2022年までに国内3位の規模へ 本気を出したeBayは日本を攻略するか
今年2月、eBay Inc.がジオシス合同会社(以下、ジオシス)の日本事業を買収することが発表された。これにより、ジオシスが運営していたECサイト「Qoo10」も、eBayに譲渡されることになる。eBayにとって、日本のEC市場での活動を本格始動する表明となった。実は2001年に、eBayは日本市場に参入している。そのときは1年足らずで撤退したが、時を経て今、なぜ日本へ再進出するのか。その狙いや戦略、ビジョンについて、ジオシスあらためeBayJapanの社長に就任したHenry Chun氏に聞いた。
Henry Chun氏は大学卒業後、ロッテ百貨店、LG商事、サムスン物産を経てeBayに入社。eBayが韓国のGmarketを買収し、eBay Koreaとなるとその代表を務めた。実は今回の社長就任は、そんなHenry Chun氏のキャリアに起因している。Qoo10の創業者(ク・ヨンベ氏)は、もともとGmarketの社長。そのため、「Qoo10」と「Gmarket」のビジネスモデルは非常に近い。つまり、Gmarketの社長経験があるHenry Chun氏にとって、Qoo10の運営は馴染み深いものなのだ。
まずHenry Chun氏は、2001年にeBayが日本市場に参入・撤退したことについて、「日本市場の特殊性や顧客の特性を理解せず、米国での成功経験やビジネスモデルをそのまま用いようとして失敗した」と振り返る。
今回の参入では、その失敗経験を生かしてビジネス展開していくと宣言。親会社であるeBayの経験や資本、テクノロジーを活用しつつ、実質的な運営は日本で行っていく。そして、日本市場にローカライズしたサービスづくりを徹底していくという。具体的な改善点として、まず手数料の改定を挙げる。
「従来は販売者の規模や、商品の価格によって手数料を決定していました。そのため、大手のセラーは7~8%と少なく、中小は12%と高い。これを不合理と判断したのです。新しい手数料は商品カテゴリーを基準とし、家電や生活必需品など価格競争が厳しく、販売マージンが低いものは6~8%に、ファッションなど価格競争が低いものは9~10%に設定しました」
この改定によって、出店者の負担軽減と同時に、主に中小のセラーの参入障壁を下げることを目指していく。続けてHenry Chun氏は、Qoo10の特徴や優位性について言及。同サービスは、会員の7割が10~30代の女性。この層へのアプローチをさらに強化するため、3つの大きな投資を予定しているという。
「一つ目は、認知度を高めるための集中的なマーケティング。四半期で数百万ドルを投資していく予定で、テレビCMなども検討しています。二つ目はファッション、ビューティ関連など、Qoo10の顧客が求める商品セレクションの拡充。そのために、国内でトレンディなアイテムを扱っている中小のセラーを増やしていきます。Amazonや楽天が大手セラーを優先しているため、中小は取り残されている状況。(連携することで、中小のセラーは)販売を拡大して成長できますし、我々も他社と差別化を図れる商品展開ができます。三つめは買い物時の不便の解消。Qoo10ではTシャツだけで50万種類以上も扱っていますが、顧客はそのすべてを見ることはできない。そこでAIの活用などによって、この部分を改善(膨大な情報のなかから最適なアイテムと出会えるような仕組みづくり)する予定です」
このうち、二番目に挙げた中小規模のセラーとの連携や支援を、特に強化していくとHenry Chun氏は続ける。現状として中小のセラーは、売り上げ拡大や成長のために必要な情報を満足に得られていない。そこをeBayJapanとしてサポートしていく考えだ。具体的な方法について、Henry Chun氏は次のように説明する。
「日本のセラーの方々は、越境取引に関心があっても、言語と配送に問題を感じている。その二つを解消するために、自動翻訳ツールやeBayのグローバルネットワーク、独自開発した配送ネットワークなどを提供し、販売機会を増やしていただきます。Qoo10ですでに販売している商品が、自動的にeBayにも出品されるようなツールの開発も考えています。」
Henry Chun氏日本市場へリベンジなるか
Henry Chun氏は、日本におけるEC市場について、大きなチャンスがあると見通しを語る。韓国のEC化率の18%に対し、日本はわずか7%。まだ成熟していない市場ゆえに、これからの成長が見込めるという。今後のビジョンとして、2022年までに流通総額5000億円を達成し、ECプラットフォームとして国内3位の規模を目指していく。戦略として、コアユーザーである10~30代の女性客へのアプローチ強化をすることで、他社との差別化を図っていくと明言した。大きな方向性を示したことで、セーラーやユーザーにとっての使いやすさや利便性向上も大いに期待できそうだ。
eBayにとってはリベンジであり、日本のEC事業者にとっては黒船襲来である今回の買収劇。国内EC市場は、これを機にさらに成長を加速させることだろう。eBayJapan 、そしてHenry Chun氏の動向に今後も注目したい。