アリババの新たなターゲットは中国の新興エリア 2019年『618商戦』で展開する同社の参入サポート策とは?
アリババグループは2019年6月1日、Eコマース事業の淘宝網(Taobao、タオバオ)と天猫(Tmall)で「618商戦(618 Mid-year Shopping Festival)」を開始した。
同社では「618商戦」を通して約150万件の新商品の投入や各種プロモーション活動を展開し、各ブランドや出店企業の中国新興地域への参入・事業拡大をサポートするとしている。
7割を占める非大都市圏在住者をターゲットに
「618商戦」は6月1日から6月18日まで開催される。本年度は、中国全土の新興都市および農村部での顧客の取り込みを目的として掲げており、淘宝網と天猫では販促に要するリソースを増やし市場を盛り上げることで、急速に成長を見せている新興地域における各ブランドの浸透を推進している。
同商戦では、約200,000以上のブランドと店舗が参加予定だ。「618商戦」のGMV(流通総額)は、商戦開始初日の深夜1:00までのわずか1時間で、昨年の開始から10時間後の金額を突破した。
現在、ブランド製品が非常に高い人気を見せており、 Apple、Xiaomi、Haier、Aux、Midea、L'Oreal、Lancome、Nike、Adidasなどのトップブランドは、最初の1時間でそれぞれ1億元を超える売上を記録した。
中でもAppleは2分45秒で1億元相当の売り上げを記録し、またMideaとNikeでは4分で同額の売り上げを記録している。
中国の市場調査会社Analysysによると、地方小規模都市や農村部の人口は、中国国内の総人口の約70%を占めており、彼らの消費傾向は、価格よりも品質を重要視する主要都市の消費者トレンドに追随しているという。
また、天猫の統計によると、ラグジュアリーパビリオンでの売上は、中国の主要都市および地方都市以外の顧客によるものが50%以上を占めている。
2019年「618商戦」での取り組み
アリババでは「618商戦」に向けた盛り上げを最大化するため、淘宝網と天猫は6月上旬よりアリババのエコシステム、テクノロジーや革新的なマーケティングツールを活用し、急成長する市場での商業機会を創出し、顧客エンゲージメントを強化するための主な取り組みを実施する。
◆約150万の新商品が天猫で初登場
「618商戦」期間中に、約150万の新商品が天猫で初登場し、非常にお得なキャンペーン価格で商品を提供している。新商品の多くは、天猫の提供する消費者インサイトのデータをもとに開発されたものだ。全ての製品は中国全土の消費者が購入可能だが、出店企業は中でも中国の新興地域の消費者ニーズに特に注目している。
◆「Juhuasuan.com」で共同購入キャンペーンを数十回開催
アリババグループの共同購入サービス「ジュファサン(聚劃算、Juhuasuan.com、以下「ジュファサン」)」を通して、出店企業は大幅な値引きを提供し、より多くの新規顧客を取り込めまる。ジュファサンでは、出店企業おすすめの「絶対に買うべきアイテム」を集めた「618商戦・共同購入キャンペーン」を数十回開催する予定です。統計によると、ジュファサンは新規顧客を呼び込むための確実なチャネルで、2018年以降のデータでは、80%の取引が新規顧客によるものであり、そのうちの半数近くが新興都市の消費者だった。
◆「淘宝ライブ配信」で複数のブランドが商品を紹介
新興地域の潜在的消費者にアプローチするには、「淘宝ライブ」が効果的なツールだ。2018年の「淘宝ライブ配信」による売上高は1,000億元(約1.7兆円)を突破した。今年は、アメリカのファッションブランドStadium Goods、韓国のビューティーブランドLaneigeやInnisfree、日本の化粧品ブランド資生堂などが「618商戦」中に「淘宝ライブ配信」を実施する。
◆新興地域で人気の「天天特売」チャネルで10万件の商品を展開
淘宝網スマホアプリ上の「天天特売(Daily Deals、以下「天天特売」)」というチャネルは、メーカーが消費者に提供している「オンライン催事場」であり、中国の地方都市や農村部の消費者に非常に人気がある。このチャネルを通じて、メーカーは消費者の好みや消費トレンドを分析し、リアルタイムで消費者のニーズに沿って、商品や生産プロセスを調整できる。今年の「618商戦」では、メーカーが10万件の商品を出品する予定だ。
「618商戦」での日系企業の出店事例
◆ドクターシーラボ
2017年3月から天猫に出店
2018年の「618商戦」では、売上高5,500万元(約9.35億円)を突破し、2017年同商戦実績の6倍まで成長した
より多くの女性に、有効かつ正しいスキンケアを体験してもらうために、上海にVIP体験センターを開設
今年の「618商戦」ではタレントやKOLを起用し、「淘宝ライブ配信」といった販促チャネルの活用に注力
◆アルビオン
2018年9月からアリババ傘下の越境ECサービス・天猫国際(Tmall Global)に出店し、急速に成長
2018年の「独身の日(11月11日)商戦」に参加し、6時間で1,000万元(約1.7億円)の売上を突破し、主力商品の「薬用スキンコンディショナー エッセンシャル」は10,000本を完売した
2019年5月21日より天猫(Tmall)に出店。中国のZ世代(95年以降に生まれた世代)をターゲットに新たな取り組みを展開
変化する新興エリアの消費マインドを捉える
淘宝網および天猫社長 蒋凡(Jiang Fan)氏から次のようなコメントが出されている。
「中国消費者の可処分所得の増加に加えて、ライフスタイル向上を目指す新興地域の消費者は、より洗練された買い物客になりつつあり、これは販売事業者にとって大きなビジネスチャンスです。新興地域の消費者とってアクセス圏内にある商業施設は比較的少ないため、その地域の人々のニーズに向き合い、大都市と同じように良質の製品を、私たちのプラットフォーム上の革新的かつ楽しい企画を通して提供したいと思います」
さらにアリババグループは、小売事業における6.54億人の年間アクティブコンシューマー、先進的なテクノロジー、マーケットへの深い洞察など、エコシステムとしての強みを活かし、出店企業のさらなる成長を図っていくとしている。
また中国の新興地域の消費者が高品質な商品を入手しやすいように、プラットフォームを進化させていくという。アリババグループの2019年3月31日までの最新決算データによると、1億人超の新規アクティブユーザーのうち、70%以上が新興地域からであり、ここからも新興地域の成長ポテンシャルを示していると言えるだろう。
このようにアリババの新たなターゲットは新興エリアの消費者だ。そのマインドを捉えるための数々の施策が展開される2019年の「618商戦」。出店EC事業者にとっても、彼らの心をつかむための大きなチャンスとなりそうだ。