2018年の中国越境ECのトレンドは?中国越境市場の最新裏事情~JECCICA勉強会

古西なつ子

他では聞けないホットな情報を学べると評判のJECCICA勉強会が開催されました。第6回は「複雑化する中国越境ビジネスの実態と裏話」。

二兆円以上の市場規模に成長したといわれる日本から中国への越境ECに精通した白川久美氏(withRiver株式会社代表取締役社長)を迎え、現状と今後の展望をレクチャーしていただきました。白川氏は、アマゾンや楽天、ウィリアムソン・ディッキージャパンなどを経て中国越境ビジネスの第一線で活躍中。

「え、そうなの?」と目から鱗の中国越境ECの裏話を抜粋してご紹介します。

中国越境ECの現在~大量の商品はどこから出回るのか~

中国越境ECの現在~大量の商品はどこから出回るのか~成長著しい中国EC市場

越境EC初期は、個人輸入目的でマツキヨやドンキのような小売店で人気商品を購入。
その後、個人、中小レベルの出店者がタオバオで販売し、日本からEMSでエンドユーザーに発送する転送ビジネスへ拡大…。
中国越境の成長期に主流となった、代理購入(代購)を使ったビジネスモデルは、現在では下火になってきています。
中国税関が転売目的の個人輸入が増大し、EMSの取り締まりを強化。EMS料金も上がって利益がでにくい状況となったためです。

今、中国越境ECの中心は越境ECプラットフォームに移行しました。
個人輸入メインの初期から、成長期を経て、中国越境ECは現在T-mallを始め、KAOLA 、唯品会(VIP)JD.com、小紅書(RED)、ワンドウなどのプラットフォームが主体となっています。

爆品と言われるホットアイテムは中国の保税区に入り、越境ECプラットフォームで売られています。
販売されている商品の多くは、越境ECプラットフォームがメーカーや問屋・ブローカー経由で買付けて、保税区へ大量に輸出しています。
では、こうした商品はどのようにして集めているのでしょうか?

爆品(ホットアイテム)の多くは、横流しによって集められています。
国内卸の二次問屋、小売店などが、日本国内販売用仕入れ分として問屋やメーカーに発注しその一部を中国向け仲卸やブローカーに流していることが多々あります。また、ドラッグストアなどのリアル店舗がブローカーに販売し、それが越境プラットフォームに流れていることもあります。

3.15事件の衝撃。中国ならではのリスクとは?

3.15事件の衝撃。中国ならではのリスクとは?中国越境ECの現状について解説する白川久美氏

2017年3月15日。
この日、日本の食品メーカーに衝撃が走りました。
中国で消費者を守る日、とされるこの日に、無印やカルビーなどのメーカーが大きな打撃を受けたのです。
「日本の食品メーカーが産地を偽装している」と報道されたためでした。
この日を境にして、越境プラットフォーム上から日本の食品メーカーのサイトは全部消えてなくなりました。

3.11から6年経過した今でも、中国では一都十県でつくられた商品が放射能汚染地域とされ輸入禁止対象となっています。
例えば、カルビーのケースでは、今年の3月15日の時点では、カルビーのフルグラは栃木県の工場で生産され、輸入禁止地域で生産した商品に該当します。
それでも中国消費者の間でフルグラは、大人気だったため、中国の小売業者は、香港経由で本土に流していました。
3月15日以降、フルグラは、香港から本土への持ち込みができず、また越境プラットフォームも販売を停止。そのため、フルグラは、香港市内に溢れました。

その後カルビーはTモールに旗艦店を出店したものの、消費者にとっては、産地偽装した食品メーカーの印象が残り、また価格統制を行ったため、実質的に値上げとなりました。3月15日以前のような爆発的な人気はなくなり、現在ではオーストラリア産のシリアルフードに人気が移ってきています。

一夜にして中国マーケットの状況が急転しうるというのは、中国は「政治経済」と言われる所以でもあります。日本のメーカーが中国越境ビジネスへの進出に二の足を踏む一つの理由かもしれません。

失敗事例には共通項があった!中国越境ECでやってはいけないNGは?

失敗事例には共通項があった!中国越境ECでやってはいけないNGは?日本の商品を手に取る人々

人気俳優が紹介して中国で人気になったある商品がありました。
現在では価格が半額まで下落。在庫を抱える事態に陥っています。
どうしてこんな状況になったのでしょうか。

原因は、商品を販売するために必要な授権書を多くの相手に渡してしまったこと。
売り手が多くなりすぎ、買い手が相見積もりをとりやすく、買い手が優位になり、商品価格が値崩れを起こしてしまったのです。需要と供給のバランスが崩れてしまったことで、小売店も値下げ合戦に陥っていきました。

中国越境ECでは販売チャネルを管理し、価格をコントロールすることがポイント!

