ディノス・セシールのCSの考え方とは? 効率化・自動化で生まれる時間を「密度の濃い」顧客対応に

ECのミカタ編集部

株式会社ディノス・セシール
左:CECO 経営企画本部 兼 EC本部 マーケティング本部 プロフェショナル 石川 森生氏
右:ハートコール本部 ハートコール部 部長 名城 修氏

「ディノス」「セシール」という2つのブランドを軸に、総合通販を展開する株式会社ディノス・セシール(以下、「ディノス・セシール」)。カタログ通販やテレビ通販においては、押しも押されもせぬ老舗であり、EC領域の拡大も進むが、いまでは、そうした通販のみならず、卸事業や催事事業も行うなど、事業ドメインも多様化している。

 しかし、どんなに通販チャネルや事業内容が多様化しても、変わらないイズムがある。それは「お客様視点に立った顧客対応」だ。ハートコール本部 ハートコール部 部長 名城 修氏と、CECO(Chief e-Commerce Officer)であり、経営企画本部 兼 EC本部 マーケティング本部 プロフェショナルである石川 森生氏に、「ディノス」における顧客対応のあり様についてお話を伺った。

インターネットの普及により、電話問合せが徐々にWeb経由にシフト

インターネットの普及により、電話問合せが徐々にWeb経由にシフト左:ディノスのECサイト(https://www.dinos.co.jp/
右:セシールのECサイト(https://www.cecile.co.jp/
※イメージは両者ともスマホサイト

 カタログ通販・テレビ通販においては、老舗としてのポジションを確立している「ディノス」だが、近年ではWeb経由の受注割合が増えており、いわゆるEC比率は50%を超えているという。

 「当社の場合、売上げの柱となっているのは、カタログ通販とテレビ通販ですが、受注方法として、電話やFAX、Web経由といった方法があります。ここでいうEC比率とは、受注の入り口としてWeb経由のものが過半数になっているということです。」と石川氏は説明してくれる。

 一方で、受注以外の各種問合せなどについては、電話の割合が高く、全体の7割程度を占めるという。

 「お客様からのコンタクト・ルートとしては、電話やメールなどがあり、ECの受注割合が増加するのに伴って、Web経由のお問合せ割合は着実に増えており、その分、電話によるお問合せは減少傾向にありますが、それでも7割程度は電話です。」と名城氏は言う。

 特に、Web経由の各種問合せに対しては、自動処理の仕組みを導入したことにより、かなり業務の効率化にもつながっているという。

 「Web経由のお問合せに対しては、自動処理と手動処理の2種類があります。例えば、返品手続きなどについて、かつては電話でしか受け付けられなかったのですが、近年ではWebからも返品手続きが可能になっています。しかも、この部分については自動処理になっています。現在のところ、自動処理できるものがWeb経由のお問合せの8割以上となっており、業務効率は大きく改善しています。」

Web経由の問合せ対応には自動化を推進。個別対応が求められる電話対応にはさらなる顧客満足の視点で臨む

Web経由の問合せ対応には自動化を推進。個別対応が求められる電話対応にはさらなる顧客満足の視点で臨む   ハートコール本部 ハートコール部 部長 名城 修氏

 「私たちとしては、自動化できる部分は、できるだけ自動化するようにしていますが、それによって生まれる時間的余裕は、手動対応すべきお問合せ内容や、電話でのお問合せなど個別性の高い顧客対応に振り向けることで、より高品位な顧客対応を可能にしています。」と名城氏が言うように、自動化の仕組みを推し進める背景には、より満足度の高い顧客対応を可能にすることに、その目的がある。

 「お客様からのお問合せにきちんと対応することで、顧客ロイヤリティは着実に向上しますし、それが将来的にはお客様のLTVの向上につながりますので、結果的には当社の事業成長にもつながるわけです。」と名城氏。

 より高品位な対応を可能にするための施策にも余念がない。

 「例えば、当社のコールセンターでは、オペレーター個々の判断で、何らかのご迷惑をおかけしたお客様に対して、クーポン券をお送りすることができます。多くのコールセンターでは、そうしたインセンティブの提供にあたっては、管理者の判断を仰ぐ必要があることが多いと思いますが、当社では、その権限をオペレーターに付与することで、迅速な顧客対応が可能になっています。

