「流れを良くすると仕事がはかどる?」 ~カメラのキタムラ、EC成長の道のり~

逸見光次郎の連載コラム「カメラのキタムラ EC成長の道のりと今後の展望」
第1回:「会社を知る。会社に馴染む」
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6750/

第2回:「本当の人間力ECとは」
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6830/

業務を流れで把握する

前回のコラム(http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6830/)では、問題を解決するために“ボトルネック”リストを作成することが大切だとお話しいたしましたが、問題を“見える化”するツールとしては、もうひとつあります。それは、業務フロー図です。今日は業務フロー図の書き方に関して、お話しさせていただければと思います。ボトルネックリスト同様に、まず横軸にプレーヤー(社内外の部署)を配置します。一方で、縦軸には“業務(プロセス)の流れ”を時系列順に並べ、矢印で“横のつながり”を作りつつ“縦の時間の流れ”とともに業務を整理して表現します。
   
業務フロー図を作って、全体を俯瞰しながら、その流れを追ってみると、今まで気がつかなかったような、流れの悪い部分(ボトルネック)が、すぐに目に止まります。また、全体を俯瞰してみているので、どの“部署”“システム”“業務”とのつながりの中で改善すれば良いのか分かります。このようにきちんと前後の流れを見て改善しないと、かえってボトルネックを悪化させてしまうのです。

そしてまた“見える化”する事で、そこに登場する各プレイヤー同士が一緒に俯瞰して見て、課題を共有し、共に解決に向き合う事も容易になります。部署や人の問題として押し付けあうのではなく、「業務そのものの課題として共有し解決する」からです。手間はかかりますが、既に稼動している業務の改善に取り組む際にはこうして“見える化”する事が大変重要です。

旧ピクチャリングオンライン社 業務フロー図

詳しく見たい方はこちら→ http://ecnomikata.com/knowhow/detail.php?id=7004

商品・情報の流れを良くして、ボトルネックを解消する~倉庫・在庫運用の事例

例えば、EC高松の倉庫運用には、様々な課題がありました。2011~12年当時の高松倉庫には、10億円近い月末在庫が常にあり、一方で売上は6~8億円。在庫回転率が悪く、長期に渡って売れ残っている商品もありました。明らかに在庫過多です。結果として倉庫内の作業・物の流れが悪くなっていて、棚卸しも合わない状況でした。

どうしてこんなに在庫が多いのか?誰かが困らせてやろうとして発注しているのでしょうか?そんな事はありませんよね。バイヤーは「良い販売条件を獲得する」ために、「まとめて発注している」のです。ところが“良かれ”と思って行った結果、1~2ヶ月で販売出来る以上の在庫量を抱えてしまっていたのです。その在庫過多商品の“1ヶ月あたりの保管料(パレット一枚当たりの倉庫家賃)がいくらかかる”のか、それが数ヶ月に渡ったら、獲得した販売条件やリベートよりも、“そのコストの方が上回ってしまう”事になります。

その事を理解してくれたバイヤーには、商談ではまとめて発注してもOK、ただし倉庫への納品は分割納品、1~2週間に1回ずつ、その期間に売れる見込み分を補充してもらう方法に変えてもらいました。その結果、不要な在庫が減り、倉庫に入ってくる商品をコントロール出来るようになり、倉庫内のスペースも有効に活用出来、流れが良くなりました。また、まとめて発注した商品は、入荷予定日をヤマトロジスティクスさんに共有する事にしました。

もうひとつ大きな課題がありました。出荷のコントロールです。倉庫内作業はヤマトロジスティクスさんに委託していましたが、出荷量の多い日・少ない日の見込みが立たず、残業や臨時応援などで作業を終わらせる日々が増えていました。もちろん売上の増減は簡単には予測出来ません。しかしながら出荷のピークは事前にわかるものもあります。具体的には“楽天等のモールセール”“新製品発売日”は事前にわかっています。この情報をヤマトロジスティクスさんに共有するだけで、出荷見込件数による人員適正化が実施出来ます。

こうして商品の“入り(発注)”と“出(出荷)”のコントロールが出来てくると流れが良くなり、作業効率が上がります。結果として“売る活動”に注力出来て、売れない在庫も発見出来、早期に対策を打って減らす事も出来るようになりました。

情報共有も最初はホワイトボードのカレンダーに、まとめて発注した商品の型番と数と入荷日、一方でセール/新製品発売予定日を手書きし、スマホで撮って画像共有していました。こうして簡単に出来る所から始めて、今ではエクセルフォーマットの共有に進化しています。電子受発注(EDI)も併行して導入したので、バイヤー発注品・客注取寄品の入荷予定がデータ化されて件数が見えるようになった事も合わせて、ボトルネック改善に大きく貢献しています。

この間にさらに担当者が頑張って、返品戻りや出荷ミスなどのトラブル対応についても、人力で商品調査(不明品に日付と簡易な内容を書いたA4メモ用紙を貼る!)を行い、どんどん仕組みに落とし込んでいきました。今では月末の棚卸しはズレがない、もしくはズレていても誤出荷などのミスが明確に追える状況になりました。いろいろな流れが良くなっていくと、こうしたイレギュラー対応にも取り組む余裕が出てくるのです。

(第四回へ続く)

旧ピクチャリングオンライン社の業務フロー図を見たい方はこちら
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