物流フォーラム開催、ヤマトと日通がなくす物流の国境

ECのミカタ編集部

アジア・シームレス物流フォーラム2016開催!

 5月19・20日の二日間にかけて、「アジア・シームレス物流フォーラム2016」が開催された。当イベントの開催テーマは、「つながる・流れる、物と情報 ”アジア善隣物流”で日本とアジアの競争力向上へ!」となり、発展を続けるアジア各国との一体化を進め、国内物流と国際物流をシームレス化するための現状と課題を浮き彫りにし、「アジア物流連携拡大」への最新情報取得や企業との交流を目的としている。

 EC業界にとって物流が重要であることは言うまでもない。そして、各EC事業者による越境ECへの取り組みが活発化してきているなかで、当イベントの出展企業である、ヤマトグループ、日本通運株式会社(以下、日本通運)の2社には、物流のシームレス化に対してどのような動きをしているのか、お話を伺ってきた。

アジアと日本を近づける、ヤマト”サザンゲート”とは

アジアと日本を近づける、ヤマト”サザンゲート”とは

 まず、最初にヤマトグループのブースへと向かった。ヤマト運輸は、今回の展示会で、物流のシームレス化を目指すためにどのような取り組みを行っているのだろうか。そのひとつとして、”サザンゲート”の存在があった。”サザンゲート”とは、沖縄県にあるグローバルロジスティクスセンターであり、ちょうどアジアの真ん中に位置していること、24時間通関に対応していることから、アジア諸国への配送に素早く対応できる。

 「特にメーカー様のご利用が多いのですが、サザンゲートではあらかじめ在庫を預けていただければ深夜に配送し、その日の午前中にアジア諸国への配送が完了します。」

 もはや、日本において物流のスピードを上げることは当たり前となってきているが、今度は海外に向けての配送も素早く対応することが求められてきている。その”スピード”を、海外に向けても如何にシームレス化していくか、ヤマトグループはその課題解決に向けて既に動き出している。

 そして、もう一つご紹介いただいたのが、”ヤマトチャイナダイレクト”という仕組みだ。この仕組みは、中国へと越境ECを始める際に発生しがちなトラブル(荷物が届かない、税金がわからないなど)をヤマトグループがサポートし、配送を行うというもの。

 「ヤマトチャイナダイレクトは、中国向け越境ECを三位一体(販売・運営・ロジスティクス)でサポートいたします。そのために、ヤマトグループと、中国のJD Worldwide、そしてFRANKが協力して、サポートを行っています。中国へ送れる荷物は制限が厳しく、ヤマトグループのほうでEC事業者様から事前に配送する荷物のリストを預かり中国に確認を行うことで、スムーズな配送を実現することができています。」

 そうして、上海市郵政、中国郵政とのアライアンスで、確実な通関・配達を実現することができ、現地法人も販売代理店も不要なことから、EC事業者は中国に向けた越境ECに抵抗感を抱く必要も、変動する関税に悩む必要もない。

 こうした、ヤマトグループの働きは、海外でもその名を広げるものとなっており、近い将来、今よりさらに海外への荷物の配送が当たり前になっているのかもしれない、お話を伺っていてそんな期待をせずにはいられなかった。

日本通運が届けるのは日本の技術と心配り

日本通運が届けるのは日本の技術と心配り

 次に私が向かったのが、日本通運のブースである。日本通運は”食品輸出”をテーマにサービスの紹介を行っていた。

 まず目に飛び込んできたのが、”魔法の氷”と書かれたパネルだ。そのパネルの下には、本物の鮮魚にさらさらとした雪状の氷がかけられたものが展示されている。この氷が、いわゆる魔法の氷であり、水道水に食塩を混ぜた人口塩水なのだが、48時間もの間-1℃の温度をキープできるため、生ものなどの食品をそのままの鮮度で国内のみならず海外への輸送を可能にしたのだ。

 そして食品の鮮度を保つ仕組みでもうひとつ展示されていたのが、NECK'S(Nippon Express Cool Keeping System)という、鮮度保持システムだ。

 「通常のリーファーコンテナには、加湿機能がないため、冷凍冷蔵を行うと湿度が下がり、食品の鮮度が落ちてしまいます。それは、室内で冷房を使用したときに私達の肌が乾燥することと同じことですよね。こうして食品の鮮度を保つことで、より整った輸出を行うことができます。」

 そうした、配送の質を大切にする日本通運の取り組みが紹介される中で、私が一番興味を持ったのが、”グローバルハラールロジスティクス構想”だ。これは、ハラール品を消費国へと配送するサービスで、日本通運はハラール先進国マレーシアで日系企業として初めて物流のハラール認証を取得している。

 こうした特定の”イスラム社会”に貢献する配送というのは珍しく、輸出過程での食品の質を保つ技術を備えている日本通運だからこそ実現できる配送なのだろう。日本通運がもつ技術と、世界に貢献していく心配りが、”整った配送”を実現させているのだと感じたのだった。

シームレス化を目指して、動き出す物流業界

 今回、2社からお話を伺ったことはもちろん、展示会を回り、改めて越境ECがより身近なものになってきていることを感じた。余談ではあるが、つい先日、ECサイトにて商品を購入し、日本郵便株式会社(以下、日本郵便)が配達してくれたのだが、伝票をみたときに”CHINA””EMS”と書かれていた。

 つまり、私自身の意識では日本国内で商品を買ったと思っていたものの、実際には中国で商品を購入し、その商品が日本郵便のEMSによって運ばれていた。”海外から商品を購入し日本郵便のEMSを使用した”という意識を始めてそこで実感したのだ。このように、国内の商品を購入することと、海外から商品を購入することでは大きく違うものの、消費者からすればそれほど違和感を感じることはないはずである。

 なぜ違和感を感じないのか、それは、今回の展示会からもわかったように、物流業界が国内の物流も国際の物流もシームレス化しようという動きをみせているからだろう。私たちの生活は、物流の力に支えられているのだ。

 そして、物流は「ただ荷物を届ける」ステップはすでに脱している。今はそこにどのような付加価値をつけるか。それは速さであり、質であり様々だろう。それから間違ってはいけないのが、物流というくくりには配送だけではない様々な企業が関わっているということ。倉庫内の作業を安全かつ負担減にしてくれるような仕組みを提供する企業、物流業界と消費者をつなぐシステムを開発している企業など、様々だ。

 きっと近い将来、今よりさらに越境ECがググッと近くに感じられる日が来るだろう。その日までに、今EC業界がどのような準備をしておくべきなのか、この展示会はそんなことを考える機会でもあったように感じたのだった。


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