DeNAショップ大賞!今期施策を説明。南場氏登場

石郷“145”マナブ

特集経由の流通が昨年比で250%成長。尖った施策が奏功

 株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、3月4日、DeNAショッピングフォーラム2016を実施し、あわせて、ベストショップ大賞2015を開催した。栄えある栄冠はどこに。

 この中でDeNAショッピングモール事業本部長八津川博史さんが、戦略共有会で説明にたった。まず、冒頭においては、昨年を振り返り、そこではDeNAらしさの追求、感度の高さを強化してきたことを強調した。具体的には、まずはカテゴリーエッジの創出を行い、グルメなどのカテゴリー特集を実施。それに伴い、特集経由の流通が昨年比で250%に成長。お客様にコーディネートを見せるファッションコーデは、10ヶ月で800%にまで成長した。また単価も130% に上昇した。

 買いやすさの追求も行い、マッチング制度の向上を心がけた。UIをスマホとPCで統一した見栄えにして、リニューアル。あわせて、検索エンジンのリニューアルをはかったことで、検索結果経由のCVRが3ヶ月で110%成長を見せた。

 クーポン機能の利用の拡大も行い、KARTEなどを活用。これに伴い、クーポン経由の流通が前年同月比で、3.5倍にまで拡大。自社のツールだけではなく、他社とも積極的な連携を果たす旨、説明があった。他、au経済圏における成果では、かんた決済×WALLET決済導入で、ポータル・アプリからのトラフィックが151%成長を果たした。

DeNAの強みを生かした集客。その為の商品拡充。

DeNAの強みを生かした集客。その為の商品拡充。

 2016年の方向性については、まず商品の拡充。そこにくるだけのお客様のキャパを用意し、その上で、ソーシャルメディアの活用やキュレーション、DeNAベイスターズ、au経済圏と言った同社が持つ強みで購入の動機付けをしていき、クロスセル、すなわち複数買いを促進していくとした。集客したお客様については、アプリを活用して育成をする旨、話しており、その理由として、アプリ経由のお客様はLTVが高い事を挙げた。プッシュ通知機能等で、ブラウザ経由よりも的確なアプローチができるので、再訪問、再購入において、功を奏しているのも事実だ。

 商品拡充ができる環境を作るべく、組織体制から変え、上の写真のように、部署単位で進めていたものを、新たに、それらを各部署カテゴリーごとで切って、部署間を越えて、ユニット単位のプロジェクトにしていく。これまで以上に、商品軸で、それぞれの持ち味を生かした商品の企画が生まれる事になりそうだ。

 個人的には、DeNAが強化してきたキュレーションメディアとの連携強化も気になるところだ。UU2000万の「MERY」を筆頭に、同社だけで10媒体を抱えており、様々なジャンルのファンに対して、的確なアプローチが可能になっている。具体的な成功事例としては、キュレーション記事で購入CVRが、他事例の3倍に到達したというものもあるそうで、この辺は、他社モールとの差別化要因になりうるか、今後注目したいところだ。

ベストショップ大賞は…?そして、ネットショップの生の声も

ベストショップ大賞は…?そして、ネットショップの生の声もネットショップ大賞1位 マキシム(KOBE LETTUCE) 取締役林純司さん

さて、気になるベストショップ大賞2015だが、
第3位:「joshin Web」上新電機株式会社
第2位:「爽快ドラッグ」株式会社爽快ドラッグ
第1位:「KOBE LETTUCE」株式会社マキシム
となった。

 また、DeNA広報にお願いし、直接、店舗とお話を伺う機会をもうける事もできた。新人賞を受賞した「オシャレウォーカー」を運営する有限会社マイティの話は実に印象的で、担当者の堀幸子さんは、他の部署にいた人で、全くのゼロからのスタートで、DeNAショッピングのネットショップを立ち上げたと言う。すごく共感できたのは「お客様の笑顔」というポリシーを大事にしている点。特に、主婦の共感を集める品揃えや提案が多く見られ、主婦は子供の世話等に追われるけど、でも、女性として自分を少しでも魅力的に見せたいと言う気持ちに応えようとしているのだ。感じたのは、商品=ものを提案しているんじゃなく、「こと」=ライフスタイルを提案しているところが、何よりもこの店の強みになっているということ。

