「機能性表示食品」緊急点検 届出は1671社で22社が倒産や廃業!データベース未更新15%

三浦真弓【MIKATA編集部】

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)の「紅麹」成分が入ったサプリメント摂取に関連する健康被害が広がる中、東京商工リサーチ(TSR)が緊急点検が決まった「機能性表示食品」を届け出ている1671社を分析。その結果を公表した。これによると、消費者庁が半年に一度の情報更新を要請しているにもかかわらず、製品のうち約15%が未更新だという。

消費者庁が約6800製品の緊急点検の実施を決定

小林製薬の「紅麹原料」を使用した同社のいわゆる「健康食品」である「紅麹コレステヘルプ」を摂取していたユーザーが、腎疾患を伴って亡くなっていた問題。2024年3月29日の同社発表によれば、合計5人が死亡しており、事実および因果関係の究明が急がれている。

該当商品は「機能性表示食品」として販売されていたこともあり、消費者庁が約6800製品の緊急点検の実施を決め、登録企業への質問状送付などの対応に追われているという。

そもそも国が審査し、食品ごとに消費者庁長官が許可する「特定保健用食品(トクホ)」とは異なり、「機能性表示食品」は許可でなく、消費者庁に事業者の責任で科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示することを届け出る仕組み。つまり「信頼性」の担保としては、「トクホ」よりかなり弱いとも言え、以前から課題は指摘されていた。

約15%、合計約1000製品のデータが未更新

「機能性表示食品」の届出情報は消費者庁のデータベースで確認できるが、TSRでは3月27日14時時点の届出情報を抽出し、TSRの企業情報とマッチングして分析。届出の撤回を除く食品総数は6770製品で、このうち法人番号の登録がない21社を除く6749製品の届出企業を調査したという。その結果は下記の通りだ。

届出企業数は重複を除き1671社(資本金1億円未満が1241社、構成比74.2%)
倒産13社、休廃業・解散9社が判明
■6749製品のうち、982製品(構成比14.5%)が未更新
■倒産企業だけでなく大手企業の一部製品も未更新のまま

ということが分かったという。

「機能性表示食品」への信頼が根底から揺らぐなか、「機能性表示食品」の安全性確保や正確な情報更新など消費者が安心できる仕組み作りの検証が急がれる。


※この調査では「機能性表示食品」の届出情報検索サイトから3月27日14時時点の届出企業を抽出し、撤回と法人番号の記載がない企業を除く1,671社とTSR企業データベースをマッチングして分析
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満を中小企業と定義

売上高別 100億円以上が375社

売上高別 100億円以上が375社

TSRによれば、売上高別(判明分)では、100億円以上が375社(構成比28.6%)だった。次いで10億円以上50億円未満が337社(同25.7%)、1億円以上5億円未満が231社(同17.6%)、5億円以上10億円未満が133社(同10.1%)、50億円以上100億円未満が127社(同9.6%)、1億円未満が107社(同8.1%)の順だったという。

売上高10億円未満が471社(同35.9%)と約4割に達し、規模の小さな企業の届出が多かった。

また届出企業の本社地(実質上含む)に関しては、最多はやはり東京都で612社(構成比36.6%)。次いで小林製薬の本社地でもある大阪府の153社(同9.1%)、福岡県の132社(同7.9%)となった。

消費者庁によると、「機能性表示食品」データベースは半年に1度、届出をした企業に情報更新を要請しているが、実際は更新に応じなかったり、応答がない企業もあり、半年以上更新していない企業については、「販売中」と「販売休止」のどちらにもチェックを入れない「チェックなし」とし、「本食品の販売状況は、約半年以上、届出者が更新していないため不明」と表示している。

しかしTSRによれば「チェックなし」の未更新は、倒産企業だけではなく、事業を継続している企業も更新が滞り、すでに社名が変わっている企業が旧社名のまま登録されていたり、大手企業でも未更新の製品が多くみられたという。

こうしたことから、現状のデータベース情報では、機能性表示の確認や問い合わせが十分にできない可能性もあると、TSRは指摘。今後、機能性表示食品を主力にする企業では、自社のリスクもしっかりとらえ、機能性表示食品そのものの信頼回復のために尽力する必要があるだろう。

出典:東京商工リサーチTSRデータインサイト「機能性表示食品」届出は1,671社 22社が倒産や廃業 データベース未更新も15%