新興ASEAN諸国の基本給は中国を下回った?【ウイリス・タワーズワトソン調べ】

ECのミカタ編集部

中国は基本給が高い??

世界有数のプロフェッショナル・サービス・カンパニーであるウイリス・タワーズワトソンがアジアの労働コストについて、調査を行った。その結果から、東南アジア諸国連合(ASEAN)の新興国における基本給は中国本土を大きく下回り、中国の労働コストの競争力は低下していることが明らかとなった。

中国のすべての職位における基本給は、調査対象の新興ASEAN諸国(フィリピン、ベトナム、マレーシア、タイおよびインドネシア)でも最も労働コストが高いインドネシアを5~44%上回っている。調査はシンガポールも対象としているが、同国を先進国と位置づけている。さらに、中国におけるホワイトカラー専門職の初任給(平均年間基本給は約2万1,000米ドル)は、インドネシア(約1万6,000米ドル)を約30%上回っている。

ベトナムおよびフィリピンの専門職および中間管理職の平均基本給はASEAN諸国で最低であり、そのため中国を大きく下回っている。例えば、中国の専門職の平均基本給はフィリピンおよびベトナムの1.9倍から2.2倍である。最も大きな差異がみられるのは中間管理職で、中国はインドネシアを44%上回っているが、上級役員およびトップマネジメント層になるとその差異はそれぞれ28%および5%に減少する。

マレーシアとタイは、上級役員およびトップマネジメント層の給与が新興ASEAN諸国の中で最も低い。この上級役員については、中国はマレーシアの約1.9倍、一方トップマネジメント層についてはタイの1.6倍を支払っている。

台湾の給与は・・・?

台湾のトップマネジメント層の給与は中国圏最低であり、中国および香港のそれぞれ62%および47%に過ぎない。しかしさらに注目されるのは、新興ASEAN諸国との比較において、台湾はインドネシアの約65%、最低給与水準のタイとほぼ同一水準である。

上級役員については、マレーシア、フィリピンおよびベトナムといったASEAN諸国の最低水準の国は上回るものの、インドネシアの約81%、タイの97%にとどまっている。だが、専門職についてはある程度の逆転が見られ、台湾の基本給はインドネシアを約40%上回る。

インドネシアの基本給は新興ASEAN諸国で最も高いものの、同地域の最先進国であるシンガポールをはるかに下回っている。専門職からトップマネジメントまでのあらゆる職位において、シンガポールの基本給は中国圏最高額の香港を約3%~10%上回っている。中国管理*職から上級役員、トップマネジメント層までみると、シンガポールの給与は中国を28%~52%上回る。その中で最も格差が大きいのは専門職で、シンガポールは中国の2倍以上である。

「中国が商品およびサービスの品質および持続可能性に重点を置いていることを踏まえれば、中国の基本給は人材を惹き付けるために高止まりする可能性が高い」とRakyanは付言している。さらに、他国との金融市場統合を図る場合、最良の人材を惹き付け、確保するためには、同国の金融セクターの報酬が国際的にみても十分な水準であることが求められる。

今までは、日本の企業は多くが中国に工場を持つなどして、日本の労働者よりも賃金が低い中国人労働者を雇う傾向にあったが、それも今や昔の話となるだろう。中国人労働者の労働コストが向上するにつけ、彼らを雇う意味がなさなくなりつつある。
東南アジアの成長を踏まえ、今までは中国人労働者を使って事業をしていた企業も、この結果を見るに、そのうち、東南アジアを拠点とする事は、十分考えられるだろう。

その上で、労働コストが向上し、また、自ら高い経済活動をするようになった中国人に対しては、もはや、労働者として向き合うのではなく、ほぼ日本人と同じ、対等な商売の相手となったと言えるだろう。それゆえ、我々ECに関わる事業者においては、越境し、中国人に対して、商品を売るなどして、商売を進めていくかが、いかに大事かという事であるように思う。


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