アダストリア社、2018年2月期の決算内容を公表。WEB事業本部の独立でWEB強化か
株式会社アダストリア(以下、アダストリア)は、2018年2月期決算(総括・通期業績・2019年2月期通期業績予想等)を取りまとめ、その内容を公表した。全体での苦戦がにじむ中、WEB事業は好調だ。そのEC分野が今後どう同社のビジネスを牽引するかにも注目が集まる。
WEB事業本部が独立
カジュアル衣料品および雑貨を中心としたSPAブランドを展開する同分野のリーディング企業であるアダストリア社(東京都渋谷区渋谷2丁目21番1号渋谷ヒカリエ 27F)は、2018年2月期決算(総括・通期業績・2019年2月期通期業績予想等)を取りまとめ、その内容を公表した。
同社は、その中で社内組織について、4つの統括本部と1つの事業本部を軸に再編を行ったことを説明している。ブランド事業を担うのは営業統括本部では、ブランド、支店、マーケティングが一体となった運営をすることで、国内既存事業のだけではなく、海外展開ブランドの商品にも視野を広げるとしている。また、顧客理解の視点から「風通しの良い営業組織」を作っていく方針だ。
また同社は、これまで営業統括本部の傘下にあったWEB事業本部については、今後のWEB事業の成長と多角的な展開を視野に入れ、独立した組織とすることにした。700万人を超える自社EC会員データの分析・活用を進め、店舗とWEBの垣根を超えたユーザー体験の創出を図る。
2018年2月期は、やや苦戦
各数値について見て行こう。2018年2月期の売上高は、前期比109.4%となる2,227億円だった。ニコアンド・スタディオクリップ・ベイフロー・レピピアルマリオなどが売上を牽引したが、グローバルワーク・ローリーズファームはいずれも既存店売上高が前期実績を下回り、全体では既存店売上高前期比99.4%とやや苦戦した。
海外では、アパレル市場の環境変化が想像以上に厳しかった米国、及び香港・中国で苦戦している。売上総利益率は、54.2%と前年同期比2.1P低下した。主な要因は、在庫消化促進による値下げ率の上昇としている。販管費率は、52.0%と前年同期比3.0P上昇した。広告宣伝費率は0.4P上昇したが、10周年だったニコアンドなど主力ブランドにおける広告宣伝強化や、他社ECサイトでのクーポン増加等が要因だ。営業利益率は2.2%、EBITDAマージンは6.8%だった。純利益は前期比7.5%の8億円となった。前述の通り、米国ベルベット社ののれん等減損損失17億円をはじめとする合計48億円を特別損失として計上したためとしている。
また、2019年2月期の業績予想については、連結売上高は、前期比101.9%の2,270億円と予想している。営業利益は、前期に立ち上げた新規事業の赤字は拡大するものの、国内既存事業の増益や、オフィス移転費用、及びのれん償却費等の減少もあって84億円と増益を見込む。この営業増益に合わせ、前期の特別損失計上の反動もあって、連結純利益においても大幅な増益を見込む。設備投資は、既存事業の出店に加え、物流施設の拡張等に投資を予定しているが、前期比では減少するとしている。
WEB事業は至って好調
EC関連では、冒頭でも触れたWEB事業が引き続き快調だ。WEB事業の売上高は333億円で、前年同期比117.3%と引き続き2割近い成長が続いている。国内売上高に占める比率は16.6%で、その中でも自社ECサイト『.st』を経由した売上が半分以上の8.6%を占めている点が同社の強みであると分析している。会員数についても700万人を突破して引き続き増加している。
また、今期はポイントプログラムを強化し、新規会員の獲得を加速させるとともに、購入頻度向上など既存会員の活性化に取組む計画だ。具体的にはポイント付与率を高め、ポイントがたまりやすく、かつ使い勝手の良いプログラムに変更するとのこと。さらにWEB経由の会員獲得に加え、全国約1300店舗の店頭でも会員を獲得できる点、マルチブランド展開を実施している点などの強みを生かす方針だ。
拡大するEC市場を力強く牽引するファッション業界。リアル店舗では設備投資や人件費などコストが利益を圧迫する構図は、同社によらずとも、もはや宿命とも言える。そこにおいてEC事業やオムニチャネル化が事業全体を押し上げる姿も散見されるパターンだ。ここにおいてもECが今後の多くの事業体のビジネスそのものを加速させるエンジンとなり得るのを示唆しているとも言えるだろう。