 また、電話の場合は、商品の詳細についてお問合せをいただくケースが非常に多くあります。商品の細かい点については、メールなどのお問合せでは、状況を把握することが難しい側面もあり、何度かメールをやりとりする必要も生じます。お客様の方でもそうした事情をご理解いただいており、直接オペレーターと会話できる電話を利用される方が多いのです。最近では、お客様自身が商品についての詳しい情報をお持ちであることが多く、お問合せに対応するオペレーターにも専門性が求められます。そのため当社のコールセンターでは、専門チーム制を導入しており、ファッション商品分野ならファッション分野、美容健康商品分野なら美容健康分野などを専門で扱うチームを編成し、お問合せに対応するようにしています。フリーダイヤルも、この専門チームごとに設定されていますので、受け付けたお電話がたらい回しになるようなこともありません。」と名城氏が言うように、顧客からの問合せ対応では、顧客満足を最優先している姿勢が明確であるとともに、そのための具体的な取り組みもきちんとなされている。

 Web経由のメール問合せなどについても、電話問合せと同様に、いかにして顧客満足を高めるか、という視点で設計されているという。

 「お電話でのお問合せであれ、メール等Web経由のお問合せであれ、お客様の立場に立って対応する、というスタンスに変わりはありません。特に、メールでのお問合せなどについては、どれだけスピーディに回答するかが重要だと考え、受信から返信までの時間がどれくらいであったかをKPIとして設定しているほどです。電話であれば、つながった瞬間にお客様との会話が始まりますから、対応が“後回し”になることはあり得ません。しかし、メールだと後回しにしようと思えばできてしまうわけです。だからこそ、すべてのスタッフが高い意識をもって、迅速に対応することが必要です。返信までの時間をKPIとしている理由がここにあります。」と名城氏は言う。

 現在ディノス・セシールでは、メール管理に関してはサイボウズ株式会社が提供する「メールワイズ」を利用しているという。メールで寄せられた問合せについては、管理者がその内容を確認した上で、しかるべき担当者に振り分けられ、回答が返信される。メールの受発信は「メールワイズ」で管理されるのだが、その内容や履歴については、基幹システムに取り込まれ、顧客ごとに集約される。注文履歴や問合せ履歴、さらには問合せに対してどのような回答がなされたかを顧客ごとに集約・管理することで、より丁寧で、高品位な対応を可能にしているのだ。

真摯な顧客対応こそが、事業の成長につながる

真摯な顧客対応こそが、事業の成長につながる   CECO 経営企画本部 兼 EC本部 マーケティング本部 プロフェショナル 石川 森生氏

 ディノス・セシールでは、長年の通販事業を通じて、顧客対応の重要性を熟知しているといえよう。

 すでに触れたように、自動化できる部分では効率化を重視した様々な取り組みを行うが、それは事業活動そのものの効率化を目指すためというよりも、より個別性の高い、丁寧な顧客対応を増やすための方策と位置付けられる。

 「コールセンターでの対応や、Web経由でのお問合せ対応などで効率化できる部分はどんどん効率化していきますが、それはあくまでも個別対応に費やす時間をより多く確保して、顧客満足を高めることにねらいがあります。当社のような事業においては、最後は人的な対応力の差そのものが、企業としての、あるいはブランドとしての優位性につながると考えています。コールセンターなどの品質と、物流を含むフルフィルメントの品質が、差別化ポイントになるということです。

 その意味では、まだまだ効率化できる部分はあります。例えば、AIの導入もそのひとつの施策になり得るでしょうし、SNSの活用なども避けては通れないものと考えています。

 当社が、顧客対応において目指しているのは、究極には“電話をしなくても、(お客様がかかえる)すべての課題を解決できる”仕組みの構築です。もちろん、そうした仕組みは、一朝一夕でできることではありませんが、そこに向けて、日々努力を続けています。」と石川氏は、さらなる顧客対応の進化に取り組む姿勢を明らかにする。

 最近では、ツイッターを活用した「アクティブサポート」という仕組みも導入し、顧客感動を提供できているという。

 今後、どんな先進的な顧客対応を推し進めるのか、ディノス・セシールの動きからは、まだまだ目を離せない。


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