エンタメEC 2024年上半期最新事情 第一回 K-POP×越境EC最前線「世界中のファンがK-POP商品を日本からも購入」
グローバルでの市場規模拡大を続ける音楽や海外消費が日本国内と同規模の1.4兆円に到達したアニメなどのエンターテインメントコンテンツは、国内に留まらず世界でもユーザーの関心を集めています。越境ECは一時160円台を記録した円安の影響等もあり利用が増大し続けていますが、中でもこのような音楽やアニメといったエンターテインメント分野は定番と言える人気を誇っています。
BEENOSグループは海外ユーザー向け購入サポートサービス「Buyee」の購買データを元に越境ECランキングを定期発表しており、8月に2024年上半期の新たなランキングを発表しました。今回は「Buyee」の上半期のランキングデータを元に、日本音楽・及び世界的に人気が高いK-POPとアニメなどの越境EC市場におけるエンターテインメントジャンルの人気傾向や購買ユーザー層などの最新情報を三回に分けてご紹介します。
世界的なマーケティングによって各国でファンを獲得するK-POP
2000年代頃から海外展開を本格化させ、今では世界的なムーブメントとなったK-POの人気は拡大を続けており、米調査会社ルミネートによれば2023年1月から10月5日までのK-POPアーティスト上位100組のストリーミング再生数は累計904億件で、前年同期比で42.2%増加するなど飛躍的に視聴数が向上しています。近年ではビルボードの100位以内にK-POPアーティストが多数ランクインするようになり、米国3大音楽授賞式の1つであるBillboard Music AwardsではK-POP部門が新設されるなど世界的にも注目度は高まっており、日本の越境EC市場においても世界的なK-POPブームの影響により関連商品の購買が目立っています。
K-POPの精力的な世界ツアーの敢行や、ミュージックビデオへのグローバルな字幕対応による世界への楽曲・ミュージックビデオの配信、SNSやファンプラットフォームの活用などにより韓国のコンテンツ産業は盛り上がりを見せており、音楽の輸出額も成長を続けています。(図1)数字上では音楽コンテンツの輸出額はそこまで大きく無いように見えますが、K-POPジャンルにおいては楽曲やミュージックビデオ以外に関連するグッズなどの売上が大きく、BEENOSグループが提供する海外向け購入サポートサービス「Buyee」においても、K-POPジャンルではCDやDVDなどのほかに、ライブグッズを中心とした関連商品が多数購入されています。こうした背景から音楽コンテンツが市場に与える影響力はより大きいと予測されます。
ファンダムを重視するK-POPの戦略
K-POPは精力的な海外公演やオンライン配信などによってコンテンツに世界中の人が触れられるほか、推し活に特化したHYBE傘下のWEVERSE COMPANYが運営するプラットフォームとして知られる「Weverse」にてライブ配信や限定コンテンツの配信、グッズ販売などファン活動に関連した包括的なサービスを提供しています。さらにサービスを多言語対応していることから世界各国のユーザー利用が進み、購買力の高い「スーパーファン」を多数獲得しています。そのほかにも、ファン交流を目的としたファンミーティングやハイタッチ会などのイベント開催、1対1でファンとアーティストが行うビデオ通話などアーティストをより身近に感じられ、ファンエンゲージメントを高める取り組みを数多く開催していることからファン活動はより活発化する傾向が見られます。SNSを通じたファン交流なども盛んであり、コンテンツに触れる機会が多数存在することから、関連商品への需要は高く、CDや楽曲だけでなく、ライブグッズ以外にもトレーディングカードや写真集などにも関心が集まっています。
日本限定版に世界中のファンが注目
「Buyee」での2024年上半期の音楽ジャンルの購入エリアランキングでは1位北米、2位ヨーロッパ、3位東アジア、4位中南米、5位東南アジア、6位中東という結果となり、中でも北米、中南米、東南アジア、中東のトップユーザーは全て20代の女性でした。こうした若年層の女性の購買傾向を見てみるとK-POPのCDやライブグッズなどを多数購入していることがわかりました。特にCDに関しては海外では買うことのできない、日本限定のジャケット仕様や特典の付いた商品、数量限定品などが人気を集めており、K-POPファンが自国以外で発売されているバージョンのCDを買い求めていることがわかります。また、CD以外の商品ではトレーディングカードの人気が高く、コレクションや推し活用途での需要が高いと予想されます。エンターテインメントジャンルを好むユーザーは一般的に購買意欲が高いことが知られていますが、中でもファンとのつながりを重視するK-POPのジャンルにおいては特にユーザーのファンエンゲージメントが高く、CDやグッズの購買に繋がっていると考えられます。
越境ECで人気のK-POPアーティストランキング
2024上半期における「Buyee」での人気K-POPアーティストランキングでは、上位は1位がSEVENTEEN、2位がATEEZ、3位がBTSという結果となりました。今年新たなワールドツアーを控えるSEVENTEENとATEEZはこれまでも大規模な世界公演を重ねており、日本国内においても高い人気を誇っていることから商品の購買数がトップとなりました。3位には活動休止中にも関わらず、アメリカにおいてアルバムチャート初登場1位獲得や、テレビ出演、大統領との会談などの強い影響力を見せたBTSが3位にランクインしており、海外市場におけるBTSの商品需要が根強いことがわかります。10位中8件と過半数をボーイズグループが占めており、主要な購買層も若年層の女性が中心となっています。ランクインした多くのグループは積極的な海外公演やミュージックビデオの多言語対応配信、英語楽曲の制作など海外市場において存在感を見せています。ボーダレスに活動するK-POPアーティストのコンテンツがオンラインによって時差なく世界中に広がり需要を拡大させていることがわかります。
K-POPのファンダムを重視した取り組みは、ファンとアーティストの関係性を密接で強固なものにしており、ファンダムの高まりがCDやグッズなどの商品の購入意欲の高さに繋がっています。こうした動きは他人事ではありません。日本で販売されている商品も海外のファンにとっては「限定版」と捉えられ、近年、越境ECでの購入が急速に拡大しています。
オンラインによってファンとの関係性を築くことが出来る現在では、国境を越えてあらゆるファンが潜在的な商品購買層になり得ます。ファンダム向けのサービスの拡大に伴ってファンエンゲージメントはより高まっていき、ライブやイベントを楽しむだけでなく、関連する商品を購入する需要も拡大していくと予想されます。世界からのニーズに応えるべく、流通チャネルにも変化が求められています。