楽天、フリマアプリ「フリル」のFablic買収。狙いは?
楽天が「フリル」を運営するFablic社を買収
楽天株式会社(以下、楽天)が、フリマアプリ「フリル」を運営する株式会社Fablic(以下、Fablic)の発行済み全株式を取得、完全子会社化したことを発表した。株式取得額は公表していない。
スマートフォンで個人間の売買取引ができるフリマアプリは、近年市場を大きく広げている。ECでのCtoC市場と言えば、フリマアプリとオークションが代表的だ。そんな中でフリマアプリが急速に普及している理由としては、オークションとは異なり、出品者が決めた価格でスピーディーに売買が行うことができるからである。
このフリマアプリの急速な普及は、経済産業省が発表した2015年度の「電子商取引に関する市場調査」を見てもわかる。 本データによると、2015年のBtoC-EC市場規模は13兆7746億円であり、前年比7.64%増という結果になった。数字を見ると伸びているが、2014年度までの過去5年間で前年比10%以上増えてきたことを考慮すると、伸び率は鈍化しているのが現状だ。
そこで原因として経済産業省が挙げた理由の1つが「CtoC-ECの拡大」なのだ。CtoC-ECの拡大とはフリマアプリ市場を指しており、このようなCtoC-ECのフリマアプリがBtoC-EC市場の伸び率を鈍化させていると見られている。
キーワードは「楽天ID」「楽天スーパーポイント」
楽天は2014年11月より、スマートフォンでの利用としたフリマアプリの「ラクマ」を提供しており、流通額を拡大させている。出品手数料が無料であることが大きな特徴。商品はオールジャンル扱い、幅広いユーザー層を獲得している。
一方Fablicが運営する「フリル」は、2012年7月に日本初のフリマアプリとしてサービスを開始。以降順調にユーザー数を伸ばし、現在アプリのダウンロード数は累計500万を超えている。ジャンルはファッションや美容用品に注力していて、10代後半から20代女性を中心に支持を集めている。
そして今回、楽天はフリマアプリのCtoC事業を更に拡大させるべく、楽天グループにFablicを加えた。これにより、それぞれの顧客基盤や各サービスの強みを活かした連携をしていく。具体的には「フリル」においても「ラクマ」と同様に楽天IDを使ったログインを可能にしたり、楽天スーパーポイントを活用したポイントキャンペーンを実施する予定だ。
楽天・Fablic、両社のメリット
では、なぜ楽天は多くのフリマアプリサービスの中で、「フリル」を運営するFablicを買収したのだろうか。
その理由として、ユーザー数が「メルカリ」に次いで多いということが挙げられると思う。株式会社ADDIXが発表した「フリマアプリについての意識調査」によると、フリマアプリの利用について「使っている」と回答した人が23.3%、約4人に1人が利用している結果に。その中で利用しているフリマアプリは最も多いのが「メルカリ」で78.2%。2位は「フリル」、25.5%であった。
2016年7月末時点で「フリル」と「ラクマ」における月間流通総額は合計で数十億円にまで成長している。そのため連携することで、より効率的に顧客基盤の強化と拡大を行うことができる。また相互送客を行いながら、楽天ID・楽天スーパーポイントによる「フリル」ユーザーの利便性が向上する。
そして楽天グループ全体のユーザー層が広がり、楽天グループが提供する様々なサービスにより形成される経済圏の中で利用することができる『楽天スーパーポイント』というプログラムにて、顧客の流入拡大・経済圏内でのサービス利用や回遊性を促進する「楽天経済圏」の拡大へも繋がるため、両社にとってメリットが大きい。
今回の買収は、「フリル」と「ラクマ」がCtoC市場に利便性向上などの大きな影響を与えていくことを予感させる。
楽天は今後、楽天グループが持つマーケティングに関する知見や巨大な顧客基盤と、Fablicがフリマアプリ市場を創出してきたことによって培った高い企画・開発力を結びつけることによって、両社サービスの利便性を一層向上させると発表している。
なぜFablicはこの時代に、最初にフリマアプリに目を付けたのか?