【第4回】通販事業拡大に必要不可欠な物流波動への対応

森田 崇史

全5回でお伝えするコラムの第4回は、『物流波動』とその対応方法についてお話します。

通販事業者様が実施する販売促進には様々な施策があります。新聞広告、広告チラシをはじめラジオCM、TVCM等のマスメディアを活用した方法や、メルマガ、DM(電子メール・印刷物)といった対象者を特定した施策、WEBを活用したSEO対策、バナー広告等があります。

最近では、FacebookやInstagram、ライブコマースといったSNSを活用した手法も用いられるようになりました。インターネットやSNSでの情報拡散のスピードは、圧倒的に速くなっており、どんな商品にもジャンルを問わずヒットの可能性があります。時には、翌日には市場から在庫が無くなるほどの人気商品となる場合もあります。

このような販売促進施策を実施し、予想外に商品が大人気となった場合に困るのが、急激な受注件数の増加に対応するコールセンターの受注業務と、倉庫における出荷作業等の物流業務です。

コールセンターの場合は、通常の人員では対応ができなくなり電話受注が取れず、お客様からは「つながらない」といった不満が生じて、売上が減少する可能性があります。また、物流センターでは、通常人員での出荷作業の対応に限界が生じて、当日の出荷処理が間に合わず、納品日に遅れが生じるといった状況に陥ります。

結果、販売促進施策を行ったものの、顧客獲得につながらずに売上がアップせず、定期で購入しているお客様にもご迷惑をお掛けし、定期購入をやめてしまうことにもつながりかねません。このような「物流波動」に苦慮している通販事業者様は多く見られます。

また、物流波動には、このような突発的に発生する波動の他に「季節波動」があります。

例えば、週間単位の短いスパンで考えると、通信販売では土日に自宅でネットショッピングをする傾向にあるため、出荷は週明けに集中します。直営店では、客数が伸びる週末に向けて商品を補充し、週明けに再度商品を補充するため、出荷はウィークデイの半ばと週明けに集中します。

ただ、このような物流波動は比較的、事前予測によって対応がしやすい場合がほとんどです。年間で見ると、特定の時期に行われる催事などによって出荷量が増加する場合があります。

例えば、アパレル商材における夏・冬のバーゲンセールや初売りセールなどです。さらに夏物と冬物では、商品のかさが異なるため、流通量や保管量が変動します。

このように、年間を通じて「流通量」や「保管量(=商品の保管スペース)」はかなり大きな変化が生じます。これらについては、保管スペースなどをフレキシブルに調整することが効果的です。

例えば、物流倉庫の契約形態には、定額制のものと、物流量や作業量に応じて金額が算出される変動制のものがあります。商品の流通量が一定の場合は、お客様にとっては定額制のほうが有利ですが、アパレル物流のように流通量の波動が大きい場合は、流通量が減少して保管スペースに空きができる時期にも、一定の料金を支払い続けなければならなくなってしまい、コスト負担が大きくなります。

そのため、物流量・作業量に応じた変動制のサービス利用を望まれます。また、フレキシブルな対応を可能にするには、正確な在庫管理が重要です。物流量の変化を日頃から正確に把握するためには、人手に頼った目視や検品ではなく、ハンディスキャナと無線通信システムなど最新技術を活用した方法が有効です。最近では「RFID」による管理も行われています。

そのほかにも、業態や取扱商品によっては、1か月の中で特定の日にイベントを行うことで、物流量に大きな変化が生じる場合もあります(例:「毎月5日はポイント5倍キャンペーンの実施」など)。1週間単位よりもやや大きなこうした物流量の変動には、「正確さ」や「迅速さ」に加えて、作業員の確保も重要な課題です。できるだけ人件費が嵩まないよう、計画を練っておくこともコスト管理には重要です。

このような物流波動への対応や在庫管理を自社で行うことは、大変な労力と時間が必要になります。自社のリソースは商売に専念し、物流はアウトソースする「商物分離」が、通販事業の拡大には必要になってくると考えます。


著者

森田 崇史

東京都出身。大学卒業後、ファミリーレストランチェーンに入社しホール、調理スタッフを経験。その後、玩具問屋の営業職に転じ、接客と卸・流通に関わる経験を積む。
2000年、佐川グローバルロジスティクスに入社。営業部門で物流センターの立上げを経験し、2年目に全国9か所のセンターを3か所に統合するプロジェクトの運用、システム設計を担当し成功させる。その後も衣料通販、レンタルサービス、書籍などの物流センター構築を担当。2011年より営業部の部長を務め、営業開発部、物流ソリューション部と営業に関わる部長を歴任、2018年より執行役員、現在に至る。

弊社HP:http://www.sagawa-logi.com
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