盛況!JECCICA定例セミナー。シニアと地方の攻略法

石郷“145”マナブ

シニアの実態と、地方における成長の可能性に迫る講演

一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会JECCICA(以下「ジェシカ」)は、9月18日に都内で定例セミナーイベントを開催した。ジェシカはEコマーススペシャリスト、Eコーマスコンサルタントを養成し認定する協会。Eコマースを支える人材育成のため、ECコンサルタントを養成し、コンサルティング業だけでなく、EC運営に必要なノウハウを体系的に学べる資格を取得できる。

■第1部 「『シニア顧客』をガッチリつかむ!ECサイトの作り方」
セミナー講師:セミナー講師 マミオン 佐藤純氏

■第2部「地方ECの今とこれからについて、そして生き残る為に必要な3つの経営ポイント」
セミナー講師:小林厚士氏

■その場で解決!EC公開ミニ相談会

まず、最初に登壇したのは、マミオン 佐藤純氏だ。現在はマミオン有限会社にて、パソコン教室インストラクター兼ユーザビリティコンサルタントとして従事。高齢者と毎日自然に接することができる環境を活かし、シニアマーケティング調査や、アイトラッキング装置を用いたシニア向けウェブサイトのユーザビリティコンサルティング、各種講演活動等を行っている。

まず、氏は、シニアに向けてどんなアプローチをするのか、ということで、シニアに対する年齢の意識を、来場者に質問した。
シニアって何歳からだと、シニア世代は思っていると思いますか。
実は、同氏が調べたところによると、シニアは、60.9歳から、同様にシルバーでは、68.5歳だったという。実際の年齢については、歳をとるほど、自分を若く見せるという傾向はあるが、それは25歳くらいから始まり、45歳くらいから、マイナス5歳で見られたい、というのが同氏の調べたところだ。

ただ、実際、気持ちで若く思っているせいか、体力テストの結果を出してみると、5歳ほど若返っているデータもあり、実際に体のほうも、だいたい5歳〜10歳、若返っているという話もあるそうだ。そんな人たちは、ECで物を買うというとPCのようだが、最近では特に、iPadを欲しがる傾向が見られるようだ。パソコンの買い替えでそれを使いたいと、それを挙げる人がいるようで、その理由としては、スイッチ入れてから待たされることがないから、としている。これは、逆に言えば、起動に何分も要する、古いパソコン、すなわち、Windowsの初期バージョンを使っているために、でてきている声でもあるように思われる。でも、それがシニア世代におけるパソコンの実態でもある。
 
 若く見せようとする半面で、例えば、シニア割引といったものには、目ざとく、シニアのつもりはないけど、割引になるなら、使おうという人は多いので、そういったものは、アプローチの仕方としては十分ありだとした。オンラインショップにおいて、こうしたシニア世代に対して、有効なのは、リスティング広告とメルマガだ。

シニアの実態は?シニアにはシニアの売り方がある

シニアの実態は?シニアにはシニアの売り方がある

 リスティング広告を挙げる理由として、自分で検索を使うのは、苦手としながらも、複雑ではないキーワードであれば、それが有効だとする。大抵のシニア世代は、自分では一語しか入れない。けれど、入れた時に出るサジェストによって出てきたものであれば、複数キーワード検索を、使うことはかなり多い。また、この広告携帯が有効である、大きな理由は、若い世代ではすぐに気づくリスティング広告であっても、シニア世代では、6人いれば、5人が検索結果だと思ってクリックしてしまう、という点からだ。

 続いて、メルマガ。必ずしも取ってくれる人は多くはないが、割引クーポンがついた時の反応が極めてよいので、有効だとしている。メルマガに、割引クーポンなり、お得なセールなどの情報を訴えかけた時の反応は、若い人におけるそれよりもよく、メルマガとセール要素を結びつけて、確実に購入に導くスタイルが、この世代には効果的だとした。時間帯としては、比較的起床時間が早いのか、朝の10時から12時が有効だとした。

 では、サイトにおけるコンテンツの見せ方、デザインはどうしたらいいのか。ナビゲーション上、カタカナ言葉を避けるといったことは、必要だが、字の大きさはそれほど、気にする必要はない。その理由として、シニア世代は、最初から文字サイズを120%で使っている人は多く、場合によっては、モニターに向かって、老眼鏡をもってきて、文字を確認するので、そこまで気にする必要はないのだという。ただ、操作の問題として、マウスオーバーを使ってメニューが開かれるようなちょっとおしゃれなタイプのものは、避けたほうがよさそうだ。マウスオーバー自体を苦手とする人が多いからだ。

 他で言えば、行間、コントラストを大事にすることが重要だとしていて、例えば、比較対象を明確にする、といったことだ。多くは、商品などを買うにあたっても、結構な回数、商品と商品を行ったり来たりをして、見るお客様が極めて多いことが明らかになっており、そういうことを考えれば、表組みで見せたり、一覧で見せることで、見やすくする、ということは購入にあたっては、大きな影響を持つ、という。

 ただ、最終的に、商品を購入する際の決め手となるのは、会社情報。会社情報については、厳しく判断されることから、電話番号を目のつきやすいところに記載すること、そして、何かあった場合の受付時間を見やすい場所に置くことが重要だ。実際には、電話をかけなくても、電話で受付してくれるということで信頼感が増すのだそうだ。

 このセミナーにおける指摘は、若い世代を対象にした、ECでの購入とは明らかに異なる。シニア世代だからといって、インターネット通販を使わないわけではなく、インターネット通販をしていただく環境にできていないことが、シニア世代がまだインターネット通販に縁遠い印象になっているに過ぎない。運営者側の意識次第で、まだまだ取り込めていないシニア世代を味方につけて、更なる売上の向上は目指せるとして、来場者に大いなる希望を与えてくれた。

