モールで値下げせず、売り上げをあげるたった一つの方法

ECのミカタ編集部

感情と日常を変える商品に、ECの明日が見える

 以前掲載した株式会社アイルが主催するバックヤードフェスの対談、第二弾!登壇者は同じく、株式会社コルク 佐渡島 庸平さん、株式会社ピー・ビー・アイ 高木 孝さん、そしてモデレーターのテラオ株式会社の佐々木 伸一さんだ。前編は「誰も叶わないAmazonの絶対領域」について、興味ある方はこちらからどうぞ。(https://goo.gl/IV1nl1

 お三方が今回語るのは、利便性があがるにつれて、多くのものを失ってきたEC業界 においての「今のEC事業者に問われている問題、そして売り上げをあげる大切な方法」である。

ECが失ってきたものとは

ECが失ってきたものとはテラオ株式会社の佐々木 伸一さん

佐渡島「ECってこの店舗いいよね、って思ってもらってからがスタートなんです。しかしここで一番苦労しますよね。思ってもらってからが継続的なビジネスの始まりです。そして今デザインなど商品単体で売るのは難しくなってきていて、どのようにして他人の感情・日常を変える商品を生むかが大切です。」

高木「それこそ今ECに問われてきていることだと思います。消費者の感情・日常を変える商品を作るのは、時間かかるし、とても手間だし、やらない人が多いです。しかし今競合がどんどん増えてきている中で、皆、目の前を重視し、安売りやポイント付与や送料無料の方向に向かいます。そうすると目先の売り上げは立つかもしれませんが、最終的に何も生みません。」

佐々木「これからやっていくべきことは、商品があることによる、シチュエーションの提案だと思うんです。しかし今は“EC店舗の規模が拡大していく” “競合に負けない”ということにフォーカスしすぎています。最初ECを始めた頃は、何からやればいいかわからない、わからないまま商品撮影して、登録して、と作業していきます。売れたらあっ!売れた、と思い、そこから規模が拡大していき、バックヤードを担当する人も出てきたり。」

佐渡島「EC業界が成長するにつれて、EC店舗も成長してきましたしね。」

佐々木「しかしECが進化していくにつれて効率化の名のもと、様々なことを失ってきました。しかし私たちはなんの為に効率化したかったのでしょうか。ECの成長が進むにつれて、大切なものを落っことしてきた気がします。本来は効率化してコスト下げて、やりたいことをやる時間を、手間がかかることをできるお金・時間を作成するべきです。しかし今これらを本当にできているでしょうか。」

高木「儲けると楽してしまうんですよね。働く時間は変わっていないけれど、労力・経験は減ってきています。そうするとどのようなことが起こるでしょうか。EC店舗は成長しないのです。」

最安値でなくても、売り上げが3倍あがる方法

最安値でなくても、売り上げが3倍あがる方法左:株式会社コルク 佐渡島 庸平さん 右:株式会社ピー・ビー・アイ 高木 孝さん

佐々木「私たちEC店舗がやりたかったことってお祭りのようなことだと思うんですよね。」

高木「そう、バックヤードフェスに来ている子供を見ていると皆笑っているんです。本来、私たちがやらなくてはいけないことは、そういったことで、皆が笑ってワイワイする場所をECで表現していくべきなんです。」

佐々木「弊社のEC店舗はモールにてどこで買っても一緒の型番商品を扱っています。自社で作っている物もありますが、メインは型番のチャイルドシートです。他のEC店舗でも売っているし、Amazonでも売っています。そうすると何が起こるかというと、値段を一番安く、ポイントをどこよりも付けて、とするしかないんです。」

高木「それが一番楽ですもんね。」

佐々木「しかし最初からこの商品を買うんだ、と思っている消費者しか想定していないため、型番商品だと既存のシェアをとにかく奪うことに走ってしまいます。しかしチャイルドシートのようなリピートが発生しない商品ではどんなにいい接客をしても、サービスを良くしても、またこの店で買おうとは思いません。たった1回を特にモールでは、価格・スピード・品揃えあたりでどうしても競ってしまいます。しかし、本当に型番なのかな、というのが私の中にありまして、今弊社は最安値にしているわけではないのに売り上げ3倍近くまで増えています。」

佐渡島「ではどんなことを行っているのですか?」

佐々木「弊社は、配送も特別なシステムを入れているわけでなく、自社の裏の倉庫で、地道な作業を行っているため、速いわけでもありません。しかし売れる理由とは、お客様のニーズをきちんと理解することにあります。例えば“チャイルドシート” “選び方” “おすすめ”など検索ワードを把握し、そのニーズに合った商品の説明をすることが大切です。」

大切なのは“お客様を想う”こと

 インターネットが誕生して、世の中は驚くほど便利になった。距離も縮み、時間も縮んだ。しかし現在までのECを振り返ってみると、便利過ぎた故、多くのものを落としてきている。効率化のもと、経験を失ったり、実店舗のような温かみのある交流を失ったり。

 そんな現在において私たちができることはなんだろう。それは商売の原点で、それでいて一番大切な“お客様を想うこと”だろう。お客様が何を求めていて、どうすれば喜んでもらえるのか、それを追及すれば必然とお客様のニーズと合致する。合致したらもちろん商品は購入される。

 “お客様を想う”ためには効率化が必要になってくるだろう。作業を効率化して、時間・お金を使いお客様が欲しがっていることを考え、提供していく。そうするとまた売り上げが上がっていく。そしてお客様のニーズを満たすには商品をただ売るということではなく、商品があることによる質の良い生活を提供することが重要だ。そう、すべては繋がっているのである。繋がった先にある原点は“お客様を想うこと”だろう。

 あなたのECサイトは効率化だけを求めていないだろうか。価格をただ下げるだけでいたり、ポイントのみでお客様を惹きつけたりしていないだろうか。今一度見直していただきたい。今こそECが失ってきたものを取り戻すべきだと思う。そしてお客様を想って商品を販売することで“ECの明るい未来”がやってくるはずだ。


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