2017年EC業界上半期とは?〜Amazonフレッシュ/公取の問題/LINEショッピング/KDDIのwowma!の挑戦

石郷“145”マナブ

KDDIがECに本領発揮してきたwowma!の挑戦

 今年も早いもので、もう六ヶ月が過ぎてしまった。EC通販企業にとってどんな半年だっただろうか?ここで特に、ECのミカタでもよく読まれた記事をベースに振り返りをして見たいと思う。

 今年の幕開けは、ここから始まった。KDDI×DeNA 新ショッピングモール「Wowma!」誕生のニュースである。それまで、DeNAが長らくネット通販をやってきたわけだが、このネット通販の部署を丸ごと、KDDIが買収し、KDDI傘下として生まれ変わったのだ。

 そして、4月には今までの料金体系を大幅に見直しし、入会金10,000円(税抜)、月会費4,800円(税抜)とした。中でも、この中の決済サービスの対応数の多い「コミコミ出店プラン」では、成約手数料(売り上げの4.5%〜9.0%)の中に決済手数料を入れてしまう(つまりここの部分はKCFが負担するということになる)、他にはない取り組みを実施して、その本気の度合いを見せている。また、入会金・月会費を「0円」とするキャンペーン「やってみようWowma! 0円キャンペーン」を実施(2018年3月31日まで)して、会社としての変化をEC通販業界に見せつけた。

オークションよりフリマアプリが注目されて、ヤフオク!もやや方向転換

 2月に入って、「ヤフオク!」が勝負に出た。「フリマ出品」導入、そのことをアピールするために、CMにブライスドールという人気キャラクター起用した。いうまでもなく、これはメルカリの台頭を意識してのことで、ヤフオク!というとその名の通り、オークションであり、値段を出し合い、買い手が最も高いところで購入するというスタイルなわけだ。

 思えば、この時には、シェアリングエコノミーという発想はなかったわけだ。その後、メルカリが、売りたい人と買いたい人を直接繋げる、まさにシェアリングエコノミーを取り入れ、それを「フリマアプリ」という言い方で、女性に身近にさせ、浸透させたことで、そのCtoCのあり方も時代を受けて変わらざるを得なくなったという出来事であった。

 僕の考えで言えば、フリマ的な売り方も大事であるが、ある意味、大切なものを、その価値を皆で考え、その価値に相当する価格でやりとりをする、オークションもまた、商品の存在意義を改めて確認させる機会であるので、その意味があると思っている。どうかヤフオク!はオークション事業も是非とも頑張ってもらいたいところだ。

LINEとECの距離が一気に近づいてきた

 4月に入って、ECのミカタ通信を発行し、この中の巻頭で、LINEの田端 執行役員のインタビューを入れさせてもらった。それが、「LINEがもたらす未来~ECはこんなに生まれ変わる~」としてwebでも公開され、大変な反響を得た。今まで僕らはモニターに向かって、無機質に商品を購入することをやってきたわけだが、それもLINEの登場で変わっていくのではないかと示唆したのだ。

 旅館の予約サイト「relux」でLINE@を使い、友達にようにして、「仕事に癒されたい旅館を探して欲しい」といった漠然とした質問も、きちんと答えて、感謝もスタンプ。よりヒューマニズムが強調される時代になってきたということなんだとおもう。

 LINEは6月には「LINEショッピング」というコンテンツを提供し、ECとの距離感が一気に近づいてきている。LINE自体はカートを持つわけではなく、LINEユーザーとEC通販企業を直接つなぐ存在に徹するわけだ。お客様はそこの中で、LINEポイントがつくところで、そこを通る価値があるのである。

Amazonフレッシュでイトーヨーカ堂などのネットスーパーにも影響

 今、LINEの話の中で、ヒューマニックな話をしたが、対照的に、徹底した効率主義な感じがするのは、Amazonだ。
同じく4月に「Amazonフレッシュ、日本上陸!生鮮食品が届く!」の記事の中でも書かせてもらったが、Amazonフレッシュという新たなコンテンツを出してきた。このコンテンツのメリットである、最短でわずか4時間後に新鮮な野菜が届くというのは、主婦にとってはありがたい。ある意味、ネットスーパーなどで力を発揮してきたイトーヨーカ堂などの企業に少なからず影響を与えることだろう。生活者の利便性をECによってどれだけ高められるかという部分においては、Amazonの右に出る者はいないのではないかという気合の入りようである。

 そして、上半期で最も関心を集めた話題は、ヤマト運輸の荷受け量制限の問題に端を発する様々な動きである。4/24には「ヤマト運輸が配達時間等を変更。その決断の背景とは」という記事をリリースさせてもらった。荷受け量が増加し過ぎてしまったことで、ヤマト運輸は、これまで用意されていた配達時間を変更させたのだ。

公正取引委員会が動いたアマゾンの規約の問題〜ECがそれだけ社会の話題になるだけの中心へ

 そのほかでいうと、Amazonと公正取引員会の「独占禁止法」にあたる疑いがあるとして、ニュースを賑わわせた問題がある。公正取引委員会の記載によれば、まずAmazonマーケットプレイスに出品する商品の販売価格や販売条件について、その出品者が他の販売経路で販売するのと同じ程度まで有利な内容にするか、また、それよりも有利にするようにとうたった項目があったようだ。

 一見すると、これらは消費者にとってはより多くの商品をいい条件で購入できる機会が増えることにはなるが、一方で、公正取引委員会は、これを独占禁止法第19条(不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕)の規定に違反する疑いがあるとみたわけだ。結果、アマゾンはそれに関連する規約を全て削除したことで収束したということなのだ。

 ある意味、想定の範囲を超えた考え方や事態を生んでいることに気づき、また、それはある意味、ECが発展する上で、解決されなければならない問題でもあって、この収束はより健全なEC業界を築く上ではすごく意味のある出来事であったように思う。

 この上半期を振り返るだけでも色々あるものだが、それだけEC業界は成長が著しい。その時その時で情報を受け取り、自分としての意見をしっかり持つことがネット通販で勝ち抜くための知恵となる。情報は命であるから、是非、メルマガを読み続けて欲しい・・・ではなく、情報に貪欲になるべきであるように思う。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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