売り方も難しい地方における商売のあり方

売り方も難しい地方における商売のあり方

 つづいて、登壇したのは、長野市に拠点を置き、WEB総合マーケティングコンサルティング業務を行う、小林厚士氏。テーマは、「地方ECの今とこれからについて、そして生き残る為に必要な3つの経営ポイント」とし、現在における地方における企業の実態が明らかにされ、非常に興味深い内容が続いた。

 まず、地方の今を分析してみよう。すると、地方においては、圧倒的に、中小企業が多い。中小企業を定義づけるとするならば、製造業、5000万円以下の会社など、従業員200人以下の会社となっており、規模はまだまだ大きいとは言えず、苦戦を強いられている企業も少なくないという。

 なぜなのか。その理由として、EC専業の企業が少ないということが挙げられる。とは言え、実際、景気が悪い業態が続いていて、本業自体に打ち込むのが精一杯で、ECどころではない、というのも実態のようだ。また、一時期にあった強引なリース契約などで、しっかり見てそうした契約を取り入れなかったりして、結局はお金を払うだけで、ほぼ何もメリットは一切なかったとかで、ウェブやEC等に嫌悪感をもたれているという現状もある。更に、地方セミナーがここ3年間乱立していたので、皆、加盟はするけど、なかなか運営もできず撤退をしているところも多く、結局、ECとの距離は縮まらないままなのだ。それにより、地方で、複数の店舗が集まって、勉強会をやるものの、仲良しクラブにすぎなく、情報の共有はできているけど、これといって良き戦略や対策が打てていない。

 また、販売促進をするとなると、ローカル新聞などには広告費出しているのに、ウェブに予算が出せない。企業によっては、ローカル新聞に200万円を広告に出しているのに、ウェブの予算5万円が出せないというところもなくはないのだ。これではいつまでたっても、ECが発展するはずがない。

 ただ、売り方でいうと、難しい部分があるのも否定できない現状だ。地方というと、思い浮かぶのが、特産品というところになるが、それらも地方特産品なので、年間を通じて、同じものが販売できない。例えば、川中島白桃という人気の地域特産品はあるが、実際のところ、8月中旬〜9月でしか販売できない。たかだかその数週間を勝負するために、ウエブの構築を徹底し、集客をどうすればいいのか、そこの部分まで思考が行かないというのも自然ではある。であれば、運営代行を依頼すればいいが、それが浸透していないという状況だ。

地方企業が、戦略を見直すことで、大いなる発展も!

 そして、収穫時期の問題だけでなく、実際、そもそもの流通量が極めて、少なかったりするというのもあるようだ。果樹でいうと、一番人気なのが「ナガノパープル」という品種だが、これの取れるエリアが、極めて狭い。本物を入手できるのが何人いるのか、という状態である。実際、この品種が100トン未満しか収穫されていないというのだ。

 では、そうした地方企業の中において、勢いを伸ばしている会社は、どういう会社なのか、といえば、やはり、ECや通販を効果的に活用しているところということになる。最初からECや通販など、媒体を活用することを前提に戦略を組み、まずは、年間通して売れる環境づくりをする。それだけで、利益率はある程度、確保できるようになってくる。なぜそうすることが必要なのかといえば、生産者は購入業者から、二束三文で買い叩かれるため、利益がなくなるからだ。紙通販をやりながら、ECもやることで、きちんと利益を担保して商売ができるのと、年間売れる事業計画を立てることで、安定した収益が少しずつ保たれるようになってくる。

「数値的なものでみると、日本ネット経済新聞社のネットショップにアンケートをとった売上をでは、150位以下169位くらいになってようやく徳島とか岡山が出てきて、312位で東北が、411位までくるとほぼ地方で埋まるという状態で、まだまだ地方でインターネット通販などを活用して、企業として成功を収めているところは少ない。でも、だからこそ、逆に伸びしろがあるというのも地方企業のポイントだと思います。地方であっても、EC店舗運営者であればやっていける可能性が高く、一事業主という感じではなく会社としてきちんと経営が行われている会社は成功率が高いので、そこで変われるかが今後の地方経済の大きなポイントとなる」とも氏は、付け加えた。

 まだ知り得ていない地方経済の状況を知り、今こそ、勢いを変えなければならない。勢いのある企業は、ただ生産し、ただ売るというところから、もう視点を変えている。生産者の気持ちの変化が必要かもしれない。いち生産者ではなく、企業らしくやっていくための事業計画を練っていく、そこから始まる第二ステージ。

 その一歩が、地方に明るい未来を灯すのかもしれない。そして、その安定した基盤を作る上においては、勢いのある会社に見られるように、インターネット通販や紙通販といったものは、必ずや明るい未来を作る礎になりうる、と言えるのではないだろうか。

 今回の講演では、世代や場所によって、まったく取り組むべき施策を大きく変えていく必要があることが良くわかった。現状を把握し、また考えさせられる内容でもあった。この講演における一つ一つのメッセージが、また新たなECや通販を作り出す。JECCICAの次なる講演にも期待したい。

次回は、こちら
10月16日(金)15時スタート
■第1部 セミナー
一瞬で記憶されるサイトを作る!
セミナー講師 JECCICA客員講師 松本賢一氏(マツケン)
■第2部 セミナー
アパレルECのCRMとブランディングの成功術
セミナー講師 JECCICA理事 松本順士氏
*今回のセミナーは無料です。
■交流会 18時~
交流会は実費となります。場所は当日お知らせいたします。

■開催場所
GMOペイメントゲートウェイ株式会社
大阪府大阪市北区大深町3番1号 グランフロント大阪タワーB23階
セミナールーム
詳しくは http://jeccica.jp/post-1165/


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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