伸び悩むアパレルジャンルの打開策とは?〜国内ECの実態とこれから【中編】〜

利根川 舞

アイプロスペクト・ジャパン株式会社 CCOの的場 啓年氏

日本国内のBtoC-EC市場規模は16.5兆円、前年比9.1%増という勢いで成長をしている。しかしそれらの数値も世界規模で見れば、市場規模世界ランキング1位の中国の約12分の1程度なのである。

では、今後日本のEC市場が拡大するためには、もとい、各EC事業者が成長するためには何が必要なのか。

中編となる今回は、的場氏も実際にECサイトを運営していたアパレルジャンルについて、事業者が抱える課題、そしてその解決に向けての見解を伺った。

【前編】ZOZOSUITにキャッシュレス。iProspect的場氏が語る、国内ECの実態とこれから
https://ecnomikata.com/ecnews/18947/

アパレルECは難しい、双方向のコミュニケーションを

ーーEC業界の中でもアパレルカテゴリが伸び悩んでいる感じがするのですが、いかがでしょうか。

的場 アパレルはすごい難しいと思うんです。ファッション業界には、常にシーズナルがあって、古い商品はセールにかけないといけない、というような商習慣がありますよね。その中でECをやっていくのは、なかなか至難の技だなと思うんですよね。モノを売るっていうのって、画像の解像度を上げたから売れるとか、そういう話ではないような気がするんですよね。それこそ、僕らがやっているようなデジタルマーケティングの領域になっていくんじゃないかと思っています。

ECサイトという”箱”と、集客の方法をしっかりとマージしなければならないのです。自分たちにとってのターゲットが誰で、どんな人たちで、買いたいという欲求が上がるタイミングがいつなのかなどを、まずはちゃんと考えていく。その上でちゃんとした場所を、用意しなくてはコミュニケーションが一方通行になってしまうんですよね。ファッションに限らず、そういうことを考えた上で、デジタル上のコミュニケーションをやっていかなきゃいかなければならないなと思います。特にファションの場合は、趣味趣向が入るものなので、これといって絶対的な成功例というのはなかなかないと思うんです。

僕が広告会社の人間として見てきて、成功しているなと感じたある会社さんでは、モールなどには出店していないのに、とても売上を上げているんですよ。なぜかというと、事業戦略から入ってるんです。年代層の中でも競合がいない年代を狙っている。自社企画自社製造でちゃんと利益も担保できるようになっていて、ユーザーに対してのマーケティングがうまくいってると思うんですよ。

自分が運営していたアパレルECサイトが成功かって言われると、箱としては当時最新のチャットを入れたりして、やれることをやったと思っているんですけど、そもそもECの入りが間違っていたんですよ。僕は服を仕入れられるからアパレルECをやったんですよね。でもそうじゃなくて、ECは何を売れば売れるのかっていうことを考えて商材選定した方がいいような気がするんです、アパレルであっても。

需要と供給であったりとか、ブランドであったりとか、狙っていくポイントを決めないとやっぱりアパレルでもなかなか難しいかなと。強固たるラグジュアリーな海外ブランドの名前があるとか、そういった看板があるならいいとは思うんですけどね。やっぱり皆さん、近しい商材の中で戦っているわけですから、価格競争に飲まれない確固たるものがちゃんと必要なんじゃないかなと思います。

アパレルというのは非常に難しいですよね。ですから、何を売るべきなのか、どういう人に売るべきなのかっていうことを明確化する必要があります。ECにすればいいってわけではないということですね。

単独だけではなく、協力体制も今後の見所に

単独だけではなく、協力体制も今後の見所に

ーーアパレル業界の市場は大きいもののEC化率はまだまだ低く、伸び代のあるジャンルだなと思います。

的場 そうですね。先日、対ZOZOTOWNという形でロコンドさんとマガシークさんの提携が発表されたじゃないですか。今後は“共同体”というような概念も必要になってくるのかもしれませんね。



ファストファッションの流行をきっかけに、同じものを長く使うといよりも、お手頃なものを短いスパンで取り入れていく、という流れが生み出された。そうした流れは、過剰在庫や価格の問題など、これまで抱えていた課題をさらに緊急性の高いものにしたとも考えられる。とはいえ、いつまでもこの状況を続けていては、業界としても発展は望めない。

アパレルに限らず、ECにおいて必要なデジタルマーケティングでは、EC事業者やメーカーは消費者とどのようなコミュンケーションを取るべきなのだろうか。後編では消費者と企業のコミュニケーションのあり方について話を伺った。


消費者とのコミュニケーションのあり方〜国内ECの実態とこれから【後編】〜


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

ECを活用した地方創生に注目しています!
EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

利根川 舞 の執筆記事