eBay USが日本でライブコマースのデモを実施――Monoshare協力で「バーキン」6,100ドル落札も

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イーベイ・マーケティングチーム

eBay USが日本でデモンストレーションを実施――ライブコマースの“お手本”を現場検証

近年注目を集めるライブコマースですが、日本ではまだ認知度が低く、市場としても発展途上にあります。eBayでも一部セラーに限定して取り組んでおり、更なる可能性を探るため、 eBay USが来日し日本でデモンストレーションを実施しました。

今回は3社のセラーに協力いただきました。ファッションセラーの「Monoshare(モノシェア)」 さんは5日間にわたり毎日6時間の配信に挑戦。エルメスの「バーキン」が6,100ドルで落札される日も。

本記事では、eBay USの狙いや配信設計、さらにMonoshareさんや米国チームの声を通じて、現場から見えたリアルな知見をお届けします!

ライブコマース市場の現在地――米国は採用が加速、世界は急伸

ライブコマース市場の現在地――米国は採用が加速、世界は急伸

米国では、販売チャネルとしてのライブコマース導入が急速に進み、存在感を高めています。これまで静的な商品掲載が中心だった販売から、視聴者と直接やり取りしながら売る“インタラクティブな販売”へとシフトしつつあります。

世界的にも成長は顕著で、各地域で視聴者エンゲージメントが広がっています。eBay USでeBay Live/ファッション担当カテゴリーマネージャーを務める Sergio Sabogal(セルジオ・サボガル)氏は、「静的な出品に比べ、ライブは検討対象を絞れるため、買い手が“決断疲れ”に陥りにくい」と説明します。

さらに「ライブ配信での顧客体験は、実は従来のお店と大きな違いはありません。お店に入ってきたお客様と会話するように、ライブ配信では“ユーザーID”として訪れるお客様とつながることができます。ライブコマースは、実店舗での接客体験とお客様の注目を、オンライン販売の利便性や広がりと組み合わせられる新しいチャンスなのです。」とし、ライブコマースが新たな収益源となり、事業の多角化を後押ししていると語りました。

視聴者を惹きつける“設計”――今ここで買う理由をつくる

Sergio 氏は、長く見てもらうための核を「今この場で買う理由をつくること」に置いています。価格帯やアイテム選び、進行のテンポを連動させ、迷う前に背中を押せるように設計する――これが成功のポイントです。

実際の配信では、冒頭のクイズ機能で「800ドル以上/以下のどちらを見たいか」を質問していましたが、なんと97%が「800ドル以下」を希望しました。生配信ならではのリアルな声をすぐに編成へ反映することで、集まった視聴者の嗜好に合わせた最適化が進みます。

米国チームが重視するMC(ホスト)運用の基本も明確です。まず、検討対象を絞り込むことで視聴者の決断スピードを上げ、“選択肢が多すぎる疲れ(決断疲れ)”を避けます。次に、単に「今すぐ購入」を促すだけでなく、配信内限定の特典や割引など、その場でしか手に入らない理由を意図的につくります。

さらに、スピード重視で、商品紹介は簡潔に、大事な訴求ポイントに焦点を当てて説明することで1商品あたりの紹介時間を短く保ち、配信全体の効率を高めます。MCにはダイナミックな進行と高いエネルギーが求められ、視聴者を飽きさせずに引き込みます。あわせて、ユーザー名を積極的に呼びかけるなど個別の声かけを行い、参加感とエンゲージメントを高めていきます。

今回の長時間配信に向けて米国チームと打ち合わせを重ねたMonoshareの林氏は、次のように振り返ります。

「自社では1時間弱で10点を販売する想定で、今回は300点ほどを用意する計画でした。ところが米国スタッフからは700点の調達を求められ、正直驚きました。配信開始と同時に、どれだけスピーディに多くのアイテムを見せられるかが重要だということを学びました。」

成功するライブの条件――在庫・ホスト・コミュニティの“三位一体”

成功するライブの条件――在庫・ホスト・コミュニティの“三位一体”写真左:参加する視聴者に声掛けしながら販売
写真右:落札された商品はLive配信横の作業場ですぐに梱包へ

eBay USチームが整理するライブコマースの成功要件は、実はとてもシンプルです。
まずは、関連性が高く魅力的な厳選ラインナップによる「在庫の強さ」。次に、購入者に配信中で買う理由を示し、選択肢を絞り込むことで購入意欲を高めること。そして、ホストのエネルギーと営業力。この熱量は画面越しでも視聴者に伝わります。

さらに、配信をコミュニティ化して常連(リピーター)を育てることが重要です。コメントへの即時の反応で双方向性を高め、参加感を育みます。あわせて、価格や商品の状態説明にブレのない透明性と誠実さを貫くことが、長期的な信頼の土台になります。

外部パートナーの Cameron Storch(キャメロン・ストーチ)氏は次のように話します。

「MCは有名人である必要はありません。大切なのはエネルギッシュさ。専門的な教育がなくても、明るく前向きであれば十分に務まります。」どんな人でもMCになる素質があるという意見には驚かされました。

Monoshareの林氏は、米国流のエネルギッシュな進行や「Going!」「Coming!」といった耳慣れないボキャブラリーに驚きつつも、長時間配信の手応えをこう語ります。

