ニコニコ超会議、2017年は来場者数15万4,601人〜中村獅童の超歌舞伎他、日本の誇りずらり

石郷“145”マナブ

 株式会社ドワンゴ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:荒木隆司)は、4月29日、30日に幕張メッセで、ネット動画サービス「niconico」のリアルイベント「ニコニコ超会議2017」を開催した。

 会場への総来場者数は15万4,601人、会場からの生放送を視聴したネット総来場者数は505万9,967人となった。ちなみに、昨年は会場来場者数は15万2,561人、ネット視聴者数は554万5,583人だった。ネット視聴者は減少傾向にあるが、ネットとリアルとの融合という意味では未来に対して意義のあるイベント。それを肌で体感するべく、会場に駆けつけた。

 圧巻だったのが、中村獅童さんと初音ミクが共演した「超歌舞伎」花街詞合鏡(くるわことばあわせかがみ)だ。4回公演のラスト4回目の公演だった為、中村獅童さんが「泣いても笑っても最後です。もう少し眺めさせてください」と感慨深げな面持ちでスタート。「最初はデジタルと歌舞伎のコラボなどできるものなのかと思ったが、前回大成功を収め、ありがたいことにこの第2回目を数えることとなった。去年以上に楽しんでほしい」と語った。

 まるでそこにいるかのような柔らかで可憐な初音ミクの動きは、見るものを素直に感動へと導き、繰り出された映像の数々は、ストーリーの臨場感と迫力を最高潮まで引き上げた。まさにそれらはテクノロジーの威力である。一方で、ここ一番の見せ場で織りなす、演者達の芝居の気迫はテクノロジーをもってしても敵わぬ人間の強さであった。

 人間の奥深さに気づき、テクノロジーの進化の偉大さを思わせる、良質な作品だから、そこに酔いしれる観客がいて、敬意を持って、自然とかけ声や拍手がとめどなく生まれる。すると、不思議と、演者と観客はひとつになり、舞台を取り巻く環境には一体感が生まれ、垣根は、消えたように思えた。最後の拍手の時、お互いを称え合う両者に、目が潤む。歌舞伎の良さを最大限に引き出す、まさにイリュージョンだった。

カルチャーへの超リスペクト〜ニコニコ超会議、伝統へ想いを馳せる

カルチャーへの超リスペクト〜ニコニコ超会議、伝統へ想いを馳せる

 その他、「大相撲 超会議場所」 では、幕張メッセに土俵を作り、力士が来場したほか、落語家 林家三平さんや、お笑いコンビ・トレンディエンジェルの斎藤司さんらが出場し相撲に挑んだ他、「超雑談配信者ステージ」でビートたけしさんが来場し、「何度もいろんな前科があって、ここまでやってきてるやつは芸能界でもそうはいないから、いろいろ語れる」と話す場面も見られた。いずれも第一線で奮闘する人たちがこのネットメディアをきっかけにしたイベントに集まっているという事実は、まさにそれだけネットが多くの人にとっての市民権を得たということになる。

 それゆえ、会場内を歩くと、こんな芸人さんの姿も見られる。こ存知ですか、この方。

彼女は、ミリタリー芸人らんまるさん。ニコニコ超会議では、自衛隊も出ているので、こういう方々も普通に歩いていたりするのだ。

テクノロジーへの超リスペクトも忘れない〜ニコニコ超会議、未来を見据える 

テクノロジーへの超リスペクトも忘れない〜ニコニコ超会議、未来を見据える 

 KDDI株式会社は「初音ミク超会議ステージ2017」ブースで「ミク☆さんぽ」の体験コーナーを設置。同ブース内で専用アプリ「ミク☆さんぽ」を起動すると「初音ミク」と一緒に展示を見て回ることができるといった試みで、以前、「ポケモンGO」でARでモンスターが目の前に出現したあのイメージを連想してもらうと近い。つまり、そうしたテクノロジーの進化の足音を感じさせ、新たな時代の予感を思わせる機会としても、このイベントは機能しているのだ。

 世の中の活力はカルチャーであり、そこには絶え間ない努力と想いと感動と笑顔がある。でも、その一つ一つを受け入れ、その価値を感じない限り、誰もその良さに気づくことはない。だからこそ、いろんな部活が寄せ集まったようなカオス空間が必要であり、それらが一堂に会するこのイベントには価値がある。
 
 今、いろんなプラットフォームで動画が出てきているが、多くのコンテンツを見ていて感じるのは、皆が主役であり、また、どんなに落ちこぼれていたり、少し変わっていたとしても、その一人一人の潜在的な可能性を見逃さんとする、全ての人への敬意が、勇気や自信を与え、活力を生んで、これだけの支持を集めているのだろう。

 また、冒頭、「超歌舞伎」の話を書いたが、出演者の堂々たる演技と、深々と頭を下げる敬意に、日本の素晴らしさを感じた。普段、歌舞伎を行かない自分でもその素晴らしさを感じられたのは、歌舞伎にとっても日本にとってもプラスに働く。人への敬意と、カルチャーに対しての想いがなければ、こうはならない。改めて思う。ニコニコ超会議は、あらゆるカルチャーへのリスペクトがどこよりも強いのだと。だから、きっとこれだけ多くの人の心を打つのだろうと。来年はニコニコ文化で生まれたカルチャーがどう驚かせるのか、今から期待したい。そして、EC業界はそれより早くネットに関わっている割には、これほどの破壊力を持ったリアルイベントがないからこそ、彼らから学ぶべきことはたくさんあるのだ。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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