購入頻度が2.6倍、ロイヤル顧客形成のカギとは?(wizpra調べ)

福島 れい

 「あなたの好みのアパレルブランドは?」と問われると、年齢や性別に関わらずなんらかのブランドが思い浮かぶ方が多いのではないだろうか?では、「なぜそのブランドが好き?」と問われるとどうだろう。こちらにも何らかの理由が浮かぶのではないだろうか。この”なぜ”好まれているかを知ることは、アパレルブランドやアパレルEC店舗が、売上拡大を目指す上で非常に重要な要素になる。

アパレル業界NPS調査レポートから考える”EC店舗の戦略”

 今回は株式会社wizpraが発表した「アパレル業界NPS調査レポート」より若い女性に人気のアパレルブランドが、なぜ人気を集めているのか、またそこからわかるアパレルEC店舗に求められていることを考えてみたい。

 「アパレル業界NPS調査レポート」では、20代の女性をメインターゲットとする中価格帯ブランドを対象に、アパレルブランドにおけるNPSの有効性の検証、及びその消費者からロイヤルティを勝ち得るにはどういう要因が重要であるのかを調査目的とし、インターネットリサーチを行っている。

≪調査対象ブランド≫
 ・ROPE' PICNIC(ロぺピクニック)
 ・LOWRYS FARM(ローリーズファーム)
 ・NATURAL BEAUTY BASIC(ナチュラルビューティーベーシック)
 ・earth music&ecology(アースミュージックアンドエコロジー)

 そもそも「NPS(Net Promoter Score)」とは「正味顧客推奨度」や「正味推奨者比率」と訳される、顧客のロイヤルティを数値化した指標のこと。NPSの調査にあたっては「このブランドのことを知人に勧める可能性はどのくらいありますか?」などといったアンケート調査が行われることが多く、ユーザーの長期的な満足度や顧客ロイヤルティを測ることができる。近しい指標として「顧客満足度」というものもあるが、これは短期的なユーザーの満足度を測る際に活用され、カスタマーサポート利用直後のアンケート調査などがこれにあたる。つまり、NPSのほうが企業収益性との相関が強いのだ。

ロイヤリティが高いユーザーの購入頻度は”2.6倍”に

 では調査結果を見ていこう。

 まず4ブランドの中でNPSが最も高かったブランドは「earth music&ecology」でNPS:7%という結果になった。次いでブランドB:ー8%、C:-16%、D:-17%と3ブランドが続き、類似したターゲットに向けて展開しているブランドであっても、ユーザーからのロイヤルティや持たれている愛着度は異なることが明らかになった。

 続いてNPSと購入頻度、購入単価の関係を見てみると、ブランドに高いロイヤルティを感じている(NPSが高い) ユーザーは、低いユーザーと比べて約1.3倍購入単価が高く、また、約2.6倍購入頻度が多い傾向にあることがわかる結果になっている。つまり、ブランドに対するロイヤルティを高めることは、購入単価が高い、または購入頻度の多い、もしくは、その両方のユーザーを増加させることができ、売上の増加につながるというわけだ。

 では、アパレルブランドに対するロイヤルティを形成する要因はなんだろう。今回の調査では最も影響の大きな因子は「スタッフの案内/接客対応」であることが分かっている。これは、丁寧な口調や親身な受け答えで提供される店頭での応対やコーディネート提案などの一連の接客体験がそのブランドのロイヤルティを形成するという事である。アパレルEC店舗においても、チャットやレコメンド機能を用いて個別接客をしようとする動きがあるのは、接客対応からロイヤルティを形成するという意味で非常に有効であると言えるだろう。
(e.g.SHOPLISTが進めるオンリーワン接客:https://goo.gl/xJafyo

 「スタッフの案内/接客対応」に次いでロイヤルティを高める因子となっているのは「アイテムのデザイン性」や「色/柄の展開」で、これらは着回しやすさやアイテムの品質、価格よりも、ロイヤルティ形成に影響があることが明らかになった。つまりユーザーは価格や着回しといった利便性よりもデザインや好みの色柄展開などといった情緒的な因子がロイヤルティにとって重要であると言える。

 今回の調査目的はアパレルブランドのロイヤルティだが、同様のことがEC店舗においても言えるように思う。つまり特定のEC店舗を好んで利用するユーザーには、接客の良さや商品への愛着などといった特定の要素が強く影響するということだ。勿論、商材やターゲット、価格帯などによってユーザーが求めるものは変わるだろう。しかしここで大切なのは、ただ商品を売るのではなく、自社のブランディングをどのように行うのかという視点を持って販売し、固定客や店舗のファンを作っていくことのように思う。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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