「赤字から逆点」が当たり前!LTVマーケティングで作る収支計画

金城 慧

20170817TOP 「赤字から逆点」が当たり前!LTVマーケティングで作る収支計画

皆さん、こんにちは!空前絶後のECコンサルこと、テモナ株式会社の金城です。前回の記事では「リピート通販の成長率、市場規模」についてお話しました。

【第1回】成長率No.1!単品リピート通販・定期通販の市場規模
https://www.ecnomikata.com/column/15090/

前回の記事を読んで「やってみよう!」と思った方向けに、今回は収支計画の作り方について説明します!

前回のおさらい

事業計画の話の前に、前回のおさらいから始めます。

●リピート通販は、安定した収益が獲得でき、低コストで運営できる。
●化粧品、健康食品などのリピート通販は市場が活性化しているが、定期縛りには要注意。
●定期通販を検討しているなら、システム・フルフィルメントが対応しているか確認する。


リピート通販は、利益が”積み上げ型”。仮に広告宣伝に失敗しても、1度購入したことのあるお客様がリピート購入してくれると、その分の売上があるので、すぐには赤字経営になりません。綿密な計画によって安定した事業運営ができる、とても素敵なビジネスモデルであるとお伝えしましたね。

無計画は絶対に失敗する

無計画は絶対に失敗する

ここで重要なのは収支計画です。断言しますが、優れた商品であっても、収支計画の無いEC事業は絶対に成功しません。事業運営にはコストがかかり、どんなに売れても売上よりコストが高いと赤字であるからです。しかし、そもそもEC事業において、どんなことにコストがかかるのでしょうか?以下にまとめてみました。

私もそうでしたが、経理の仕事を経験していないと、単語が難しく感じますよね。しかし、ここで拒否反応を起こさず理解してください。何にお金をかけているかを洗い出しているだけですので、考えてみればそれほど難しくないはずです。ポイントは、広告宣伝以外の固定費にお金をかけすぎないこと。固定費とは、「毎月の売上に関わらず、決まって必要になる費用のこと」で、固定費をかけすぎると事業が負のスパイラルに陥ります。

リピート通販は大抵の場合、赤字スタートから始まるものです。理由は、自社サイトのECでは広告への投資が大きくかかることにあります。楽天市場やAmazonなどのモールであれば、既にサイトに訪問してくれる見込み顧客が一定数います。しかし、リピート通販を実践する自社サイトでは、サイト自体に訪問してもらうための施策が必要です。検索エンジンで上位表示させるためのSEOや口コミなど、集客の方法は多々ありますが、基本は広告です。この広告費が売上を超えてしまうので、赤字スタートとなるのです。

「でも、少ないコストでたくさんのお客様を呼べることができれば、最初から黒字経営できるんじゃないの?」と思われた方、それは正解です!事実、ひと昔前までは、スタート1ヶ月目で黒字を叩き出す企業がたくさんいました。しかし、今やEC市場は戦国時代。広告で1人の顧客を呼ぶコストが日に日に高騰しています。よほど単価の高い商品でなければ、広告費を一発ペイすることはし難いです。また経営的な視点で見ると、広告費以外のコストも当然ペイしなければなりません。

ですが、安心してください。重ね重ねになりますが、リピート通販は利益が積み上げられるビジネスです。基本的に広告は、新しいお客様を呼び込むことが目的なので、一度購入してくれたお客様に再購入を促すのは広告でなくても行えます。具体的にはメールマガジンやハガキなど、広告よりはるかに安いコストです。しっかりとお客様をリピートさせれば、売上が初回の広告費を逆転し、スタート6ヶ月〜2年目には黒字転換させることが可能です。

もし、経営者の方がこの記事を読んでいたら、ひとつ理解していただきたいことがあります。それは「結果を急がないこと」です。驚くかもしれませんが、スタート1年目で黒字化したら事業としては優秀な部類です。当社は1,000社以上の通販企業様を支えてまいりましたが、”赤字スタートで当たり前”という事実を知らずに、早まって撤退を判断されてしまった企業様を何社みたことか...。あと少しというところで残念でなりません。事前にいつから黒字化するのか知っていれば焦ることはないはず。目先の現実に惑わされないようにも収支計画は重要です。

最重要指標はこの2つ

最重要指標はこの2つ

では「最初は赤字で当たり前だから、放置して良いのか?」と聞かれると、そうではなく、KPIを設定して常に可視化する必要があります。KPIとは、”重要業績評価指標”という意味であり、事業が上手くいっているか・そうでないかを判断するための数値です。

成功企業の中には、細かくKPIを設定している企業もいれば、すごくシンプルに設定している企業もいます。ただし、どんな企業様もこれだけは見てほしいという指標があります。それは”CPO”と”LTV”です。

CPOとは?

