今さら聞けない!「掛け率」の意味とは?計算方法や相場、関連用語を解説
流通業を営む事業者であれば、必ず耳にする「掛け率」という専門用語。なんとなくその意味はイメージできるものの、正確に用語を説明するのは難しいのではないでしょうか?
今回は、「今さら掛け率について聞けない!」という方のために、用語の解説や計算方法などの基本を解説していきます。店舗経営やビジネス、営業職を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
「掛け率」の意味とは?
まずはじめに、「掛け率」の意味について解説していきます。
掛け率とは販売価格に対する原価の割合
「掛け率」は商品の販売価格に対する原価の割合を指す言葉で、「掛け率〇〇%」のようにパーセンテージで表示されます。
一般の消費者に販売する価格を販売価格、商品の製造元であるメーカーや卸売業者から仕入れをするときの価格を仕入れ値と言い、販売価格に対して仕入れ価格が何パーセントの割合なのかを表すことで、仕入れ価格がいくらなのか分かるようになっています。
具体的な数字で例を挙げると、販売価格1,000円の商品を仕入れるにあたって、取引条件の掛け率が50%だとします。その場合、仕入れ価格は「1,000×0.5=500」で、仕入れ価格は500円です。ちなみに、実際に現場で使われる「掛け率」の表示方法は、「5掛」「6掛」など、送り仮名の「け」を省略して使われます。「5掛」の場合は、5割または50%で、パーセントとは言わず「掛け」と使われることが多いのが特徴です。
「掛け率」と「仕入れ原価率」の違い
「掛け率」と似た専門用語に、「仕入れ原価率」というものがあります。「掛け率」のことを、商品を仕入れる側からは「仕入れ原価率」と言い、「掛け率」と同じ意味で使われます。
その他にも、卸業者が小売業者に商品を卸す価格のことを「卸値」、小売店が卸売業者から商品を仕入れる価格を「仕入れ値」と呼び、「卸値」=「仕入れ値」ということになります。
つまり、卸業者側にいるのか、仕入れ側にいるのか立場によって呼び方が変わってくるということです。いろいろな呼び方があって混乱したときは、誰がどの立場に立って何をするかを考えてみると良いでしょう。
「掛け率」の計算方法とは
実際にビジネスの商談などで使われる「掛け率」は、どのように計算して使われるのか解説していきます。「この商品は何掛けですか?」という問いに対し、「5掛けでお願いします」という返答が一般的です。計算式を使って算出するシーンはたくさんあるので、ぜひ覚えておいてください。
卸値を求める場合
「卸値」を求める場合の計算方法は、以下の計算方法を使います。
「卸値」=「小売価格」×「掛け率」
例:小売価格が1,000円の商品を掛け率50%で卸す場合の卸値は?
「1,000×0.5(掛け率)=500」で卸値は「500円」ということになります。
掛け率を求める場合
「掛け率」を求める場合の計算方法は、以下の計算方法を使います。
「掛け率」=「卸値」÷「小売価格」×100
例:小売価格が1,000円の商品が卸値500円の場合、その掛け率は?