 もしも、数勝負とものを強く売り込めば、新規店は、価格競争に巻き込まれる。でも、このネットショップはその主婦にとって最良の選択と笑顔に繋がるライフ提案をしているから、お客様は、そのイメージを受け入れ、おそらく商品というよりは、そこでの生活シーンを丸ごと、その店で購入しようとしている。だから、もはや一品一品の商品の価格ではなく、そのイメージに対しての対価だから、安売りにも巻き込まれない。短い期間の中で、成果を上げ、それだけ評価される理由というのは、そんなところにあるように思う。

 第1位となったKOBE LETTUCEを運営する株式会社マキシムの取締役林純司さんの話も興味深かった。同社は、アパレルを主軸としており、若い層の多いDeNAでは特にその力を発揮している。1位ではあるが、アパレルが以前ほど起爆剤があるわけではないので、話を伺う限り、DeNAのコンサルタントを良い意味で使い倒して、徹底的に、顧客のニーズを分析し、行動に繋げている事が結果になっているようだ。

 ふと、何気に、林さんに、「女性の多くは、特にアパレルで、写真などを多く見せられたほうが、購入に繋がる傾向があると思われるが、それはECでできたりしないのだろうか」と問うと、韓国の話を挙げてこんな話をしてくれた。

 よく韓国ではデイリールックといって、日常のシーンを写真で多数の写真で表現する事で、ファッション等の今を伝えていたりするが、そういう雰囲気にいかに近づけていけるか、というのは考えている。できるだけ、写真の枚数は増やしたいとは思っていると。事実、写真を増やした事で、1.2〜3倍くらい売り上げは伸びたと言う。しかし、とは言え、サーバーで扱える要領の問題であったり、モデルを使った写真に限りある中で、どうやってそれに近づけていけるかは一つの課題だ。アパレルにおいては、特に、こういう女性の“今”に向き合う事が大事だ。いろんな状況により、女性とECとの間にある壁を、若年層に力を持つDeNAがどう向き合い、解決するのかは、ある意味、重要なように思えてならない。

 驚いたのが、auショッピンモール賞を受賞したネットショップだ。株式会社ジェイエイてんどうフーズである。そう、あのJAが関連するお店で、天童市と言えば、山形である。JAと言うこともあって、地元の生産物のPRもかねて出店をしていると言う要素もなくはない。その気持ちに応えるように、全国にお客様を持ち、その割合は、関東より東が6割、関西方面から西は4割という具合。しっかり日本全土に山形の生産物の息吹は伝わっているようだ。購入者は圧倒的に女性であり、50代のお客様も多い。かつ、米等の日常生活に密着するアイテムが主力となっており、そのためリピーターも多く、それが功を奏しているのか、同社はauショッピングモール以外のモールも展開しているようだが、ネット通販全体の売り上げは数億に及ぶというのだから、山形にもたらす経済効果は大きい。これこそ、本来、ネット通販が果たすべき役割なのかなとも思う。

DeNA創業者、南場智子さんもコメント。

DeNA創業者、南場智子さんもコメント。

 最後になるが、DeNAのファウンダー南場智子さんが登場し、来場者にお礼と一言、述べた。改めて南場さんの話を聞いていると、その原点は、人のぬくもりなのかなと痛感させられる。今、彼女はDNAの研究等、科学よりな動きを見せていて、今興味を持っているのが、AI(人工知能)の可能性だという。それをどこよりも具現化しやすいのが、ECだとも語った。

 AIを、技術の進歩によってもたらすことのできる、新しい時代の、人のぬくもりだから、注目すべきだと言っているようにも感じた。時代の進歩には逆らえないし、もちろん、ECだって発展していくけど、だからこそ、時代に進歩によって得られる、人のぬくもり、つまりはAIに意味があるのではないか。

 いつの時代も、かわる事なく、人と人との結びつきは、偉大だ。どんなに時代が進化して、商売のあり方が変わろうとも、この人と人との結びつきによって、お客様の満足や笑顔が生まれる事には変わりない。ただ、技術の進歩に目を向けるのではなく、だからこそ、変わらず普遍的で大事なことを、今一度、見つめて、自分の仕事に、それらの技術をどう取り入れ、時代の進歩にふさわしいお客様との向き合い方ができるのか、ここがすごく大事な気が僕はしている。南場さんの話を聞いていて、そんな風に感じさせる、素敵で魅力的な話だったように思う。あの手この手、ECと言う手段を使って、お客様をどう喜ばせよう。未来の笑顔を思い描いて、また、ショップたちとDeNAの新たな一歩が、この日を境にまた始まった。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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