2023年度には6,120億円規模へ 「ECにおけるネット決済代行サービス市場の現状と展望2019年度版」が公表される

ECのミカタ編集部

情報・通信、アウトソーシング分野専門の市場調査機関である株式会社ミック経済研究所(本社:東京中央区、代表:有賀 章、以下「ミック」)は、国内におけるEC(電子商取引)のネット決済代行サービスを対象とした「ECにおけるネット決済代行サービス市場の現状と展望 2019年度版」を発刊した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

同マーケティング資料は、国内におけるネット決済代行サービス事業者(以下「PSP」=PaymentService Provider)を対象に、各社のネット決済代行サービス売上及び市場の動向について調査。

また同調査では、各社の売上実績および予測値を、以下の観点から集計・分析し、各社の動向を積み上げ、2023年度までのECにおけるネット決済代行サービス市場の中期予測をしている。

[契約形態]
決済処理型、収納代行型

[決済手段]
クレジットカード、コンビニ、電子マネー、ネットバンク、キャリア、振込/ATM、国際決済(外貨・Alipay、Paypal)、ID 決済など

[商品カテゴリ]
物販、デジタルコンテンツ、サービス(役務含む)、公金・公共料金

2019年度から2023年度まで年平均成長率16.2%で推移

2019年度から2023年度まで年平均成長率16.2%で推移

同社資料より。

今回の調査では、国内のEC(電子商取引)におけるネット決済代行サービスを提供している企業を対象に調査が行われている。同調査によるとネット決済代行サービス市場規模は、2018年度で288,400百万円、2019年度で前年度比119.6%の344,900百万円となる見込みだ。

経済産業省の「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、日本の消費者向けEC市場(BtoC)規模は、2017年で前年比109.1%の16兆5,054億円に拡大し、2016年度に続いてほぼ二桁伸びで市場の拡大が続いている。

ここ数年で企業に限らず、個人が誰でも簡単にECサイトを立ち上げることができるサービスや簡単なコードをWebサイトに組み込むだけで直ぐに決済サービスを導入できることを特徴とする事業者の参入、及び大手ECモールの出店無料化などの影響などにより、ECモールに新しく参入する事業者や個人が増加し続けている。

さらにEC専業の中小規模ショップだけでなく、ECサイトと実店舗の両方を持つ事業者や、直接消費者に販売するメーカー直販サイト、またカタログ通販やテレビ通販などの従来の通販企業など、実店舗や既存の各種チャネルに加えてネットも重要な販売チャネルとして注力する企業が増え、PSPにとっての顧客が増えている。

PSP市場は、EC事業者からの価格圧力とセキュリティ投資の増加でますます競争が激しくなるものの、今後も国内のEC市場は順調に成長していくと予想している。

またEC化率も引き続き上昇が見込まれ、ネット決済代行サービス市場も競合との差別化に成功した企業が勝ち残るような厳しい市場環境に変わりつつ、このまま高成長が続くと予測。2019年度から2023年度まで年平均成長率16.2%で推移し、2023年度には6,120億円の市場規模になると予測している。

求められる高レベルのセキュリティ

求められる高レベルのセキュリティ

EC市場もネット決済代行サービス市場も順調に拡大する中、クレジットカードの不正利用やカード情報の漏洩問題が深刻になっている。そこで安心・安全なクレジットカードの利用を実現するために2015年3月にクレジットカード会社だけでなく、PSPや加盟店、ネットワーク事業者、POSメーカーなど様々な関係先が協力し合って議論できる場として「クレジット取引セキュリティ対策協議会」が設置された。

そして同協議会が取りまとめて発表した「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画(以下、実行計画)」に基づいて、カード情報を通過・保持する仕組みを利用しているEC事業者は、2018年3月までに自社でPCIDSSに準拠するか、非保持化・非通過のシステムもしくは非保持化と同等ないし相当のセキュリティ措置を行わなければならず、対応に追われる企業が多くあった。

さらに経済産業省でも2018年6月から施行された改正割賦販売法に規定するセキュリティ対策の実務上の指針と位置付けられ、そこに掲げる措置またはそれと同等以上の措置を講じている場合には、セキュリティ対策に係る法的基準を満たしていると認められるとしている。

そのためPSP側でもカード情報の非保持化を実現するリンク型決済やトークン決済への移行と、認証強化や不正検知システムによる不正利用対策、メールオーダー・テレフォンオーダーでの非保持化対策などの「実行計画」への対応を推進しているところだ。

拡大を続けるネット決済代行サービス市場。ECもそれらのサービスと切っても切れない関係性にあるのは言うまでもない。あらたなかつ多様な決済代行サービスが登場する中、サービスの提供側としては高いレベルのセキュリティ対策が求められることにもなる。そしてその業界版図の行く末はまだ定まらないが、同時に多くの商機が眠っているともいえるだろう。


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