【アドビ調査】オンラインインフレ率が過去最高を記録

ECのミカタ編集部

Adobe(Nasdaq: ADBE)(本社:米国カリフォルニア州サンノゼ、以下アドビ)は、米国における最新のオンラインインフレデータ「Adobe Digital Price Index(DPI)」を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

最高の前年比上昇率

Adobeは、米国における最新(2021年11月時点)のオンラインインフレデータ「Adobe Digital Price Index(DPI)」を公表した。これによると、オンライン価格は、前年同月比で3.5%の上昇で過去最高を記録したが、ホリデーシーズン中に実施された割引により前月比では2%の下落となった。

この結果は、アドビが2014年にデジタルエコノミーの追跡調査を開始して以来、最高の前年比上昇率であり、18か月連続で前年比オンライン価格が上昇したことになる。中でもアパレルは、前年同月比で17.3%の上昇、前月比ではわずか0.4%の下落となり、過去最高のインフレ率を記録した。なお、米国では現在、4ドルのうち1ドルがオンラインで消費されており、デジタルエコノミーは経済全体の重要な構成要素となっている。

DPIは、米国の消費者がオンラインで商品を購入する際の価格を包括的に示した指標だ。米国内の1億点以上の製品を対象とし、米国労働統計局が発行する消費者物価指数をモデルとしている。この指標は毎月更新され、エレクトロニクス、アパレル、家電製品、書籍、玩具、コンピュータ、食料品、家具・寝具、工具・ホームセンター用品、家庭用品・園芸用品、ペット用品、宝飾品、医療機器・用品、スポーツ用品、パーソナルケア用品、花・関連ギフト、非処方箋薬、事務用品の18カテゴリーを対象としている。

注目の商品カテゴリー

注目の商品カテゴリー

2021年11月、Adobe Digital Price Indexが追跡する18の商品カテゴリーのうち、11のカテゴリーで前年同月比の価格上昇が見られた。アパレルは他のカテゴリーと比較して価格が急上昇した一方、エレクトロニクス、パーソナルケア用品、オフィス用品、ジュエリー、書籍、玩具、コンピュータの7カテゴリーでは値下がりが見られた。前月比では、食料品、ペット用品、工具・ホームセンター用品、医療機器・用品の4つを除く全てのカテゴリーで、ホリデーシーズン中の割引により価格が下落した。

◆アパレル

価格は前年同期比17.3%増、前月比0.4%減だった。2014年以降、アパレルのオンライン価格に前年同期比9%を超える上昇が見られたのは3回だけだった(2016年8月、2020年1月、2020年2月)。現在、このカテゴリーでは、8か月連続で前年同月比9%以上の価格上昇が記録されている。

◆食料品

価格は前年同期比3.9%増、前月比0.6%増だった。オンライン価格は前年比ベースで22か月にわたって上昇を続け、消費者物価指数(実店舗での購入の際に消費者が支払う価格)と歩調を合わせるように推移している。

◆エレクトロニクス

価格は前年同期比0.4%減、前月比4.0%減だった。ゲーム機、モバイル機器、テレビ、ウェアラブル製品などを含むこのカテゴリーでは、これまで(2015年~2019年)、価格は平均して前年比9.06%減となっていた。2021年のサイバーマンデーでは、過去数年と比較してエレクトロニクスへの支出が増加しており、値引率も12%台と、過去に記録していた27%台と比較すると少ないものだった。

◆家電

価格は前年同期比4%増、前月比2.7%減だった。このカテゴリーでは、前年比ベースで19か月連続してオンラインでのインフレが続いている。2019年12月に最安値(前年同期比4.6%減)を記録した後、2020年5月には上昇に転じ(前年同期比0.2%増)、2020年12月にはピークを迎えた(前年同期比7.1%増)。

◆玩具

価格は前年同期比2.9%減、前月比3.6%減だった。過去のデータを見ても玩具は、書籍やコンピュータと同様に、強いデフレが継続している数少ないカテゴリーの1つだ。2021年のサイバーマンデーでは、値引率は22%台と、19%台だった昨シーズンよりも値下がり幅が大きかった唯一のカテゴリーだった。

サプライチェーンの混乱とニーズの高まり

元国際通貨基金シニアエコノミストである経済学者、マーシャル ラインズドルフ(Marshall Reinsdorf)氏は、次のように述べている。

「国勢調査局のデータによると、食料品やホームセンター用品などの支出がオンラインに移行したことで、非燃料小売支出に占める電子商取引の割合が過去10年間で3倍になっています。インフレを理解する上で、デジタルエコノミーにおける価格測定が重要な役割を担うようになってきたのです。Adobe Digital Price Indexは、消費者物価指数などの指標を補完して、人々の生計費に関する重要な情報をタイムリーに示すものといえるでしょう」

アドビのグロースマーケティング&インサイト担当バイス プレジデントのパトリック ブラウン(Patrick Brown)氏は、次のように述べている。

「サプライチェーンの混乱が続く中でも消費需要は堅実で、Eコマースにおける記録的な高インフレを支える要因となっています。商品カテゴリー別に見てみると、アパレルではオンラインの『在庫切れ』メッセージが突出して多く発生しています。一方で、消費者物価指数によればオフラインの価格も急上昇しており、玩具、コンピュータ、スポーツ用品などのカテゴリーでは、オンラインで買い物をする方が安いと言えます」

このように、オンラインでの価格の上昇が顕著である点が示されたが、これはオフラインを含めた世界的な消費者物価指数の高まりの結果とも言える。先進各国の中央銀行が長年、大規模な金融緩和によって通貨供給量が増大している中で、新型コロナウイルスによる感染拡大が発生し、ワクチン接種の進行にあわせて徐々にパンデミックによるパニックは収まりつつある。

そうした流れの上で、冷え切った状況から徐々に消費行動の熱度が復調しているが、これもコロナ禍の影響で工場の稼働がままならず、また港湾設備での人員不足や世界的な貨物用コンテナ不足など、サプライチェーンがひっ迫し、物価の高まりとなって表れているようだ。

一方で識者も述べているように、オフラインよりもオンラインでの価格の方が割安感のある状況であり、引き続きECへの需要の流れ込みは進行しそうだ。ただサプライチェーンの混乱が長引くようであれば、消費者のマインドにも悪影響が出る可能性もあり、各国が強調しての新型コロナウイルスによるに対する公衆衛生上の施策が引き続き望まれる状況とも言えるだろう。また同時に特に先進各国の中央銀行の金融政策や政府による財政政策にも視線が集まる状況が続きそうだ。

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