消費税『総額表示』義務化で別れる企業の対応・業績を左右も 三井住友DSアセットマネジメントがレポートを公表

ECのミカタ編集部

三井住友DSアセットマネジメント株式会社(代表取締役社長 兼 CEO:猿田隆)は、経済イベントや市場動向に関するマーケットレポートを日々発行している。

今回、同社はマーケットレポート「注目される消費関連企業の『総額表示』への対応」を2021年4月13日に発行した。ここではその一部の概要についてポイントを絞って見ていく。

総額表示が義務化に

商品・サービスの価格表示が4月から、原則として消費税込みの総額に統一された。これまで税抜きの本体価格で表示してきた企業が多く、消費者が、値上がりしたような感覚になり、心理的に買い控えを招かないか懸念されている。

『総額表示』に対して消費関連企業の対応は実質的に値下げ、値上げ、価格据え置きなど分かれており、価格設定の巧拙は企業の業績に大きく影響するため、その対応が注目されている。

ファーストリテイリング、モスなどで分かれる対応

ファーストリテイリング、モスなどで分かれる対応

4月1日から商品・サービスの価格表示で税抜き価格、消費税額併記は可能だが、消費税を含めた支払額である『総額表示』が義務化された。『総額表示』は顧客がわかりやすい反面、税抜きの本体価格に慣れた消費者が、値上がりしたように感じて、買い控えを招かないか懸念されている。

この義務化に対して、値下げ、値上げ、据え置きなど外食や小売りなどの企業の対応は分かれており、価格設定は今後の業績に大きく影響を与えるため、『総額表示』での企業の価格戦略が注目されている。

ファーストリテイリングは3月4日に「ユニクロ」、「ジーユー」ブランドについて、3月12日から、すべての商品価格を『総額表示』に変更し、これまでの商品本体価格を、そのまま消費税込みの価格にすることを発表した。約9%の値下げをしたことになる。売り上げが他社比好調の中でのこの決定には驚きの声が上がっており、ここでライバル企業を引き離すためとみられている。

一方、外食産業は税引き価格しか提示していなかった企業が多く、新型コロナで打撃を受け値下げも難しく対応に苦慮している。価格表示を工夫して据え置いたり、モスフードサービスやトリドールホールディングスが運営する「丸亀製麺」などは一部商品を値上げして、足元の原材料価格のコスト上昇分などを転嫁する動きもある。

価格設定の巧拙が今後の業績を左右

同社は、総額表示の今後の展開として次のように分析している。

“『総額表示』中心となった場合、価格設定で企業の戦略性が問われます。『総額表示』での価格設定は、価格を下げても顧客が集まれば利益が増える可能性がありますし、価格を上げても顧客離れが進めば利益が減少する場合もあるなど単純ではなく、価格設定の巧拙は今後の業績を大きく左右するとみられます。消費関連企業の『総額表示』義務化への対応が注目されます”

1989年、当時の竹下政権下で日本でも導入された消費税。税率も当初の3%から徐々に上がってきたが、その税率の表示を「税込」にするか「税抜」にするかは、事業体ごとにゆだねられる状態が続いてきた。それがついに総額表示へと法的にも統一されることとなった(消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法)。

消費者からすれば実際に支払われるべき金額が一目瞭然となり、わかりやすくなるが、税抜表示の商品を税込表示にしただけでも、一見して値上げをしたような印象を持つ人も少なくないだろう。そうした消費者心理を的確につかみつつ、EC事業者においても最適な価格設定をしていくことが、売上とビジネスの向上に向けて求められる局面とも言えそうだ、

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