博報堂買物研究所が『チャネル別買物体験調査』の分析結果を公表 情報が氾濫する時代に消費者にいかに「ここちよい意思決定」を提供するかがカギ

ECのミカタ編集部

博報堂買物研究所は2003年に設立以来、長年にわたり生活者の消費実態・トレンドを研究している。2019年10月に掲げるテーマは「情報氾濫時代に利用したいチャネル」だ。情報が氾濫する時代、生活者がどのようなチャネルを好んで利用し、どのような買物体験を求めているのかについて、25種のチャネルを対象に調査し、その結果を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

同社は全国の20代~60代の生活者1,000名に対し、全25種のチャネルにおける生活者の買物体験や選択意識を聴取。各チャネルにおける買物行動に対する関与度や選択意向度にフォーカスし、分析を行った。

[調査地域]
全国/調査時期:2019年3月15日~18日実施

[調査方法]
インターネット調査/調査対象:20歳~69歳の男女(各性年代100sずつ)

[サンプル数(有効回収数)]
20歳~69歳の男女 1,000人

[調査機関]
エム・アール・エス広告調査 株式会社

「利用したいチャネル」として勢いを増すECサービス

「利用したいチャネル」として勢いを増すECサービス

利用意向では、今回の調査で取り上げたECチャネルのうち、「テナント型ECサイト」や「マーケットプレイス型ECサイト」を筆頭にECの勢いを感じさせる結果となった。一方、「食品スーパー」や「ドラックストア」などのリアル店舗もTop10の半分を占めており、支持される様子が伺えた。

「楽しめる」はEC・「選べる」はリアル店舗

「楽しめる」はEC・「選べる」はリアル店舗

利用したいチャネルの背景には何があるのか?利用意向Top10に入ったチャネルを利用する際に、利用者は何を感じているのか?その調査結果を分析したところ、「楽しめる」「選べる」の2つのグループに大別された。

「楽しめる」チャネルにはECサイトや動画・音楽の定額制配信サービスなどが含まれる。ECは買物の効率化が重視されると思いきや、「利用・購入する際にワクワクできる仕掛けがある」「この売り場の情報に発見や驚きを感じる」「いる(見る)だけで楽しい」「ここで商品(サービス)を選ぶことが好き・楽しい」というチャネルでの楽しさ、驚き、発見のある体験が評価されていた。

一方で、「選べる」チャネルには食品スーパーやドラッグストアなどが含まれる。「直感的に選びやすい」「深く検討せず、前向きにこれでいいと納得している商品(サービス)がある」「ここで商品(サービス)を選ぶのは、大した手間ではない」など、情報過剰時代にリアルなチャネルに行けば、欲しいモノを直感的に選べる点が評価されているようだとしている。

利用したいチャネルTOP20ではEC以外も健闘

利用したいチャネルTOP20ではEC以外も健闘

利用意向Top10のチャネルにおける体験を多変量解析(※)で分析した結果、大きく2種類の体験に分類できたそうだ。ECチャネルのみに構成された「楽しめる」チャネルのグループでは、「利用・購入する際にワクワクできる仕掛けがある」、「この売り場の情報に発見や驚きを感じる」「いる(見る)だけで楽しいと感じる」「ここで商品(サービス)を選ぶことが好き・楽しい」という評価を獲得。

その一方でリアル店舗を中心とした「選べる」チャネルのグループでは「直感的に選びやすい」「深く検討せず、前向きにこれでいいと納得している商品(サービス)がある」「ここで商品(サービス)を選ぶのは、大した手間ではない」というように評価されている。

※利用意向Top10のチャネルの買物体験をコレスポンデンス分析を用いて分析、解釈。

「生活者のここちよい意思決定」をいかに後押しするか

「生活者のここちよい意思決定」をいかに後押しするか

同社では調査に際して次のような分析をしている。

「情報が氾濫する時代、『身の回りの情報が多すぎる』と感じている生活者は約7割。一方『買物の際に、たくさんの情報があるほうが安心』と考える生活者も約7割存在している。そして、この双方の意識を同時に持つ生活者は全体の約半数を占めている。『情報は多すぎるけど、情報は欲しい』『楽しめる』チャネル、『選べる』チャネルを求める生活者の動機にはこのジレンマがあるのではないだろうか。

ECを中心とした『楽しめる』チャネルでは、その場にアクセスしたり、行くだけで得られる楽しさ、驚き、発見とともに商品・サービスと出会い『買いたい!』という気持ちを高ぶらせることができる。リアル店舗を中心とした『選べる』チャネルでは、編集された分かりやすいチャネルづくりによって、欲しいモノを直感的に「選べる」という確信を得ることができる。

生活者はそれぞれの買物体験を通じて、適切な情報を得つつも情報過剰のストレスを乗り越え、自分にとっての『ここちよい買物』を実現しているのではないだろうか。情報過剰時代、買物における情報ストレスを軽減し、生活者のここちよい意思決定を後押しする仕掛けはますます求められるようになるだろう」

このようにネット上を中心に情報が氾濫する現在において、消費者の意思決定には障壁も少なからず存在することになる。それを前提として、いかに「ここちよい意思決定」を提供できるか、そしてそのためにはオンラインとオフラインを的確かつ柔軟に組み合わせた施策の展開なども必要となってきそうだ、


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