ 」とのこと。

が~ん!!!

なるほど、ランチパック=ランチというのが、そもそも固定観念の産物だったのかもしれません。やはり、謙虚にお客様のナマの声を聴いてみることが重要ですね。

※ランチパックは1984年に発売されたロングセラー品のようです。キャンペーンを新発売と私が誤解していたのですが、市場認知度から考えたら新発売みたいなものだろうという、乱暴な考えで当コラムでは新発売扱いとさせていただきました。


著者

幸田 八州雄 (Yasuo Kouda)

OEM化粧品のメーカーとして『物』を売るのではなく
『お客様の売れるをつくる』を方針に掲げ、商品プロデュース、
販売戦略、インフラの提案に至るまでお手伝いしております。

企業URL:http://www.tenshindo.ne.jp/