マイナポイント開始で中小事業者のキャッシュレス決済導入はどうなる?[デザインワン・ジャパン調査]
株式会社デザインワン・ジャパン(代表取締役社長:高畠靖雄、東証一部 6048)が運営する中小事業者の調査・研究開発部門「エキテン総研」は、全国の店舗関係者に対して「中小事業者におけるキャッシュレス決済導入実態調査・第三弾」を実施した。
同調査は2019年7月、12月におこなったキャッシュレス決済導入実態調査の追加調査で、9月に開始されるマイナポイント事業を前に、中小事業者においてキャッシュレス決済の運用実態を調査したものだ。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。
調査概要
[調査名]
中小事業者におけるキャッシュレス決済導入の実態調査・第三弾
[対象者]
店舗の口コミ・ランキングサイト「エキテン」に掲載中の全国の店舗経営者および集客・販促担当者
[回答数]
3,175
[調査時期]
2020年8月7日~2020年8月11日
[調査方法]
インターネット調査
[調査機関]
エキテン総研(株式会社デザインワン・ジャパン)
キャッシュレス決済を導入している店舗
◆キャッシュレス決済を導入して、良かった点/悪かった点
キャッシュレス決済を導入して良かった点として、「新型コロナウイルスの感染防止策となった」と半数近くの店舗が回答した。新型コロナウイルスは付着したものに触れても感染するといわれているため、現金のやり取りではなく非接触型決済の利用が感染防止策として多くの店舗から一定の評価を得ていることが分かった。
政府が発表した「新しい生活様式」の中にも、「キャッシュレス決済を利用」という項目が記載されています。withコロナのニューノーマルとして、キャッシュレス決済の定着がうかがえる。
一方、キャッシュレス決済を導入して悪かった点として、「売上が現金化するまでのタイムラグが発生した」と回答した店舗が半数以上となった。QRコード決済は、売上金の入金サイクルが最短で翌日のものもあるが、決済ブランドや売上確定処理のタイミングによっては翌月末、もしくは翌々月末に入金するものもあるため、このタイムラグにデメリットを感じている店舗が多くいることがわかる。
◆利用客のキャッシュレス決済利用を歓迎するか
中小事業者においては、6割以上の店舗がキャッシュレス決済を導入しているにも関わらず、そのうち利用を歓迎しているのは半数に満たない、ということがわかった。利用客のキャッシュレス決済利用を歓迎する、と回答した店舗は、導入して感じているメリットと同じように、「新型コロナウイルスの感染防止策になるから」と回答した店舗が多数となった。
前回の調査では、「キャッシュレス事業者によるキャンペーンでの集客増」・「キャッシュレス・ポイント還元事業による利用客増」などを期待してキャッシュレス決済を導入している店舗が半数近くにのぼったが、今回の調査では、マイナポイント事業が始まることを理由にキャッシュレス決済利用を歓迎する、と回答した店舗は1割程度となった。
キャッシュレス決済を導入しているにも関わらず、利用客のキャッシュレス決済利用を歓迎しない、もしくはどちらともいえないと回答した店舗は、8割以上の店舗が「手数料などで利益が減ってしまうから」と回答した。キャッシュレス決済導入拡大のために各社条件付きで手数料無料キャンペーンなどを実施して導入店舗を増やしたが、すでに手数料がかかるようになってきている決済ブランドもある。利用客の利便性が向上したり、コロナ対策となることは良いことだが、売上規模の小さな中小事業者においては、売上金に対し手数料がかかってくるのは大きなデメリットになるようだ。
キャッシュレス決済を導入していない店舗
◆今後、キャッシュレス決済を導入したいと考えているか
キャッシュレス決済を導入していない店舗に対して今後の導入意向を聞いたところ、「導入する気はない」が55.9%という結果に。一方、40%は導入について一定程度、前向きな意向を示している。少数だが、「一度は導入したが、やめた」と回答した店舗が4.2%となり、前回の調査から1ポイント増えた。
◆キャッシュレス決済導入の障壁
キャッシュレス決済導入の障壁としては、「加盟店手数料」「導入コスト」「運用コスト(端末)」が多数を占め、前回調査と同じ結果となった。
◆キャッシュレス決済をやめた理由
キャッシュレス決済を一度は導入し、やめた、と回答した店舗に理由を聞くと、「加盟店手数料の負担が大きかったから」「思ったよりも集客につながらなかったから」と回答した店舗が多数となった。加盟店手数料の負担については、前述の設問で多くの店舗が感じているデメリットと同じだった。キャッシュレス決済を導入しても集客につながらなかった理由としては、オリンピックの延期や訪日外国人の減少なども少なからず影響している可能性もある。
まとめ
調査結果にあるように、全国の中小事業者におけるクレジットカード決済、QRコード決済、電子マネー決済などのキャッシュレス決済の導入実態は、「導入している」が62.2%、「導入していない」が37.8%で前回の2019年12月の調査と比べると、ほぼ横ばいという結果になった。
キャッシュレス決済を導入している店舗へメリットとデメリットを聞くと、1,310店舗中520店舗がメリットとして「新型コロナウイルスの感染対策となった」と回答。一方、1,449店舗中819店舗がデメリットとして「売上が現金化するまでのタイムラグが生じた」と回答した。
9月よりマイナポイント事業が開始されたが、「お客様のキャッシュレス決済利用を歓迎しますか」という問いに対し、利用を歓迎する、と回答した店舗は4割にとどまった。
コロナ禍で厳しい中小事業者の経営環境下では、決済手数料というコストがかかったり、現金化にタイムラグが生じるキャッシュレス決済は、あまり利用を歓迎できないという複雑な状況が見て取れる結果となったようだ。
すでに各種の報道がなされているように、政府の目論見とは異なり、マイナポイントの利用者が想定を大きく下回る状況もある。今後、マイナポイントをキャッシュレス決済と連携させる試みは、なんらかの新たな仕掛けが必要となるかもしれない。