消費者はたやすくブランドを乗り換える 複雑化する消費者心理と顧客対応について明らかにするレポートが公表される

ECのミカタ編集部

カスタマーエンゲージメントカンパニーのベリントシステムズ(NASDAQ上場:VRNT、米国ニューヨーク州メルビル)の日本法人、ベリントシステムズジャパン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:古賀 剛、以下「ベリント」)は、オピニウム調査会社(Opinium Research, LLC)と共同で世界18カ国、34000人以上の消費者を対象に調査を実施したレポートを公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

この調査はベリントと調査会社Opinium Research LLPと共同で、今年2月1日から11日まで実施された。 アンケートは以下の国々で合計34,068人の消費者を対象に行われた。

オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、香港、インド、日本、メキシコ、オランダ、シンガポール、サウジアラビア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、アラブ首長国連邦、アメリカ合衆国。

調査は各国の現地語によりオンラインで実施され、 調査対象の分野は「銀行・クレジットカード・保険・情報通信・携帯電話プロバイダー・実店舗を持つ小売業・オンライン小売業・旅行・公益事業」が含まれている。

消費者はささいなキッカケでブランドをくら替えする

消費者はささいなキッカケでブランドをくら替えする

調査では回答した消費者の3分の2が最高の顧客体験やサービスを提供するブランドに切り替える可能性が高いと述べている。これは卓越したサービスや最善のコスト提供に失敗した企業は顧客の離反が避けられない可能性が高いことを示唆している。

「消費者は、より良い顧客体験を提供する製品ブランドやサービス企業に切り替えることに容易に動くという発見は、今日のビジネスや顧客ロイヤルティの展望に厳しい現実を示しています」

とベリントのグローバルマーケティング担当シニアバイスプレジデント兼ベリントカスタマーエクスペリエンスプログラムの管理主催者であるRyan Hollenbeck氏は述べている。

顧客ロイヤルティと顧客維持率が世界的に低下傾向

顧客ロイヤルティと顧客維持率が世界的に低下傾向

また消費者の44%が3年以上同じサービスプロバイダーと提携していると回答している(2015年から39%減)。これは顧客ロイヤルティと顧客維持率が世界的に低下し続けていることを意味する。

この調査によりブランドに対するロイヤルティを促進するための1つの有力な手段を明らかにした。それは「利便性」だという。調査対象となった消費者の4分の3以上(77%)が、ブランドやサービスプロバイダーを選択する際、「利便性」が重要な要素であると回答している。

「カスタマーエクスペリエンスの新たな挑戦です。 顧客は自分のビジネスと引き換えに優れたサービスを要求します。もしくは自分のビジネスを他の場所に持ち込むことになります。問題は、企業がどのように対応するべきなのかということです」とHollenbeck氏は続ける。

顧客対応では自動化と人的対応のバランスが重要

顧客対応では自動化と人的対応のバランスが重要

次に消費者の60%がいつでもあらゆるチャネルを介して企業に関わることを期待していることが明らかになった。これらの顧客の期待の高まりにより、企業はサービスに「常時対応」のアプローチを採用することを余儀なくされている。

この「常時対応」サービスの必須要件を満たすために、企業はチャットボットや人工知能など自動化されたソリューション(ハイブリッド型の従業員)に頼って、顧客エンゲージメントと運用効率を高めることが求められることになる。

消費者がこれらのデジタルサービスチャネルを採用し続けているとしても、顧客エンゲージメントにおいて人間による対応は依然として極めて重要な要素だ。 消費者にとっての第一の選択は自己解決によるセルフサービス方式(34%)によりオンラインで問合せをすることだが、調査に回答した消費者の大部分は電話で誰か(30%)または直接(29%)話すことも望んでいる。

モバイルアプリは、エンゲージメントツールとして人気がどんどん高まっており、ベリントが2018年から実施している同様の調査と比較すると57%増加している。 調査では、人の関与が緊急性の高いやり取りに対しては特に価値があることを見出しており、例えば顧客が急ぎの質問や苦情を抱えている場合、彼らの第一の希望は、電話または直接に、人間のエージェントと話すことなのだ。

対顧客戦略でスタッフの扱いは重要

調査に際してHollenbeck氏は、次のように述べている。

「戦略的に人とテクノロジーのハイブリッド環境での従業員アプローチをとることが企業にとって最大の課題と機会となる、ということが調査結果で分かりました。問合せの量と需要の増加に対処するために、企業は自動化ソリューションに目を向ける必要がありますが、顧客が期待する質の高い経験を提供し続けることが重要で、しかも顧客の必要性に応じて人間が対応する適応力が求められます。企業の顧客エンゲージメント戦略は、顧客がデジタルからの問合せを電話や対面などの他のチャネルへとシームレスに切り替えられる環境を提供する必要があります」

また世代論と雇用適性の世界的専門家であるPaul Redmond博士は、企業は顧客エンゲージメント戦略を立案する際にも従業員を考慮しなければならないと述べている

「顧客と従業員にさまざまな世代が入り混じっている今の時代に、企業は“すべての人に卓越した経験を提供する“という課題に直面しています。エンゲージメント(顧客や従業員との関わり)とエンパワメント(顧客や従業員へ選択の自由や権限を与えること)が鍵となります。人間の労働力をテクノロジーと密接に連携させて直接的な問い合わせを自動化し、より影響力のある充実した関係を構築するために人たる従業員を自由にする必要があります。企業が真に従業員と関わり合い、多世代の従業員のさまざまな要件を理解している場合にのみ成功します」

このように顧客目線で考えた場合に、チャットボットのような自動化ソリューションと、従来のコールセンターのような人が手厚く対応する窓口の拡充は両輪で行うのがより成功へとつながることを示唆する調査となったようだ。顧客対応で悩める各EC事業者にとっても大いに参考にできるのではないだろうか。


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