円安倒産4月も発生 2022年7月から22カ月連続、さらに長引く可能性も

三浦真弓【MIKATA編集部】

株式会社東京商工リサーチ(本社:東京都千代田区)が2024年4月の「円安」関連倒産についてまとめた。発生は22カ月連続で、円安の影響はさらに長引く可能性もあるという。

円安加速で4月29日の午前中には1ドル=160円台

東京商工リサーチによれば、2024年4月の「円安」関連倒産の発生は1件(前年同月比66.6%減)で、件数そのものは3カ月ぶりに前年同月を下回ったが、2022年7月から22カ月連続で発生しているという。

3月19日、日本銀行はマイナス金利解除を決定したが、その後も円安が進んだ。さらに4月26日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合の後、為替市場では円安がさらに進み、4月29日の午前中には1ドル=160円台にまで下がった。

これは決定会合で政策変更が見送られたことに加え、会合後の記者会見での植田和男総裁が「円安によって一時的に物価上昇率が高まるだけでは金融政策で対応することはない」「賃金の上昇を通じてさらに持続的な物価上昇につながって初めて、政策判断に影響を与える」などの考えを説明したことが関係している。

会合前までは「円安阻止のための日本銀行による早期の追加利上げ」が期待されていたが、逆に日本銀行は円安に対する警戒心が弱いとの見方から、円安が加速したと見られている。

その後、外国為替市場では5月2日朝の時点で円相場が4円以上円高方向に動き、1ドル=153円まで値上がり。このことから政府・日銀が市場介入を繰り返しているという見方が強まっている。

とはいえ円安であることに変わりはない。あるいは夏には170円台にまで進むのではないかという見通しさえある中で、原材料価格のさらなる上昇が見込まれる。

楽天市場やYahoo!ショッピングにも出店していた布雑貨販売事業者が倒産

東京商工リサーチによれば、2024年4月の「円安」関連倒産は、のれんやインテリアマット、クッションなど布雑貨販売を手掛けていたGFプランニング株式会社(東京都・負債1億171万円)だ。同社は、急激な円安進行で中国からの仕入コストが大幅に上昇し、経営環境の悪化から事業継続を断念したという。

円安による仕入値の上昇分を価格への転嫁が難しい中小・零細企業にとって、今の円安傾向は、資金繰りに大きな影響を受けるものだ。

「経済活動が平時に戻り、過剰債務を抱えた企業は新たな資金調達が難しい状況が強まっている。こうしたなかで売上拡大に伴う仕入増、人員増などが、資金繰り悪化に拍車を掛けるパターンに陥り、倒産の増加を招く下地が出来つつある」と解説される通り、年末までにさらなる倒産を招きかねない円の動きはしっかり見ておく必要がある。

出典元:東京商工リサーチ「2024年4月の「円安」関連倒産 1件発生 発生は22カ月連続、円安の影響はさらに長引く可能性も」