Amazonの楽天化現象?「専門ストア」で見せる新たな売り方

この記事のまとめ


・Amazonは「メーカー専用ストア」「有名人コラボストア」「専用ページ系ストア」など、様々な 「専用ストア」を展開しはじめている。

・各「専用ストア」の特徴は?

・ここになって「専用ストア」を続出させるAmazonの狙いは……

「専用ストア」に見るAmazonの戦略とは

数多くのプレスリリースを目にするAmazonであるが、最近では「メーカー専用ストア」「有名人コラボストア」「専用ページ系ストア」など、様々な「専用ストア」を戦略的に展開しはじめている。従来出品型であったAmazonが楽天に近いストア型の動きをみせてきている裏には、一体どのような狙いがあるのか。プレスリリースを整理しながら編集部内で考えてみた。

◆メーカー専門ストア

Amazon.co.jpは、メーカー専用ストア「P&Gストア」をオープンした。プロクター&ギャンブルジャパン株式会社(以下P&G)の主要20ブランド約1,200点の、幅広いP&Gブランドを包括的に紹介し、ワンストップで探せるストアを実現している。
同様のメーカー専用ストアでは、10月に花王株式会社「花王ストア」などもオープンしている。

「P&Gストア」では、9つのカテゴリーから商品を探せ、オススメのトライアルキットや数量限定品などを紹介しているほか、販売予定の商品も事前に知ることができる仕組みとなっている。また、「ママも一歳、おめでとう。」という、同社ブランドのパンパースが提供するムービーコンテンツも用意されている。赤ちゃんの1歳はママも1歳であるとし、人生で一番大変だった1年を乗り越えたママに贈るムービーなどを紹介している。

ユーザーが普段実店舗で購入している日常の消耗品なども、Amazonで購入するよう習慣化することを目的にしているものと思われる。

◆有名人コラボストア

芸能人やタレントとコラボした専用ストアのオープンも目立つ。
例えば、料理家の栗原はるみ氏とコラボレーションしたストア「ゆとりの空間 栗原はるみストア」がオープンしている。NHK「きょうの料理」で2014年にスタートした人気シリーズ「栗原はるみのふたりの週末ごはん」から、「きょうの料理保存版 栗原はるみのふたりの週末ごはん」DVDをAmazon限定で発売開始している。専用ストアでは、「ゆとりの空間」オリジナル商品のみならず、栗原はるみ氏に関連する商品を総合的に紹介している。

同様の芸能人、タレントコラボのストアには、松居一代氏とコラボレーションした「松居一代ストア」などがオープンしている。

料理系グッズや掃除グッズなどと馴染みの深い有名人を起用し、日中にネットショップを楽しむ傾向の強い主婦層へAmazonのリーチをかける狙いがあるものと思われる。今後、コラボする有名人の幅を広げ、それぞれに馴染みの深いジャンルの商品をヒモ付け展開していくなども考えられる。

◆専用ページ系ストア

ターゲットを絞った専用ページ系ストアでは、ゲーマー向けのPC及び周辺機器、関連パーツやゲームなどを取り扱うゲーマー向け専用ページ「ゲーミングデバイスストア」が先日リニューアルオープンした。
期間限定のオープン記念タイムセールや値引きセールなど行い、YouTubeなどの流行で「実況プレイ」など、ゲームとの相乗効果で人気の高まるAV機器の市場を押さえている。

同様の専用ページ系ストアでは、興味深い発表が行われた。
毎年開催され、巨額の現金が動くイベント「コミックマーケット」通称コミケ。今月末には東京ビックサイトで「コミックマーケット87」が開催されるが、そのイベント参加者向けに展開される「冬のコミックイベントストア」がオープンした。

「日本最大の同人誌即売会間近。サークル出展者の事前準備から当日参加者・コスプレイヤーの持ち物を一挙ご紹介」と銘打たれたページ内には、「事前に士気を高める」「参加者の当日お役立ちアイテム」「コスプレ参加者・出展者用アイテム」など複数のコーナーが設置され、アニメ原作コミックからコスプレグッズ、自撮りグッズに防寒対策用品、栄養補助食品や作成ツールなど、コミケに関係するほとんどのグッズが取り揃えられている。
コミケ参加者、出展者、コスプレ参加者など、イベントに参加する全てのユーザーに必要な物が揃う特設ページになっており、初心者からベテランまで幅広い層のユーザーの需要が期待できそうだ。

コミケ会場近辺の小売り店などでは、イベント当日の爆発的な売れ行きは店舗側にとっても「イベント」そのもので、その市場は限定的であるもののコスプレイヤーの増加やイベントの社会的認知などからまだまだ拡大していくと思われる。現場のものであったその市場に、Amazonが手を伸ばしたということであろう。

専用ページ系ストアでは、拡大傾向にある市場へのピンポイント進出が狙いのようだ。

◆総括すると……

「メーカー専用ストア」では日常の消耗品、「有名人コラボストア」ではタレントや芸能人を切り口にした商品、「専用ページ系ストア」では拡大傾向にある市場需要の商品。様々な狙いの商品分野にAmazonは「専用ストア」という形で参入している。
今後、「専用ストア」を狙いたい商品分野参入の切り口にしていくのだろうか?もしそうなるとしれば、「専用ストア」は増え続けAmazonの楽天化現象のようなことが起こるということも考えられなくはない。

「できるわけない」を実現に変えるAmazon

1年ほど前から、米Amazonで小形の無人飛行機がGPSで空を飛んでいきユーザー宅まで配達するというシステムを実現し、注文から30分で品物を届けるという目標を掲げているという発表があった。それが米ロイターの報じた内容によると、米Amazonがここ最近になり、同様の宅配無人飛行機の屋外試験許可をFAA当局に申請提出したとのこと。噂レベルの印象があった話に、にわかに信憑性が生まれた報道である。

この取り組みが実現し日本国内でも実用化すれば、どんな商品でも近所の店舗に買いに行くのと同じ感覚で30分くらいでAmazonで買う、という生活体験も夢ではないのかもしれない。

様々な「専用ストア」を押し出し、広い商品分野に狙いをかけるとともに「注文から30分で到着」を目指すAmazon。
理想実現の過程で身に付けるであろう様々なノウハウ等が化学反応を起こし、ソフトバンクが通信会社の枠を超えて投資会社のようになっていくのにも似た、予想しえなかった大きな変化やスピンオフが起こることももしかしたらあるかもしれない。