2022年後半の日本経済は緩やかな回復傾向か?下ぶれリスクもあり【帝国データバンク調査】

ECのミカタ編集部

株式会社帝国データバンクは、全国2万5,141社を対象に2022年5月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

2022年5月は持ち直し傾向

2022年5月は持ち直し傾向

2022年5月の景気DIは前月比0.4ポイント増の41.2となり、3カ月連続で改善した。5月の国内景気は、まん延防止等重点措置の解除や人出の増加などがプラス材料となった。

「大型連休の移動も多く活況を呈した」(そば・うどん店)など来客数の増加がみられるなど、厳しいながらも旅行業や旅客運送などを含む個人消費関連の景況感が押し上げられた。

一方で、ロシア・ウクライナ情勢など円安や原材料高による輸入物価の歴史的上昇、中国でのロックダウンや部品調達の困難化、半導体不足などで工場の稼働が停止するなど、マイナス要因にも多く直面した。

また、仕入単価DIと販売単価DIは過去最高を更新し、取引価格や販売価格への転嫁が一部でみられた。国内景気は、海外情勢の影響を受けた工場の稼働停止などもみられたが、個人消費関連の持ち直しが続き、3カ月連続で上向いた。

今後、下振れリスクを抱えつつ緩やかな上向き

今後、下振れリスクを抱えつつ緩やかな上向き

今後1年間程度の国内景気は、ロシア・ウクライナ情勢の行方や円安の進行、原油・原材料価格の高止まりなど、不透明な外部環境の動向が懸念材料となってきそうだ。特に、輸入物価の上昇は、企業の収益力や家計の実質購買力の低下をもたらす要因となりうるとしている。

他方、新型コロナウイルスの感染状況に落ち着きがみられるなかで、外出機会の増大にともなう対面型サービスの需要拡大のほか、インバウンド消費需要も期待される。また、半導体需要の増加や挽回生産、値上げへの意識の変化などはプラス材料となりそうだ。今後は、下振れリスクを多く抱えながらも、緩やかな上向き傾向で推移すると見込んでいる。

業界別:9業界が改善も仕入単価上昇は継続

大型連休もあり『小売』『サービス』など9業界が改善した一方、中国ロックダウンの影響で自動車工場の減産、稼働停止が響いた『製造』は悪化した。また、円安や原材料価格の高騰が続くなか、仕入単価DIは35業種、販売単価DIは20業種で過去最高となった。

『小売』(36.4):前月比2.4ポイント増。3カ月連続で改善。「新型コロナウイルス下ではあるが、客数が戻りつつある。大型連休中も、そこそこの売り上げがあった」(菓子小売)など、「飲食料品小売」(同4.1ポイント増)が改善。「燃料油価格激変緩和補助金で思ったより粗利が取れている」(ガソリンスタンド)など、「専門商品小売」(同1.8ポイント増)も政府による物価高対策が奏功した。他方、「新型コロナウイルス下の巣ごもり需要が終わり、その反動がある」(家具小売)など、「家具類小売」(同4.9ポイント減)は悪化した。

『運輸・倉庫』(37.2):同0.6ポイント増。2カ月連続で改善。「貨物輸送トラックがここ数週間で増加してきている」(普通倉庫)など、普通倉庫が大きく改善。また、「春の学校の旅行シーズンになり、毎日バスが動いている。この傾向は3年ぶりで、やっと戻った感覚である」(一般貸切旅客自動車運送)といった声も聞かれ、バス・タクシーなどの旅客運送、旅行代理店は依然として厳しい水準も上向いた。他方、「輸入物価の上昇で大幅にコストが上昇も、運賃料金の値上げは不十分で採算割れは解消できない」(一般貨物自動車運送)など、燃料価格の高止まりなどによる輸送コストの上昇はマイナス要因となった。

