東南アジア版「Amazon.com」、ラザダ 豊富な品揃えでアジア各国に旋風を

急成長中、東南アジアのEC事情

東南アジアのECマーケット開拓において、独ベンチャーキャピタル(ロケットインターネット社)が設立した「ラザダ」が大きなリードを見せている。外資として東南アジアに本格参入したパイオニア的企業であり、主要六カ国(タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、インドネシア)域内で最大級のEC企業という立ち位置に、わずか二年で到達した。
今後さらに投資を拡大していく方針を発表し、成長の期待高まる東南アジアECマーケット市場で競合他社や地元企業との激しい戦いが予測される。

数多くのEC企業に恵まれ、型番商品や流行商品を希少感なく購入でき、比較検討する要素は値段のみという価値観の広まる我々とは違い、ECという概念自体が浸透しきっていない諸国では、流行の物は店頭で品薄になり欲しいときに買えない可能性もあることもめずらしくない。Amazonなどがこれまで重要視してこなかった地域に目をつけたロケットインターネット社による、スピード感溢れる事業展開だ。

月間PV前年比最大84% 取引規模は過去半年で倍増

サイバーエージェントベンチャーズの見通しでは、東南アジア主要各国のECマーケットは13年の153億ドルから、19年には622億ドルまで成長するだろうとしている。
非常に成長著しい市場で、ラザダの月間PVも驚異的な伸びを見せている。まずは規模の拡大に集中し、顧客の囲い込みを早急に目指すと語るのは同社CEOのマキシミリアン・ビットナー氏だ。商圏範囲内の同業であるAmazonや中国の阿里巴巴集団(アリババ集団)など、国際的大企業が本格的に参入する前に一歩先んじようという意向が感じられる。

海外メディアの中には、ロケットインターネット社は欧米で成功したネットビジネスモデルをクローンのように模倣し、新興国で展開するという戦略で今までに100件以上のネット企業を立ち上げている点などから、批判的な意見もないわけではない。ラザダは、リニューアルされる前の古いアマゾンのサイトなどアマゾンのモデルを表面的に真似て作られたものであり、これは有名な会社のビジネスモデルとサービスを真似てローカル化し、ほとんど区別が困難なほど酷似したウェブサイトを運営することの前例になるかもしれない、とする意見もある。

ラザダの成功を受け、今後各国のEC企業や現地資本の企業も本格的に商圏内で企業活動を展開していくだろう。東南アジアでもEC戦国時代と称される時代がくれば、ECの概念がワールドワイドに広がり、発展していくことは間違いない。その中で、我々が身近に接するECにもハッとする変化や思いもよらなかった発見など、次々と新しいモノが生まれていくだろう。成長市場をめぐる競争の過熱現場は、今後とも要チェック間違いない。