2014年の消費増税のデータから2019年増税前後の動向を読み解く【カタリナ マーケティング ジャパン社分析】

ECのミカタ編集部

カタリナ マーケティング ジャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:Brett Wayn、以下 カタリナ)は、国内のSM/GMS流通売上の5割以上を構成する主要チェーンの1万を超える店舗において、週あたり1億件以上、年間4700万IDの購買データを捕捉している。

この実購買データを分析することで生活者の購買動向を把握し、それに基づいた店頭販促プランの企画立案、実行、効果測定までを小売企業、消費財メーカーに対して包括的に提供。今回は2014年4月に行われた消費税増税前後での購買客の傾向をあらためて振り返るとともに、今年10月に実施予定である消費税8%から10%への増税に向けた考察を行った。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

前回増税時(2014年)における小売店舗売上の変化

前回増税時(2014年)における小売店舗売上の変化

駆け込み需要は増税前3週頃からで、その反動は増税後8週間ほど続いた増税前の駆け込みと見られる売上増加は増税前3週目から始まり、直前週には前年比+23%にまで増加した。増税後は一転し、売上は前年比―25%に急落した。その後も前年を下回る週が続き、前年並みまで回復したのは8週間後の5月最終週頃とみられる。

また増税前は客単価が増加。増税後は客数、客単価ともに減少している。増税前の売上増加は1回あたりの購買金額(客単価)が増えたためであった。つまり1度の買い物でまとめ買いが多く行われたとみられる。増税後は客数そのものが減り、客単価も減少した。

また増税前4週間のバスケットの内容を詳細にみていくと、商品点数よりも1点あたりの単価が平均してアップしていた。駆け込み購買の影響を受けた飲料などにおいては1点あたりの容量が増えており、より大容量の商品が買われたものと考えられるとしている。

駆け込み購買の対象となった商品は?

駆け込み購買の対象となった商品は?

増税前後で売上が大きく変動したカテゴリーは、アルコール飲料、米、調味料、缶詰、ペットフード、おむつ・トイレットペーパーなどの紙製品、ヘアケア用品、オーラルケア用品、衣料用洗剤、住居用洗剤、コスメといった商品カテゴリーであった。反対に、日配品、生鮮食品などの食品は増税による影響が比較的小さかった。鮮度が重要な商品は増税に関わりなく通常のペースで購買された一方で、家庭内でストック可能な日常生活の必需品が買いだめされたと考えられるとしている。

まとめ買いの起こり方は、商品カテゴリーにより特徴の違いが見られた

<間口拡張型> 
購買者数と1人あたりの購買量がともに増加した。
例)ヘアケア用品は、普段あまり購入しない人も買い、まとめ買いも同時に行われた。

<奥行深耕型> 
購買者数は増えなかったが、1人あたりの購買量が増加した。
例)アルコール飲料は、普段から購入している人がまとめ買いを行った。

駆け込み購買をした層は?

駆け込み購買をした層は?

駆け込み購買をした人は全体の4割程度。ただしこの層が駆け込み期の購買の7~8割を生み出した。通常期に比べ20%以上、購買量が増加した人を駆け込み購買者と定義したところ、そうした人は来店者の4割程度であった。ただしこの人たちが増税前4週間の売上全体の、7~8割を構成しており、このことからも駆け込み購買者への対応が重要であることが言えるとしている。

前回の増税から今回の動向を読み解く

調査結果にあるように増税前の3週間で売上金額が増加。まとめ買い、大容量買いが客単価を押し上げた。駆け込み購買への備えが必要な商品カテゴリーは限られる。また駆け込み購買をする人は一部だが、増税前の時期の売上の多くを占める重要な顧客である。

カタリナマーケティング ジャパン シニアアナリスト 立石佳子氏は次のように考察する。

「駆け込み購買は増税の3週間前から少しずつ始まる。特に直前週では前年比+20%以上もの変化が予想されるので、あらためて言うまでもないことだが販売側では備えが重要である。駆け込み需要の影響を受ける商品カテゴリーは前回増税時の結果から予想がつくので、各商品カテゴリーの前年同期の売上と直近週の販売トレンドが計画を立てる際の重要な資料となるだろう。増税の影響を受けやすい商品カテゴリーでは大容量商品も売れやすくなると考えられるので、品揃えを買いだめ寄りにシフトしたり、バンドル買いを促進したりすることなども普段以上に有効と考えられる。

また増税後の来店客の落ち込みに対する対策も重要である。店頭販促やイベントなど、店頭に顧客を呼び込む仕掛けが大事になってくるのではないか。今回の増税は10月ということで、ハロウィーンや、それに続くクリスマスといった季節イベントの活用も効いてくるのではないだろうか。今回の増税では一部の飲食料品に軽減税率が導入されることから、果たして前回と同じような動きがみられるのか、または何か変化がみられるのか、追跡して結果をご報告する機会を持ちたいと考えている」

間近に迫った消費税の再増税。軽減税率という新たな要素が少なからず影響しそうだが、前回の増税前後の動向からEC事業者としても大いに参考にできる点がありそうだ。


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