越境EC進出の前に一度は考えるべき、3つの要点とは

ECのミカタ編集部

 越境ECに進出する際に何が必要だろうか。それにまつわる情報は、テレビやインターネットから簡単に入手することができるようになった。一見、便利な時代に見えるものの、逆に情報がありすぎて困っていることは無いだろうか。

 今回は、先日開催された「越境EC“まるごと”フェスティバル2016」の株式会社インフォキュービック・ジャパン 荒井義弘氏のセミナーを元に3つの要点に絞って考えていきたいと思う。

まずは、越境ECに進出するための“気持ち”を確認する

 越境ECとは、日本に居ながら海外で商品を売ること。その商品を売る方法として、モールに出店する方法と独自サイトで売る方法がある。モールに出店した方が乗り越えなければいけない壁が少なく、手軽始めることができる。しかし、自社の存在が埋もれたり、価格競争に巻き込まれたりする恐れがある。一方、独自サイトは一から始めることで大変なことは多いが、その分、自社顧客を持つことができるメリットもある。どちらも同様にメリットとデメリットがあるため、「どちらの方が自社に合っているか」を十分に吟味する必要がある。

 越境ECに進出する前に確認すべきことは、「きっと越境ECでもできるだろう」と国内ECの延長線として考えていないかだ。この点について荒井氏は「“できるだろう”はできない」と話す。なぜなら、市場調査不足やマーケティング戦略が弱いなどの問題があり、その問題にきちんと向き合い、解決していくことが大切だからだ。まず、意識を変え、一つ一つの問題を解決していき、そこから越境ECに進出すると、きっと成功するだろう。

越境ECに進出する前に準備すること

 まず、「越境」ということで考えることは、言語対応だ。多国に商品を売るために、多国対応の言語を用意する。荒井氏は「最低限の言語対応で十分」と話す。あまりにも多国の言語対応をすると、その分、コストがかかり、1つ1つの言語のクオリティーが下がることとなる。それよりは、対応言語数よりも翻訳クオリティーを上げることに注力した方が良さそうだ。

 次に「決済方法」に関してだが、最初からベストなサービスを探すことはしなくて良い。荒井氏によると、7割問題が無ければ良く、後から変更することは比較的に簡単だそうだ。ただし、外貨決済の補償は日本ほど手厚くないため、そこは気を付ける必要がある。また、同様に輸出対象国の法律を確認することが大切だ。商品が輸送禁止品ではないかを確認し、その際に商品に含まれる材料も同様に確認する。

 さらに、物流会社を自社の状況に合わせて選択する。その上で「3つの選択肢がある」と荒井氏は話す。1つ目は、運送会社と直接繋がることだ。自社にて伝票、通関書類を用意し、配送業者に直接出荷する。例は、ヤマト運輸株式会社の「宅急便」だ。2つ目は、フォワーダーと呼ばれる貨物利用運送業者を利用することだ。自社フォワーダーの持つ国内倉庫に転送し、通関関連業務と国外発送は代行してくれる。ただし、送料とは別に手数料が発生する。例として挙がったのは、株式会社ロケーションズだ。

 3つ目は、転送サービスを利用することである。物流の仕組みはフォワーダーとほぼ同じであるが、これはエンドユーザー向けのサービスだ。そのため、送料と手数料はエンドユーザーが支払うこととなる。例は、tenso株式会社が運営する「転送コム」だ。このように3つの選択肢があり、どれが自社に合うかを吟味して決める必要がある。

 この他に「事前調査」をしっかり行うことがあり、WEBの視点から行う。現在では、Googleなど無料で使える調査ツールがあるため、使いやすいものを自由に選ぶことができる。市場を知るためにも、ここの事前調査に力を入れ、市場を把握しておくとこの後もスムーズに進むだろう。

集客の方法をしっかり押さえ、越境EC進出の際に生かす

 越境ECに進出する前の準備が終わったら、次はいよいよ越境ECに進出だ。色々な壁を乗り越え、越境ECに進出するため、せっかくならば売上を上げたい。しかし、海外では「“知らないものは買わない”という原則がある」と荒井氏は言う。つまり、商品の認知を拡大させなければ買ってもらえず、売上が伸びない。その認知を拡大させる方法として、動画やSNSがある。

 過去に海外で人気ブロガーがブログで商品を紹介すると、それが口コミで広がり、ヒット商品になったという。これは、日本でも同様に言えることであり、人気モデルなどの有名人が紹介した商品は売れる可能性が高い。海外では、比較的に知人の情報や口コミから商品が広がるという。インターネットの拡散の力が強く、たちまち商品の売上に大きく繋がることとなる。

 ここでセミナーで挙がった、海外で日本商品を販売するために多言語リスティング広告を使った事例を紹介する。成果は、月間売上が3.5倍増加した。さらに、国別にすると、マレーシアとインドネシアが売上高く、単価の場合はインドネシアが高かった。このように、まずは国を決めず、どこで最も売れるか察知して売ることが大切だ。

 さらに、SNSの事例として大手電鉄系企業も挙がった。インバウンドを目的に、Facebook等で日本の紹介をした。成果は、約30万「いいね!」を獲得し、認知拡大に繋がった。また、Facebookに掲載する写真は、綺麗に加工された写真よりも、日常が溢れたような親しみやすい写真の方が海外受けが良い。なるべくなら自然な写真と、分かりやすい言葉でFacebookを更新すると、理解されやすく「いいね!」の数増加となり、認知が拡大される。

 あくまでも認知拡大が売上向上の全てではないが、海外の原則のように、多数の人に商品が認知されないと購入に繋げることはできない。そのような状態が続くと、必死の思いで越境ECに進出しても、意味が無いことになる。これを防ぐために、最後に荒井氏は「言語と国にとらわれない、柔軟なプロモーション戦略が必要」と話し、セミナーは幕を閉じた。

 今回紹介した3つの要点は、越境ECに進出する上で必要なことである。多数の情報から「何を始めれば良いか」が分からなくなった場合は、この3つの要点から一度考えてみると、きっと良い方法が見つかるはずだ。越境ECに進出する企業が増加していく今、流れに乗り遅れないように早く越境にEC進出したい気持ちはあるものの、そこは焦ることなく、物事をじっくり考えながら一つ一つの階段を確実に踏むことが最も大切なことである。もし、何も分からなくなったら、一度離れて冷静になってから考えると、案外すぐに問題が解決する。色々と試行錯誤をしながら、越境ECに進出していくと、海外でも愛されるECとなるだろう。

【セミナー講師のプロフィール】
荒井義弘:1976年生まれ。大学卒業後はタッチパネル製造メーカーでシステムエンジニアとして、計装監視システムに従事。 その後IT業界で営業職に転向。現在はSEMコンサルタントとして顧客提案から設計仕様作成、案件の進行管理まで様々な対応を進める。

【株式会社インフォキュービック・ジャパン】
海外進出支援社数・300社以上の実績を有するグローバル・マーケティング企業。越境ECに必要な、多言語サイト制作やリスティング広告等のマーケティングソリューションをワンストップで提供している。

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