「500÷1,000×100=50」で掛け率は「50%」になり、「5掛」です。
掛け率をソフトで求める場合
ここまで、掛け率の計算方法について解説してきましたが、掛け率の計算にはソフトを利用するのがおすすめです。ソフトは、普段から利用している人も多い、Excelが一般的で、計算式を入力してしまえば一気に計算できますし、パーセンテージの表示も便利になります。数字を変えるだけのため、計算式の入力ミスや作業負担も減り、正確な数字をExcel上で保存できることもメリットです。
「掛け率」の相場を把握しよう
続いては、一般的な「掛け率」の相場について、業種や商品別に解説していきます。メーカーとの取引条件によっては、同じ業界であっても相場は変わってくるため、それを踏まえた上で参考にしてみてください。
業界別の相場
「掛け率」の相場は、業種によってある程度決められています。例えば、アパレル業界なら50%~60%、食品業界やおもちゃメーカーは70%、飲食業界では40%と言われています。「掛け率」の相場に決まりはなく、卸す側と仕入れる側の関係性や季節のトレンド、ニーズによって変動することも多いです。そして全ての業界で「掛け率」や「原価」は、利益計算にも関わってくる問題ですので、一般の消費者に公開されることはありません。
「訳アリ商品」の掛け率
季節外れになった商品や、トレンドが過ぎた商品、または目玉となる商品などは、相場より低い「掛け率」で卸す場合もあります。このような「訳アリ商品」や「目玉商品」は、通常の相場より低い掛け率で卸すことがあるため、その都度設定が行われるのが一般的です。もし、仕入れたい商品の相場が分からない場合は、メーカーや卸業者に直接確認してみるか、企業のサイトに明記されていないか確認してみましょう。
交渉次第で掛け率は変わる
上記でも書いたように、相場はあくまで目安で変わる可能性があります。そのため、交渉次第では、自社に有利な掛け率で取引を行うことも可能です。食品業界であれば、農作物(野菜など)の収穫高の影響や、トレンドや顧客ニーズの変化、商品の原価の変動なども関係してくる要因になります。それらのタイミングや、そもそもの取引先との関係性や実績を考慮して、交渉の余地があるのか再検討してみましょう。
「掛け率」の関連用語と意味
「掛け率」のように、仕入れに関する専門用語は、他にもたくさん存在します。そこで、卸業者や小売業者などが頻繁に使う「仕入れに関する専門用語」を解説していきます。似ている言葉でも使い方や意味が違うこともありますので、ぜひ参考にしてください。
原価率(原価)
「卸値」や「仕入れ原価」など、立場によって呼び方が変わってくるという解説を先ほどさせていただきました。しかし、この「原価率」や「原価」は、ビジネスの場でよく使われる一般的な言い方で、そのどの立場にも該当する呼び方を指します。同じ数字を指していても、呼び方が変わってくる「卸値」や「仕入れ原価」とは違い、単に「原価」「原価率」と言われるのが特徴です。
値入率(値入額)
商品の販売価格を決める際に「値入率」や「値入額」という数値を使います。商品の販売価格と、仕入れ原価の差額の販売価格に対する比率を表したものです。「値入率」や「値入額」の計算式は、以下で計算することができます。
「値入率」=値入高(販売価格―仕入原価)÷「販売価格」×100
具体的には、仕入れ原価が200円で、1,000円の商品を販売する場合の値入率は80%。つまり、80%の利益が見込まれる場合、その仕入れ原価は200円で、値入額は800円ということになります。
粗利益率(利益額)
「利益率」や「粗利益率」は、実際に販売した商品の売上を元に計算します。利益に「粗」と付いている意味は、人件費などの様々な経費は省き、単純にどれくらいの売上を上げたかを示すものです。「利益率」の計算式は、以下で計算することができます。
「粗利益率」=(売上金額―仕入原価)÷「売上金額」×100
具体的には、仕入れ原価が200円で、1,000円の商品を販売する場合、この商品の粗利益率は80%で、粗利益額は800円ということになります。
(1,000―200)÷1,000×100=80%
まとめると、「値入率」や「値入額」は販売前に想定する値を表し、「粗利益率」や「利益額」は、販売結果後に算出する値という違いがあります。目標とする売上げを達成できるよう、売れ残りや商品ロスを見込んで値入率を決めるようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?卸業者や小売業者などが、仕入れの際に使う「掛け率」について解説しました。「掛け率」は販売価格に対する原価の割合で「掛け率〇%」と表示しますが、実際のビジネスの場では「〇掛」という言い方をします。
今回ご紹介しました「掛け率」だけでなく、仕入れを行う事業者が頻繁に使う関連用語もしっかり理解して、営業や商談の場で活用してみてください。