生まれ変わる千趣会、総額70億円の第三者割当増資を決定

ECのミカタ編集部

株式会社千趣会(以下「千趣会」)は、取締役会を開き、第三者割当増資による優先株式の発行、優先株式の発行に関連した資本金及び資本準備金の額の減少、など7項目を議決し、その内容を公表した。

取締役会で7項目を議決

千趣会は、2018年2月26日に取締役会を開き、その内容を公表した。

今回の取締役会では、第三者割当増資による優先株式の発行、定款の一部変更、優先株式の発行にかかる資本金及び資本準備金の額の減少、資本準備金及び利益準備金の額の減少並びに剰余金の処分、役員の異動、自己株式取得並びに主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動の予定、および資金使途の変更を議決した。

以下、第三者割当増資の内容を中心に、公表された内容を見て行く。

総額70億円の第三者割当増資を決定

同社は、平成 30 年3月 29 日開催予定の第 73 期定時株主総会(以下「本定時株主総会」)で、必要な承認及び本定款変更に関わる議案の承認が得られることを条件として、REVICパートナーズ株式会社が無限責任組合員として運営管理する地域中核企業活性化投資事業有限責任組合(以下「割当先」)との間で、投資契約書(以下「本投資契約」)を締結し、第三者割当の方法により総額 25 億円の A 種優先株式(以下「A 種優先株式」)及び総額 45 億円の B 種優先株式(以下「B 種優先株式」といい、A 種優先株式及び B 種優先株式を併せて「本優先株式」)を発行すること(以下「第三者割当増資」を決定した。

大規模な構造改革を実施

大規模な構造改革を実施

千趣会は、今回の第三者割当増資の理由をこう述べている。同社は、「ウーマン スマイル カンパニー(女性を笑顔にする会社)」として、設立以来一貫して、女性の一生を通じ、就職や結婚、出産など、さまざまなライフステージに寄り添ったビジネスを展開してきた。主な事業としては、通信販売事業、ブライダル事業、子育て支援事業などを営んでいる。

特に通信販売事業であるベルメゾン事業はオリジナル商品を主として衣料、雑貨、家具など幅広いラインナップの商品を取り扱い、カタログ通信販売会社として幅広い年代の女性に支持されている。

一方、通信販売事業の業界環境については、EC化がさらに進む傾向にあり、大手ECモールの市場占有率の拡大、カテゴリーキラーの台頭など、競争が激化しているのが実情だ。

このような経営環境の変化に対応すべく同社ではカタログを削減し、カタログを主軸とするカタログ通信販売事業体から、ECを主軸とするネット通信販売事業体への事業構造転換等を図って来たが、ベルメゾン事業でのカタログの販売力低下による売上の減少をECでの販売強化施策では補いきれず、平成 29 年7月 21 日に平成 29 年 12 月期の業績予想の大幅な下方修正を行っていた。

同社では、このような状況を打破するため、平成 29 年 10 月、「千趣会グループ中期経営計画 2018~2020」(以下「新中期経営計画」)を策定して構造改革を行った結果、最終的に当期純損失 110 億円と大幅な損失計上をすることとなり、連結純資産は 415 億円と前連結会計年度末と比べ 110 億円減少するに至った。

平成31 年 12 月期以降の再成長を図る

平成31 年 12 月期以降の再成長を図る千趣会公表資料より

こうした状況を踏まえて同社では、新中期経営計画では、ベルメゾン事業については平成 30 年 12 月期は引き続き規模を追わず売上高を減少させつつも、徹底的なコストダウンを行うことにより赤字体質を脱却することを目指すとしている。

その上で「専門性のある商品を提供すること」「専門店単位でビジネスモデルを構築すること」「専門店単位で事業管理すること」を目指した専門店集積型事業へと変革し、専門店化による再拡大、並びに通信販売事業とブライダル事業など複数の事業間における相互送客及び共同商品開発等のシナジーの発現により平成 31 年 12 月期以降の再成長を図っていく方針だ。

導き出された第三者割当増資

また同社では、ブライダル事業や子育て支援等の通信販売事業以外の事業は現在も堅調に推移しており、引き続き堅調に伸ばしていきたいと考えている。これらの新中期経営計画の実現に向け、通信販売事業では、ベルメゾン事業の専門店化構想の実現に向けた新ECプラットフォームの構築、カタログの絞り込み等によるコストダウンや、顧客応答や商品発注業務等へのAI技術等の導入による販売効率の改善、スマートフォン・アプリの充実等によるカタログ以外の媒体を経由した受注の拡大、等に資するシステムへの投資が必要となる。

さらに、ブライダル事業など通信販売事業以外の事業では、「ウーマン スマイル カンパニー」として女性を支えつつ、事業(コト売り事業)と通信販売事業(モノ売り事業)との相互送客、共同商品開発、コンテンツの提供等といったシナジー追及を短期間で実行していく必要があり、そのためには、それらの事業を既に展開している企業を早期に発掘しM&Aを含む資本業務提携を迅速かつ柔軟に実行していく必要があるとしている。

千趣会は、これらのさらなる構造改革と抜本的な経営基盤の強化のために今回の第三者割当増資に踏み切ったとみられる。幅広い事業を手掛ける老舗かつ通販市場のビッグネームである千趣会だが、昨今のEC化の荒波に見舞われていることになる。

これまで蓄積された資産を生かしつつ、同社が抜本的に生まれ変わるための大きな転換点とも言え、今回の第三者割当増資を通して刷新され、さらに飛躍する新しい千趣会の姿を早く目の当たりにしたいものだ。

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