イーベイ・ジャパン、縮小傾向の国内小売市場を越えて―「リユース商品の海外展開」で勝ち続ける戦略

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イーベイ・マーケティングチーム

今年創設30周年を迎えた越境ECプラットフォームeBayの日本法人、イーベイ・ジャパン株式会社は、2025年10月21日と22日の2日間、リユース企業のテクノロジー活用やEC販売などを応援するイベント「Reuse×Tech Conference for 2026『テクノロジーで変わるリユース市場の未来を語ろう』に出展した。東京駅八重洲口近くのTODA HALL & CONFERENCE TOKYOにて開催された本イベント。今年参加登録したリユース事業者らは1,303名と過去最高の数を記録し、会場を移転拡大してスケールアップした開催となった。イーベイ・ジャパンを代表して登壇したビジネスデベロップメント部 部長の篠原星氏による講演内容を中心に、初日のイベントの様子をレポートする。

2040年の国内リユース市場は拡大予測であるが、ネガティブシナリオも存在。リユース販売者と購入者の購入体験向上が今後のテーマ

2040年の国内リユース市場は拡大予測であるが、ネガティブシナリオも存在。リユース販売者と購入者の購入体験向上が今後のテーマ

Reuse×Tech Conference for 2026は主催者である株式会社リユース経済新聞社の代表取締役社長、瀬川淳司氏のセッションからスタート。「リユース市場動向と将来予測~2040年を考える~」をテーマに、同社が販売する『リユース市場データブック』から抜粋して講演を行った。同社が調査を開始してから15年間、リユース市場は成長率に変動はあるものの、着実に拡大を続けている。新型コロナをきっかけに流通が活発化し、加えて円安からの海外輸出の好調、物価高騰による人々の節約志向、金相場の高騰、インバウンドの回復などが追い風となりフリマサイトとリユース企業が両輪で伸びてきた結果、2021年から2024年に大きく成長した。リユース店舗の数は増加中であることから競争も激化しており、今後もますますリユースに参入する企業や海外進出をする企業が増えると瀬川氏は予測する。ただし現在は市場の成長率が鈍化しており、今後の動きがこれからの成長率を左右する見込みだ。

「2040年の国内市場は拡大が予測される。しかし、それは今後のリユース商品の購入者数(リユース人口)、1人当たりの購入金額、そして日本へのインバウンド旅行者による免税市場の規模拡大が前提となる。人口が減少する日本では、特にリユース人口が増えなければ市場の停滞または縮小の可能性もある」と瀬川氏はネガティブシナリオを言及。懸念材料として挙げたのが環境省のリユース市場調査のデータで、過去にリユース品を売却または購入した経験があると答えた割合が人口の6~7割であるのに対し、2024年の1年間でリユース品を売買したと答えた割合が3割程度にとどまっており、その数は2012年から徐々に下がってきているという。また消費者庁による別のアンケートによると、これまで中古品の買い取りを依頼して「予想した額より低かった」「買取してもらえなかった」と不満を感じた人や、フリマアプリでトラブルを経験したことがある利用者が3割近くいたとの結果もあったという。「リユース品の売買経験者があまり良い体験をできず辞めていった背景が伺える。今後はいかに経験者に再びリユース市場に戻ってきてもらうかが大事。企業がリユース売却者・購入者とどう向き合い、良い体験をしたと感じてもらえるかが市場拡大の鍵となるのでは」と瀬川氏は問題提起した。

縮小する国内市場から海外市場へ―リソースやコストをかけず世界に販路拡大できるのが、全世界に1.34億人のユーザーを持つeBayの強み

縮小する国内市場から海外市場へ―リソースやコストをかけず世界に販路拡大できるのが、全世界に1.34億人のユーザーを持つeBayの強み

同日12時より行われた、イーベイ・ジャパンの篠原星(しのはら ほし)氏によるセッション。「日本のリユースを世界のスタンダードへ~eBayが考えるShop from Japanの価値」をテーマに講演が行われた。同社の調査によると、2030年の国内小売市場規模が88%に減少が予測される中で、リユースの市場規模は242.2%と大きく拡大していくことが予測される(ともに2015年対比)という。「国内人口が減少していることから、今後に備えて国外マーケットにシフトチェンジし、リユース販売を強化することが非常に重要になってくる」と篠原氏は力説。「そこで使えるのがeBay。eBayは全世界からアクセスが可能で、世界中の通貨に対応する越境ECプラットフォーム。さらに実店舗での販売にはリソースやコストがかかるが、eBayを使えばデメリットを減らしながら、自分たちが売りたい商品をテストマーケティングしてポテンシャルを図れるためエントリーしやすい」とメリットを語った。

世界でフィルター検索される「Japan」 日本のモノに海外のZ世代からも熱い視線が

世界でフィルター検索される「Japan」 日本のモノに海外のZ世代からも熱い視線が

「日本商品の人気も相まって、チャンスは無限大」であると、篠原氏はいくつかのメディアを例に挙げた。Vogue誌の記事「The Vogue Bible for Shopping eBay」の「Shop Japanese」では日本の企業やセラー(販売者)から商品を買う価値や素晴らしさに焦点が当てられている。またTikTokでは、eBayで日本から購入した商品を開ける感動の瞬間を収めた動画がハッシュタグ「#Japaneseebay」で拡散され、海外のZ世代からの熱い支持が伝わってくる。「これまでは『日本製(Made in Japan)』がブランドとして評価されていたが、今はそれだけではなく、『日本から来た商品(Shop from Japan)』や『日本で発見された商品(Checked in Japan)』、『日本で使われた商品(Used in Japan)』といったように、「Japan」というワード自体が価値を持ちフィルター検索されているのが今のトレンドなのだと感じている(篠原氏)」