CPOとはCost Per Orderの略。1人の新規顧客を獲得するのにかかったコストのことで、多くの場合はコストの中でも広告費に限定されます。分かりやすく理解してもらうために例題を出しますね。

20万円で10人のお客様を獲得しました。
CPOはいくらでしょう?

CPOの計算式は「獲得件数 / 広告費」なので、「200,000円 / 10人」でCPOは20,000円です。5人の平均購入単価が20,000円を超えていれば、広告費はペイできます。ただし、前述の通り、1回の購入で広告費をペイできるのはまれです。

LTVとは?

そこで、もうひとつの重要KPIであるLTVが出てきます。LTVとはLife Time Valueの略です。”顧客生涯価値”という意味であり、顧客の生涯における商品購入金額を表します。これも例を挙げて説明します。

Aさんは2017年8月に、500円のお試し商品を初回購入しました。
2017年9月には5,000円の本商品を購入しました。
その後、2017年12月まで本商品を毎月購入しました。
2017年12月時点でのAさんのLTVはいくらでしょう?

答えは「500円 + 5,000円 × 4ヶ月」で、LTVは20,500円です。先ほどのCPO20,000円であれば、初月の8月時点は19,500円の赤字ですが、5ヶ月目の12月時点には500円の黒字が出ます。

しかし、”生涯”ではなく、LTVは、購入の初年度1年間に限定し、”年間LTV”として考えられることがほとんどです。ベンチャー企業にとっては、初期のキャッシュフローは重要で、利益を出すのに数年間以上待てる体力はありませんよね。下記の場合、年間LTVはいくらになるでしょうか?

Aさんは2017年8月1日に、初回購入をしました。
2017年8月1日〜2018年7月31日に至るまで、下記のデータが出ました。
●1回あたりの平均購入個数は3個
●1個あたりの平均商品単価は5,000円
●合計購入回数は10回です。
Aさんの年間LTVはいくらでしょう?

年間LTVの計算式は「平均購入個数 × 平均商品単価 × 合計購入回数」なので、「3個 × 5,000円 × 10回」で、年間LTVは150,000円です。上記の例では、Aさんという1人の顧客に限定しましたが、実際には各月ごとに、初回購入した全顧客の平均で計算してください。

LTVを伸ばす

本質的な話をします。どうすればLTVは伸びるのでしょうか?

●購入単価を上げる
●購入回数を上げる

答えは、たったこの2つしか方法はありません。しかし、特別な理由なしに値上げをするのはお客様が納得しませんし、店舗とお客様との間に信頼がないと、高単価商品やセット商品は買ってもらえません。私は「購入回数を上げることの方を優先すべき」とオススメしています。この購入回数を測る指標が”リピート率”です。これもまた例を用いて説明します。

2017年8月に初回購入したお客様は100人いました。
そのうち、2回目の購入に至ったお客様は60人でした。
3回目の購入に至ったお客様は30人でした。
2017年8月の初回購入客のリピート率はいくらでしょう?

これも簡単な計算式で、2回目までのリピート率は「60人 / 100人」で、60%です。3回目までのリピート率は「30人 / 100人」で、30%です。初回から2回目までのリピート率は、”F2転換率”とも呼ばれ、非常に重要です。実は2回目から3回目の購入を促すのはそれほど難しいことではなく、最初のカベになるのは初回から2回目への購入なのです。

さて、肝心の購入回数を上げる具体的な方法ですが、様々なお客様とのコミュニケーションを活用しましょう。電話、メール、DM、LINE、同梱物などを利用してアプローチし、顧客ロイヤリティを演出します。その上でファンを作り、優良顧客を育ててください。重要なのは「メールだけに頼らないこと」です。あらゆるコミュニケーションを横断して、”複合ワザ”で挑むことをオススメします。あなたが購入者だったら、メールだけでアプローチをしてくる企業に対して、心を打たれるでしょうか?お客様は、商品だけではなく、付随するサービスにも価値を感じています。今回は収支計画の記事になるため、具体的な手段は今後の連載で紹介します!