「6時間の配信はこれまで経験がなく不安もありましたが、結果として1人あたりのライブ滞在時間は約3倍に伸びました。観客とMCがひとつのファミリーになる雰囲気をつくることが、いかに重要かを実感しました。」

現場レポート――「ケリー」4,500ドル落札の舞台裏

現場レポート――「ケリー」4,500ドル落札の舞台裏エルメス「ケリー」が落札された瞬間

ライブ配信はとにかく、スピード感を最優先に設計されていました。長時間配信では、観客を飽きさせないよう、30秒オークションや1ドルスタートを織り交ぜて緩急をつけます。日本では音量への配慮を気にする声もありましたが、結論としては大きな声と高いエネルギーが視聴者を惹きつけるうえで有効でした。

滞在時間を延ばす工夫としては、「30分後に高額バッグを1ドルスタートで出品する」と先に予告し、その間は手頃な価格帯の商品でつなぎます。視聴者の目的は「購入」だけでなく、知識交換やコミュニティ参加であることも少なくありません。ライブコマースでは、静止画では伝わりにくい角の擦れや匂いなども、その場でリアルに説明できることが信頼形成に直結します。

また、価格運用の一貫性も重要です。担当者は「最安値を提示した後のさらなる値下げは信頼を損なう。一度出した価格には誠実であるべき」と指摘します。

取材日に行われた配信中では、現場が沸く一幕がありました。ある視聴者がエルメス「ケリー」に関心を示すと、MCが“$4,500”と手書きしたボードをカメラに掲示。そこから希望額が次々に競り上がり、4,500ドルを超えた瞬間、会場とチャットが大きく盛り上がり、ひとつになっている雰囲気が生まれました。

Monoshareの強み――強固な基盤と改善力

Monoshareの強み――強固な基盤と改善力

eBay USがMonoshare(モノシェア)をライブコマース運用の“お手本”に選んだのは、まず熱量の高い視聴者コミュニティとフォロワー基盤があり、レビューが信頼の社会的証明として機能しているからです。あわせて、幅広いラインナップと競争力のある価格設定、適切な在庫管理という“在庫力”も高く評価されました。

さらに、フィードバックを素直に取り入れてすぐ改善するチーム体制、体験全体の満足度を押し上げる迅速な配送も選定理由に挙げています。これらすべては、Monoshareが長年eBayで積み上げてきた実績です。

Monoshareの林氏は、定期的なライブ配信に取り組み始めてから配信で継続的に購入してくれる常連客が育っていると語ります。今後も「サスピシャスに(疑わしく)売ることはしたくない」というスタンスのもと、高品質を適正価格で提供し、スピード感のある発送を徹底していく考えです。

日本セラーが学ぶべき運用原則――“イベント全体で勝つ”

米国ライブコマースでの成功事例や今回実施したMonoshareとのデモンストレーションから、日本のセラーに向けた示唆は明快です。

まずは継続性へのコミット。目安として3か月は続けることを目標にし、曜日や時間を固定した定期配信で一貫性を積み重ねて信頼を育てます。利益は個別商品ではなく、イベント全体の利益率(トータルマージン)で捉える発想も大切。あわせて、市場価格や買い手ニーズを把握するためのリサーチの徹底は欠かせません。

在庫面では、高単価と手頃価格の二層構成を準備し、競合分析(類似商品の価格や特徴の把握)を習慣化します。さらに、関税(tariffs)の透明化を徹底し、隠さず明示することで戦略に組み込みます。

Sergio 氏は「まずはトライし、継続すること」を繰り返し強調します。別の担当者も「日本の在庫は米国に比べ価格優位が残る領域が多く、関税を加味しても十分なバリューを提供できる」と見ています。

Monoshare の林氏は、「今回、米国チームから受けた刺激と事例を踏まえ、週に3回、米国時間に合わせて約3時間のライブ配信を実施する方向で検討しています」と語りました。

まとめ――デモンストレーションから“運用の型”へ

今回の日本での実証は、eBay USが描くライブコマースの「運用の型」を具体化する取り組みでした。在庫力 × MCのエネルギー × 編成設計という“三位一体”を、透明性と一貫性で積み上げる――そのお手本が、Monoshareの協力によって現場で可視化されました。

次のステップは、この型を継続運用に落とし込み、常連の育成とコミュニティ化で価値をさらに伸ばしていくことです。日本の就業時間帯(ワークタイム)に配信すれば、米国のオフタイムに自然にフィットし、日本のセラーにとっても大きな利点になります。

まずは始めて、続けて、学ぶ。それが新たな販売チャネルを活用し、売上を最大化していくための最短ルートなのかもしれません。

■過去のブログ記事
国際ファッション専門職大学特別講義レポート
https://ecnomikata.com/blog/47445/

OpenCampus オフラインセミナー
https://ecnomikata.com/blog/47099/

eBayJapan Awards 2024
https://ecnomikata.com/blog/46469/

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筆者:Sasaki Natsumi


著者

イーベイ・マーケティングチーム

世界200か国・地域から年間1億6,700万人の購入者に利用されるグローバルなオンライン・マーケットプレイス「eBay」(イーベイ)。
この世界最大級の越境ECプラットフォームを通じて海外への販売を行う日本企業を、イーベイ・ジャパンがサポートします。

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