「Change is a Chance」変化はチャンス。変化を恐れるのも、モノにするのも自分次第

「Change is a Chance」変化はチャンス。変化を恐れるのも、モノにするのも自分次第

米国を本社とし、日本からの商品の約7割を米国マーケットに販売するeBayにとって、米国の関税ルールによる影響を直に受けるのは避けられない事実だ。トランプ政権は今年8月29日にデミニミス・ルール(800米ドル以下の商品には関税を免除するルール)の適用を撤廃し、すべての価格帯の商品が課税対象となってしまった。そのため、予想外の税金を払うこととなった米国バイヤー(購入者)の関税支払い拒否や通関での遅延といった事態が発生したため、eBayは10月よりDDP(Delivered Duty Paid = セラーによる関税の前払い)を必須化した。当初このニュースを聞いた筆者は、日本セラーの負担が増えて不満が広がるのではないかと心配していたのだが、それは篠原氏のポジティブかつ目から鱗のトークでくつがえされた。

「『Change is a Chance』、変化はチャンスと捉えている。このDDPの試みは長期的に多くのメリットをもたらす。まずバイヤーは表示されている以上の料金が請求されないため明瞭であり、安心して買い物ができるため、購入体験の向上につながる。結果、また購入したいと思い戻ってきてくれる。そして返品トラブルが減るとセラーの負担も減る。(篠原氏)」さらに、関税の対象になるのはeBayの中古品だけでなく新品も同じであるとし、ある外資系高級ブランドが2023年から2025の間に計9回値上げしたことを例に挙げて「新品ブランド品を正規料金で買うことにハードルを感じる消費者も増えてきている。そういった消費者がeBayのようなプラットフォームでリユース品を買う流れができると、リユース品需要や購入者数がますます増える可能性がある」と篠原氏は続ける。さらに、アメリカから他の国へ広げていくこともできる点を言及。現在は北米73%、ヨーロッパ16%、アジア8%と、eBayでの輸出国は北米が中心であるが、他の国に販路を延ばせば可能性を無限大に広げることができる。どの地域に何を販売するか再検討し、販売戦略を立てる機会となるだろう。「米国の関税については不透明ではあるが、他の国々に売る手段を準備しておくと、米国の状況が落ち着いた際にプラス要素が加わった状態になっているため、セラーにとって大きなチャンスになる」と篠原氏はまとめた。

7回目の出展となるイーベイ・ジャパンのブースにはEC担当者や個人事業主らが集まる

7回目の出展となるイーベイ・ジャパンのブースにはEC担当者や個人事業主らが集まる

本イベントが初めて開催された2019年以来、毎年ブース出展するイーベイ・ジャパンは今回7回目の参加となった(オンライン開催回を含む)。初日の開始時刻である午前10時からすでに大盛況の様子で、ブースには法人のEC担当者や個人事業主らが多く詰めかけた。既にeBayについて知っている人が具体的な質問しに来ている印象で、ジュエリーやコインを信頼のあるプラットフォームで売りたいとeBayを検討する法人や、海外販売の可能性を探る遺品整理専門の企業、他のフリマサイトと比較検討中の個人、ホビー系を専門とする大手買い取り業者、実店舗を持っていて海外への販売を考え始めている法人など、すでに商材を持ち、やりたいことが明確になっている来訪者が多かった様子だ。

ブースに立っていたビジネスデベロップメント部 ビジネスデベロップメントマネージャーの楢原悠子氏は「やはり最初は米国向けて販売を考えるセラーが圧倒的に多いが、今の米国の状況をみて他国へ販売を考えるeBayセラーが少しずつ増えてきている。eBaymag(翻訳機能などがついた無料他国展開ツール)は半数以上のセラーが利用し、一時はサイトがパンクしてしまったほどの好評ぶり。ゴルフグッズなどのスポーツ用品はアメリカよりもヨーロッパの方が人気で、そういった商品を国別で出し分けしたり見せ方を工夫したりとテクニックもいろいろある」と明かす。セラーマネジメント部 セラーマネジメント&アナリストの高田紘克氏は「eBay未経験の方は、なんとなく怖いと思っているかもしれない。最初は慣れないかもしれないが、慣れていくとスムーズに進んでいくものなので、まずは一度経験してもらいたい」と語った。

eBayではブランド品の真贋保障サービスが用意されていたり、先進的なテクノロジーやAI機能を利用できたりとメリットが多く、トラブル発生した際の補償もあるため安心だ。また外資系企業ながらも、日本企業のような細やかなサポートを目指しているという。個人や小中企業にとっては、海外販売におけるすべてを自社で行うのは簡単ではないだろう。eBayのようなプラットフォームを有効活用し、今後縮小するかもしれない国内市場から海外へ少しずつでも販路を広げてみてはいかがだろうか。

■過去のブログ記事
国際ファッション専門職大学特別講義レポート
https://ecnomikata.com/blog/47445/

OpenCampus オフラインセミナー
https://ecnomikata.com/blog/47099/

eBayJapan Awards 2024
https://ecnomikata.com/blog/46469/

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筆者:Rutsuko Sakuma


著者

イーベイ・マーケティングチーム

世界200か国・地域から年間1億6,700万人の購入者に利用されるグローバルなオンライン・マーケットプレイス「eBay」(イーベイ)。
この世界最大級の越境ECプラットフォームを通じて海外への販売を行う日本企業を、イーベイ・ジャパンがサポートします。

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