ケースから読み解く「オムニチャネル」Vol.1

村石 怜菜

オムニチャネルという言葉を耳にするようになり、2年ほどが経過しました。米国を皮切りに広がったこのオムニチャネルは、今や小売業が事業を優位に展開する上で欠かせない取り組むべき重要戦略の一つと言ってよいでしょう。

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オムニチャネルはよく「顧客データや商品・在庫データを統合すること」と説明されますが、この言葉を鵜呑みにし、実行するだけでは本来期待されうる顧客への付加価値を生み出すのは難しいでしょう。

なぜなら、企業や業態によってオムニチャネル戦略の内容は異なり、オムニチャネル先進国の米国も現在進行形で模索し、進化しているからです。このコラムでは、オムニチャネルにまつわるケースを挙げながら、オムニチャネルについて考えて行きたいと思います。<br><br>

ケース1 オムニチャネル推進プロジェクトの担当になった。
オムニチャネルを実行したい。

オムニチャネルの目的・意義を理解していますか?

このケースは「オムニチャネルの実行」自体が目的になっています。まず、オムニチャネルを実行するにあたり、オムニチャネルという概念が出現した背景を理解することが何よりも重要です。<br><br>

顧客起点であるということを忘れない

オムニチャネル出現以前にも、マルチチャネルやO2Oという概念はありましたがオムニチャネル時代へと大きく突き動かしたのは、EC市場の拡大、スマートフォンなどのデバイスや、SNSが急速に普及したことです。

これらにより、消費者の行動は急速に大きく変化しました。

企業が介在しなくても、消費者はインターネットを駆使し、情報を入手し、商品を購入できるようになったのです。

そこで企業も消費者に合わせて様々なチャネルを用意し、“顧客にシームレスな購買体験”を提供しなければならないというのがオムニチャネルです。

ここで重要なのは、「オムニチャネルとは、顧客起点である」ということ。企業視点でオムニチャネル戦略を展開しても、顧客に「便利!」「気づいたら(自然な流れで)購入していた!」と感じてもらえなければまったく意味がありません。

そこを理解せずに、「会社がオムニチャネルをやれと言ったから、オムニチャネルをやった」結果、顧客にとって何らメリットがないのでは、本末転倒です。

まずは、「何のためにオムニチャネルをするのか?」という目的を明確にしないと、そのプロジェクトは難航するか、もしくは頓挫する確率が高いでしょう。<br><br>

多様なチャネルに精通していますか?

よく見受けられるのが、現場を理解していない人たちだけで、プロジェクトが進んでしまっているケースです。

オムニチャネルというだけあって、リアル店舗はもちろん、ECサイト、Webサイトをはじめとするオウンドメディア、POSや基幹システム、物流、販促やマーケティング担当…と、

様々なチャネル・システムが密接に関係してきます。プロジェクトに各チャネルのメンバーに参加してもらうようにし、企業として、様々な視点から検討を深めることが重要です。<br><br>

まとめ

今回はオムニチャネル戦略を始めたい、という場合によく見られるケースをご紹介しました。ポイントは、「オムニチャネルは顧客起点である」「企業としてプロジェクト体制を組む」ということです。

次回は、ケース2「現場主導のオムニチャネル」について解説します。<br>


著者

村石 怜菜 (Reina Muraishi)

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日本女子大学卒。大手専門店企業で接客販売・店舗運営を経験した後、
Eコマース支援企業で数々のファッションブランドのECサイト構築・運用に携わる。
専門店や商業施設へのECコンサルティングを得意とし、
顧客企業のオムニチャネル戦略の実行を支えている。

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