中国で“最近のホットアイテム”は、例えば小林製薬(アイボンや熱さまシートなど)、ファンケルのHTCコラーゲン、MTG美顔ローラー、キャンメイクなど。
日本とは嗜好の違いもあり、美容サプリ系は、溶かして飲む粉タイプはあまり人気がなく、手軽に摂取できるドリンクタイプが人気です。
また、化粧品では、いわゆる百貨店ブランドと言われるカウンセリング化粧品、また訪販ブランドもの商品も人気です。CPBやPOLA,アルビオンなど。

中には日本国内での知名度は低いのに中国では、爆発的に売れている商品もあります。
KOL(Key Opinion Leader)と言われるブロガーや人気女優や男優がブログなどで紹介して人気に火がつくことが多いようです。

中国で長く売れ続けているブランド、商品は、価格コントロールと販売チャネルの交通整理がしっかりできているのが特徴です。

一方、現地法人をもっているメーカーやブランドは、現地法人との摩擦もあって、越境の販路への進出に時間がかかっているところが多くみられます。
中国国内へ輸入し中国国内品としての販売価格が越境ECプラットフォームと比べて販売価格が割高となりため、同じ商品において、二重価格となってしまいます。そのため、ネットで商品を買う若い世代の人は価格の安い日本からの並行輸入品を買い求めます。
そうなると当然、現地法人からは、並行輸入品を売るなと日本に対してクレームがあがります。

ちなみに商品名や会社名は、「小林製薬」のように漢字だとよく覚えてもらえるようです。

2018年の中国越境EC予測。伸びるプラットフォームは?

2018年の中国越境ECはどうなっていくのでしょうか。

一点目は、越境ECプラットフォームの二極化です。勝ち組と負け組に二分化され、大手二社の寡占化が進んでいる、といいます。
(東京三菱UFJのレポート https://reports.btmuc.com/File/pdf_file/info001/info001_20170822_001.pdf)。

勝ち組は、KAOLA(考拉)とTモール(天猫)。
KAOLA(Kaola.com)は中国の越境ECモール大手。
偽物が多いタオバオと比べ、信頼性が高いのが特徴です。
KAOLAは今後日本では、型番製品だけでなく、非型番製品やプライベートブランドの商品も積極的に扱っていくと発表しています。

二点目は、ブプラットフォーム自身の日本への進出。
仲卸しやブローカーを通じた取引ではなく、メーカーや問屋から直接仕入れて口座を開設し、利益改善を図る動きがあるそうです。

中国越境ECの注意点!ここは押さえたいポイントとは?

中国越境ECの注意点!ここは押さえたいポイントとは?講師と距離が近く白熱した勉強会に

JECCICA勉強会は、直接講師に質問できるのが魅力!
質疑の時間に出たトピックも含め、中国越境ECの注意点をまとめてみました。

①販売チャネルを管理し、価格をコントロールすること
②在庫をかかえるのはリスク。在庫は抱えないこと
③お金を受け取ってから取引すること
④商標はすぐ取得しておくこと
⑤二重価格を避けること

また、ビジネスを考えている人は、
・将来性のあるブランドを押さえて独占権をもつ。かつ忍耐強くブランドを育てることが重要
・人気女優や人気ブロガーなどインフルエンサー(Key Opinion Leader)の活用
を検討すると良いようです。

中国の消費者は、日本の商品を使っていてもそのメーカー名を知らないことが多々あるといいます。
だからそのメーカーが新しい商品を出しても、それが売れるとは限りません。
中国の消費者は、まだ“このブランドが好きだから、このブランドの商品なら買い求める”というより“この商品が好きだからこの商品を買いたい”という志向が強いです。

今後、日本企業は、“ベストセラーよりロングセラー”を目指していくために、しっかりとブランディングして、中国における社名の認知、信頼度向上に努めることが最重要課題になりそうです。

勉強会を通じて、中国越境ビジネスは、内情を知り尽くしたエキスパートに助言を求めるのがベスト! だと感じました。

【講師・白川久美氏】
白川久美氏(withRiver株式会社代表取締役社長)
・越境EC、物流など全般のコンサルティング
・中国越境EC出店サポート、運営サポート
・越境向けの商品のプロモーション、ブランド認知度向上施策
連絡先:shirakawa@withriver.co.jp

次回勉強会はアマゾン手数料!

次回のJECCICA勉強会は松橋正一氏を講師に迎え、『Amazon販売手数料率を探る』のテーマで開催されます。
出品商品のカテゴリーによって5.6%~45%と大きな幅のあるAmazon販売手数料。
商品を分類するブラウズドノードの14750件のうち、実に4割もが重複しているそうです。
カテゴリーによって同じ商品の手数料が安くなったり高くなったりしている!?

開催日:11月20日18時より
開催場所:清水さんPCルーム

他では聞けないトップランナーの話が聞けるJECCICA勉強会はJECCICA会員であれば参加可能です。→ http://jeccica.jp/page-36/

勉強会の後は、ハロウィン前夜で賑わう渋谷で懇親会が開かれました。
あたたかな鍋をつつきながら、さらにレアな裏話も飛び出し、楽しかったです!
月曜からお酒を飲めるって幸せですね。

JECCICAの懇親会は、初参加でも人見知りでも楽しめます。
セミナー後の懇親会、勉強会の懇親会ともにおすすめです。
http://jeccica.jp/page-36/


著者

古西なつ子 (Natsuko Konishi)

出版社などを経て、ライターとして入社した会社でネット通販に携わるように。モール店舗運営、分析、OEM商品開発、LP作成、中国仕入れ、卸、ブログ関係の業務を行う。