アパレルの倒産件数減少も負債総額は増加 「アパレル関連企業の倒産動向調査」が公表 

ECのミカタ編集部

帝国データバンクは特別企画として「アパレル関連企業の倒産動向調査」をとりまとめ、その内容を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

アパレル市場での大規模倒産が増加

帝国データバンクによれば、2018年度(2018年4月~2019年3月)の全業種の倒産件数は、前年度比2.8%減の8057件と低水準が続いている。

その一方で、今年3月に民事再生法の適用を申請した(株)ロン・都(長野市)や 5月に民事再生法の適用を申請した(株)リファクトリィ(東京都中央区)など、アパレル関連企業では比較的規模の大きな事業者の倒産が目立ち始めている。

こうした状況下で帝国データバンクは、2018年度のアパレル卸・小売を主業とする企業の倒産動向について調査・分析した(負債額1000万円以上の法的整理を対象とし、カバンや靴、アクセサリーなどの服飾雑貨を扱う企業は含まない)。なお同様の調査は、2016年4月に続き5度目となる。

倒産件数は3年連続で減少

倒産件数は3年連続で減少

2018年度のアパレル関連企業の倒産件数は、前年度比7.7%減の252件となり、3年連続で前年度を下回った。リーマン・ショック以降では最も少ない。 負債総額は前年度比 5.7%増の382億9200万円で、2年連続で増加。倒産件数が減少している一方で、負債総額は増加おり、1件当たりの負債額は増加傾向にある。

「10億円以上50億円未満」の倒産が増加

「10億円以上50億円未満」の倒産が増加

2018年度のアパレル関連企業の倒産を負債規模別にみると、「1億円未満」が 186 社(構成比73.8%)で最も多かった。次いで「1億円以上5億円未満」で51社(同 20.2%)だった。

引き続き小規模倒産の構成比は高いものの「10億円以上50億円未満」の倒産が9件発生しており、2014年度以来の水準となった。2018年度は、負債10億円以上の倒産が増加したことで負債総額を押し上げる結果となった。

卸業の倒産は減少も小売の倒産は増加

卸業の倒産は減少も小売の倒産は増加

業態別の動向をみると「卸売業」の倒産件数は前年度比 20.2%減の103件と前年度に比べて大幅に減少、3年連続で前年度を下回った。負債総額も同32.8%減の181億600万円と大幅に減少した。

一方の「小売業」の倒産件数は、同3.5%増の149件と2年連続で増加。負債総額は同 117.2%増の 201億8600万円と4年ぶりに増加に転じた。

2018年8月に特別清算開始命令を受けた美津和屋(株)(愛知県弥富市、負債約 23億円)、2019年2月に民事再生法の適用を申請した(株)マルシヨウ(大阪府箕面市、負債約28億円)、3月に民事再生法の適用を申請した(株)ロン・都(長野市、負債約34億9200万円)など負債20億円を超える倒産が相次いだことで、負債総額が大幅に増加した。

急速に進むEC化への対応がカギ

急速に進むEC化への対応がカギ

調査結果にあるようにアパレル関連企業の 2018年度の倒産件数は、前年度比 7.7%減の 252 件と3 年連続で減少。その一方で、負債総額は同5.7%増の382 億9200万円で、2年連続で増加した。

負債規模別にみると「10億円以上50億円未満」の倒産が前年度比で倍増となる 9件発生。ここ数年の水準より増加したことで、負債総額を押し上げた。 業態別にみると、「小売業」の倒産が前年度比 3.5%増の149件と2年連続で増加。大型倒産が複数発生したことで、負債総額は同 117.2%増の201億8600万円と 2倍以上に増加した。

帝国データバンクでは調査を受けて次のように分析している。

「2018年度のアパレル関連企業の倒産件数は、リーマン・ショック後で最も少ない件数となったものの、負債総額は2年連続で増加した。特に『小売業』においては、件数・負債ともに増加。負債額20億円を超える倒産が複数発生したことが負債総額を押し上げる要因となった。

新規出店に伴う借入負担が重い中で、アマゾンやZOZOをはじめとしたインターネット通販の急成長など、経営環境の急激な変化により店舗売り上げが減少して倒産に至る小売業者が目につく。

実店舗を中心に展開する小売業態にとって厳しい経営環境の変化により、『小売』で比較的大きな倒産が増えたと考えられる。

今期に入っても、(株)リファクトリィ(東京都中央区、5月民事再生法、負債60億1300万円)のような「小売」の大型倒産も発生しており、引き続きその動向に注目する必要がある」

同社も指摘している通り、急速なEC化はアパレル市場を席捲しており、その影響で同市場の小売り分野での経営環境に激変が起こっていることになる。そうした中でもオムニチャネル化の推進など、ネットとリアルをつないだ施策を進める事業者の中には荒波の中にあっても、さらなる集客を実現している例も多い。それらを含めて新たな時代の市場に対して柔軟かつ迅速に対応することが生き残りへ向けたカギともなってきそうだ、


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