日本銀行の決済機構局の調査レポートから考察する、未来のモバイル決済
日本銀行の決済機構局が6月20日に「モバイル決済の現状と課題」と題した調査レポートを発表した。一口にモバイル決済といえど、アプリなどを通じて遠隔での支払や送金を行うものや、商店などの店頭で携帯電話やスマートフォンを読み取り機にかざして決済をするものなど、さまざまな形態のものがある。
今回はその中から、日本における店頭モバイル決済の現状などについて考察してみたいと思う。
世代としては、どの世代が活用しているのか?
まず、年齢別・性別にみると、店頭でのモバイル決済を利用していると回答した人の比率は、20代から50代の男性で相対的に高めであるという。一方、60代以上の層は、そもそもモバイル決済機能について認知していない人も多いという結果が出ている。
男性のほうがゲジェット系に興味も持ちやすいし、小銭を出すことの手間を感じやすいのかもしれない。米国およびドイツについても、日本同様に利用者は50代以下が多く、高齢者の利用率は高くないという数字が出ている。
店頭でモバイル決済をしているのは東京が多い
また、地域別にみると日本の場合、店頭でのモバイル決済は主に都市部で利用されており、とりわけ関東圏(特に東京都)において利用していると答えた人の比率が高くなっている。この背景としては、そもそも電子マネーの地域別の保有率は関東地方の保有率が高いことと、都市部においては店頭モバイル決済が利用可能な店舗等も多いことが考えられる。
日本でのキャッシュレスの利用額の高さ
電子マネーの利用額を各国比較でみてみると、日本は世界の中でも群を抜いて、電子マネーが多く利用されていることがわかる。その中でも利用が多いのはSuicaやPASMOのような一定の残高を予めチャージしてから使うカードとなっている。通勤通学などにももちろん使うのだが、要因としてはそれが使える環境の整備が進んでいるという点が大きいだろう。
スマートフォンの普及で変わってくる、これからの決済
こうした日本においてのモバイル決済の現状としては「50代以下の男性」が「東京及び関東近郊」で使う頻度が高く、その「利用額は世界に比べて高い」ことが分かった。モバイル決済の導入自体は2004年から、と世界に比べ歴史はある。しかし国民性とうまく合致していない点や、すでに完璧に整備されていた金融インフラなどの背景もあり、日本全体で俯瞰して見るとそこまで浸透しているという実感は正直持っていない。
しかしここ数年のスマートフォンの普及で状況は変わってきそうな気配はある。アプリを通してのスマホ決済も浸透してきている。スマホ決済を利用することに抵抗のない世代が増えてくるなか、関東近郊以外の都市部や地方においても気軽に使えるようなインフラの整備は急務だろう。
小売店やECショップは多様な支払いの形態に、きちんと対応しておいたほうがスマートだと思うし機会損失もないはずだ。インバウンド需要もこれから右肩上がりとなってくる中で、事業者側のショップ運営方法が明暗を分ける時代がそこまで来ているなと感じた今回の資料だったように思う。