厚生労働省「働き方2035」から読み解くVRやAIのECとの深い関係性
厚生労働省からパブリッシュされた「働き方2035」という報告書をご存知だろうか。
今から約20年後の働き方の理想像を描いたものだが、その内容はかなり斬新なもので、私たちの将来に大きな指針を与えてくれる。2035年の未来、私たちの生活とそこに関わるであろうECの未来はどのようになっているのだろうか。
衝撃の未来像が提示されている「働き方2035」とは
"2035 年にはさらなる技術革新により、時間や空間や情報共有の制約はゼロになり、産業構造、就業構造の大転換はもちろんのこと、個々人の働き方の選択肢はバラエティに富んだ時代になるに違いない。"
(引用:厚生労働省「働き方の未来 2035」~一人ひとりが輝くために~」)
技術革新により働き方が大きく変わるというメッセージを発したことは非常に大きなポイントと言えるだろう。しかし、この報告書で盛り込まれている内容は「AIやロボットが人間の仕事を奪う」という悲観的なものではない。むしろ、この技術革新によって、働くすべての人々に恩恵を与えうるという内容で、私たちに大きな期待を与えてくれる。
働き方だけでなく、人々の生き方に関わる提言
報告書の参考部分には、「未来通信〜20年後の私は幸せに働いていますか?」というタイトルで5人の想定事例を提示している。この報告書で訴求したい、未来の働き方が具体的に示されており、より理解を深めやすくなるだろう。
たとえば、2016年時点で50歳だった女性は会社の経理業務を担当していたという。しかし、AIにより仕事がどんどん代替されていった。いわゆる「仕事を奪われた」一人として描かれているが、69歳になっている2035年は心理カウンセラーの資格を取って、病院でAIを使った問診業務を行なっている。AIの進化はネガティブな側面だけではないということを訴求している。
また、2035年に23歳になっている男性プログラマーの場合は、海辺の街に住みながら、さまざまな国のプログラマーたちと一緒に仕事をしているという。このように、報告書では働き方に限らず、生き方についても言及されている。
働き方2035のキーポイント「技術革新」
この報告書の内容でキーポイントになっている技術革新。報告書の3ページでも、新しい労働政策は技術革新に合わせて、もしくは先取りする形で構築する必要があると述べられている。
4ページで技術革新の現状と予測についてまとめられているが、ここで興味深いのはVRやAR・MRに関する言及がAIのそれより先にあることだ。世間ではAIへの注目が大きくなりがちだが、厚生労働省はそれよりVRやAR・MRの進化に注視しているのかもしれない。
厚生労働省の意図はどのようなところにあるのだろうか。その理由として考えられるのが、これらの技術が場所の制約を取り除いてくれるポテンシャルを持っているからではないだろうか。先の章で取り上げた男性プログラマーのような働き方をするには、場所の制約を取り除くことが求められる。それには、VRやAR・MRが大きな鍵を握ることになる。報告書からは、厚生労働省の考えを垣間見ることができるのではないだろうか。
2035年、ECの未来はどうなっているのか?
また、このVRやAR・MRの進化はECの未来にも大きな影響を与えることになるだろう。2035年、私たちはVRで買い物をする。技術革新が進めばそんな未来が訪れる可能性も高い。
VRにより距離の制約がなくなれば、遠方に住んでいる友人とVR上でショッピングを楽しむことも可能だ。2Dの画面で商品を選定して購入する現在のECから、よりリッチな体験ができる全く新しい買い物のスタイルが誕生するかもしれない。
また、街中を歩けばAIやAR技術を搭載したスマートグラスが、おすすめのお店のレコメンデーションして、その情報を表示するなんてことも可能になるだろう。スマートグラスを装着している人の特性をAIが学習すれば、その人にぴったりのお店をチョイスできるようになり、「お店に迷う」という言葉が死語になるのではないか。
このように、2035年は、働き方、そして購買行動を含めた人々の生活スタイルがガラッと変わっていることが予想される。ARやVR、はたまたスマートグラスなんて実用化されるのかという懐疑的な見方も一部には存在するだろう。しかし技術の進化、特にITを中心としたテクノロジーは一人の天才が現れただけで大きな進歩を見せる。
スマートフォンを生み出したAppleのスティーブ・ジョブズ、Facebookを生み出したマーク・ザッカーバーグなどその例は枚挙にいとまがない。働き方2035が示す未来は、決して絵空事では片付けられないのではないだろうか。