限界CPOとは?

「LTV > CPO」のモデルにすることが基本ですが、コストは広告だけで済むわけではありません。人件費、制作費、地代家賃など、コストはたくさんありますよね。事業全体を通して、赤字になるか黒字になるかを判断するには、”限界CPO”という数値を見ることもオススメです。

限界CPOは、事業が黒字になるギリギリのCPOのことをいいます。次の例で説明しましょう。

2017年8月1日〜2017年8月31日までに初回購入したお客様の平均年間LTVは、15,000円でした。
2017年8月1日〜2018年7月31日までに購入したすべてお客様は、2,000人いました。
2017年8月1日〜2018年7月31日までに、人件費や商品原価などを含め、広告費を除くコストは20,000,000円かかりました。
限界CPOはいくらでしょうか?

少し難しいですが、限界CPOの計算式は「新規顧客の平均年間LTV - 広告費を除く1人あたりの平均年間コスト」なので、「15,000円 - (20,000,000円 / 2,000人)」で5,000円です。ゆえに、CPOが5,000円以下になるように広告を出稿すれば、必ず将来黒字になるということです。CPOは媒体やクリエイティブによって変わりますが、広告代理店の方に目安を聞いてみると良いです。

これが収支計画書だ!

これらを踏まえた収支計画書はこのような表になります。

まずは、商品価格・商品原価率から、毎月の売上と粗利益の表をつくります。売上は新規顧客からの売上なのか、リピーターからの売上なのかを分解して理解できるようにしましょう。一方で、人件費・広告宣伝費・制作費・地代家賃など、毎月のコストをの表をつくり、売上からコストを差し引いた営業利益がいくらになるのか確認できるようにしましょう。「商品価格」や「CPO」などのセルを書き換えることで、営業利益がどう変わるのかわかるようにするのがベストです。そして、いつから黒字化するタイミングを見つけてください。

とはいえ、EC初心者であれば、どのくらいの目標設定が適切なのかわからないもの。商材にもよりますが、ざっくりとした値で良ければ、下記を参考にしていただければ幸いです。

●CPOは「商品価格の1.5倍以下」
●お試し商品のCPOは「商品価格の3倍以下」
●初回→2回目のリピート率は「60%以上」
●年間LTVは「18,000円以上」「商品価格の3倍以上」

この記事を読んで、弊社にお問い合わせいただければ、特別に収支計画書のひな形を差し上げます。

まとめ

今回の内容をまとめると、以下の3点です。

●収支計画がないと、EC事業は必ず失敗する!
●初月赤字スタートで当たり前。2年後までの累計黒字化を目標にする。
●CPOとLTVは最低限必ず把握する!


なお、収支計画書が欲しいという方は下記からお問い合わせください。

▼テモナ株式会社へのお問合せはこちら
https://www.ecnomikata.com/support_company/contact.php?company_id=271

また、事業計画書の使い方を資料にまとめました。
併せてご活用ください。

▼リピート通販事業計画書使い方説明
https://ecnomikata.com/knowhow/detail.php?id=20398&inflow=feature

次回は商品開発の分野を説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました!

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【第1回】
成長率No.1!単品リピート通販・定期通販の市場規模
https://www.ecnomikata.com/column/15090/
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著者

金城 慧 (Satoru Kinjo)

ECモール出店者向けASPサービスの法人営業を経て、
2014年にテモナ株式会社に中途入社。
カスタマーサポート部署にて、"コンシェルジュ"として
100社以上のECサイト立上げを支援。
現在は、自社サービスのWEBマーケティングを担当。

通販エキスパート検定準1級、
ネットショップ実務士レベル2、WEB解析士初級を保持。

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