『サービス』(44.8):同0.3ポイント増。3カ月連続で改善。「大型連休の移動も多く活況を呈した」(そば・うどん店)といった声も聞かれ、「飲食店」(同1.5ポイント増)や「旅館・ホテル」(同4.7ポイント増)、「娯楽サービス」(同3.3ポイント増)が上向いた。他方、「まだまだ新型コロナウイルスの影響を受けている。クライアントの会社になかなか簡単に出入りできず、イベント事業も本格的にスタートできない」(広告代理)など、「広告関連」(同2.1ポイント減)は3カ月ぶりに悪化。また、製造業の稼働停止や減産を受け、廃棄物処分業が3カ月ぶりに悪化した。

『製造』(41.0):同0.2ポイント減。2カ月ぶりに悪化。上海でのロックダウン、長期化する半導体不足などにより、国内自動車メーカーの工場で稼働停止が相次ぐなか、「輸送用機械・器具製造」(同0.5ポイント減)、「化学品製造」(同0.6ポイント減)など、自動車に関連する業種が悪化。企業からは「ウクライナ情勢などの外的要因により諸物価、特に電気料金が高騰し、経営を圧迫し始めている。上海などからの部品入荷が悪く、自動車メーカーの稼働も大きく停止している」(工業用プラスチック製品製造)といった声が聞かれ、仕入単価DIは『製造』12業種中10業種、販売単価DIも8業種で過去最高を記録した。

地域別:10地域中9地域が改善も海外情勢が影響

地域別:10地域中9地域が改善も海外情勢が影響

『東北』『北陸』など10地域中9地域が改善、『東海』が悪化した。まん延防止等重点措置の解除や大型連休で主要観光地の人出が増加し、関連する小売業や飲食店などにおける景況感のプラス材料となった。一方、部品調達難は『製造』を中心に下押しした。

『東北』(39.1):前月比1.5ポイント増。2カ月連続で改善。域内6県すべてが改善した。「スマホ向け電子部品の仕事が減らない」(鉄鋼・非鉄・鉱業)などの声もあるように、電気機械などを中心に『製造』が好調で全体を押し上げた。

『北陸』(40.6):同0.7ポイント増。2カ月連続で改善。「富山」が5カ月ぶりに改善したほか、「石川」「福井」も2カ月連続で上向いた。主要観光地における大型連休中の人出増加がプラス材料となった。特に『小売』は来店客数も増え大幅に改善した。

『東海』(40.1):同0.1ポイント減。3カ月ぶりに悪化。「岐阜」「三重」が改善した一方、「愛知」「静岡」が悪化した。中国ロックダウンなどで部品調達に支障が表れた化学品や自動車部品など『製造』が全体を下押しした。また大規模漏水の影響も一部でみられた。

サマリー

調査結果にあるように、2022年5月の景気DIは前月比0.4ポイント増の41.2となり、3カ月連続で改善した。国内景気は、海外情勢の影響を受けた工場の稼働停止などもみられたが、個人消費関連の持ち直しが続き、3カ月連続で上向いた。今後は、下振れリスクを多く抱えながらも、緩やかな上向き傾向で推移すると見込まれるとしている。

大型連休もあり『小売』『サービス』など9業界が改善した一方、中国ロックダウンの影響で自動車工場の減産、稼働停止が響いた『製造』は悪化した。また、円安や原材料価格の高騰が続くなか、仕入単価DIは35業種、販売単価DIは20業種で過去最高となった。

10地域中9地域が改善、『東海』が悪化した。大型連休で主要観光地の人出が増加し、関連する小売業や飲食店などにおける景況感のプラス材料となった。一方、部品調達難は『製造』を中心に下押しした。規模別では「大企業」「中小企業」「小規模企業」の景況感が2カ月ぶりにそろって改善した。

日銀による大規模金融緩和の継続がある一方、先進主要国では相次いで金融引き締めの動きが加速し、通貨の需給ギャップによって結果として円安が進行している。またロシアによるウクライナ侵攻や中国での新型コロナウイルスによる感染再拡大とそれに対するロックダウンなど、世界情勢は現在、極めて複雑な要素が絡み合っている。一方で、今回の同社の調査では、そうした下振れ要因が少なからずありつつも、日本経済は、ゆるやかな回復傾向にあるとし、今後のさらなる個人消費の復活にも期待がかかりそうだ。

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