越境ECプラットフォームはどう選ぶ?18種類のモール・システムを徹底比較
少子高齢化によって国内マーケットが縮小しつつある現代、より大きな売上をあげるために海外展開する企業が増えています。なかでも現地に事業所や店舗を構えることなく、海外のユーザーに対して商品を販売できる越境ECが注目されています。しかし、越境ECを始めるには販売するプラットフォームの選定が課題です。海外のユーザーがよく利用するモールは、日本国内ではあまりなじみがなく、どう選べばいいかがわからない方も多いでしょう。この記事では、越境ECの構築におすすめのECシステムや海外モール、越境ECモールを選ぶ際のポイントについて解説します。
越境ECとは
越境ECとは、国境を越えて商品を販売するECサイトの総称です。つまり、日本から海外、海外から日本といったように、国外のマーケットを対象として展開するECサイトを指しています。
越境EC構築におすすめのプラットフォーム
自社ECサイトを構築して海外展開する場合、越境ECの構築に適したECシステムを利用する必要があります。越境ECは多言語・多通貨や海外配送への対応をはじめ、独自の要件が多く、一般的なECシステムでは構築できません。
以下では、越境ECの構築におすすめのECシステムについて紹介します。
Shopify
Shopifyは、カナダで開発されたECシステムです。専門知識がなくても簡単にECサイトを構築できる「カートASP」に分類され、ECシステムとしては世界一のシェアを誇ります。海外でも広く利用されているため、海外ユーザーにウケるテンプレートも充実しており、越境ECの構築に適しています。
また、近年では大手配送業者との連携に加えて、独自の物流網の構築にも力を入れており、海外配送に関する課題も解消可能です。ベーシックプランは月額29ドルから利用でき、スモールスタートを希望する事業者にもおすすめのECシステムです。
Magento
Magentoは、業界トップのオープンソースECシステムです。システム自体は無料で利用できますが、PHPで設計しなければならず、社内に専門知識をもった担当者がいない場合は制作会社に外注するしかありません。オープンソースを用いたECサイト構築には工数がかかるため、構築時の外注費用は数百万円程度が相場です。
一方、カスタマイズやデザインの自由度は高く、本格的な自社ECサイトを構築したい事業者におすすめです。
LaunchCart
LaunchCartは、アジア向けの越境ECに特化したクラウドECです。地域を限定しているメリットとして、販売先に合わせてデザイン・決済方法・サーバーリージョンなどを選択できる点があります。越境ECにおいては、現地の商習慣に合わせることが重要なポイントでもあり、海外のユーザーに違和感を与えてしまうサイトを成長させるのは難しいでしょう。
また、総合通販のほかに単品通販にも対応できる点は、LaunchCartならではの特徴です。初期費用55,000円、月額費用32,780円から利用できるため、コストを抑えつつレベルの高いECサイトを構築できます。
Wix
Wixは、イスラエルで開発されたカートASPです。サイト制作は無料でできますが、カート機能の利用は有料となっているため、越境ECを構築する場合は実質有料です。
カートASPの弱点としてデザインが制限される点がありますが、500種類以上のテンプレートが用意されているうえ、細かなパーツも豊富に用意されており、独自のデザインを実現しやすいといえるでしょう。
越境ECにおすすめの海外モール
自社ECサイトを構築する場合、カートASPやクラウドECなどを利用して制作する必要がありますが、ECモールを利用する手もあります。Amazonのように世界的に展開しているECモールもありますが、国によって主要ECモールは異なるため、ターゲットに応じてECモールを選定するのがポイントです。
以下では、越境ECにおすすめの海外モールについて紹介します。
中国の越境ECモール
中国はEC大国として知られており、日本企業による越境EC販売額でもトップとなっています。越境ECの展開を考える際、はじめに検討すべきターゲットの一つです。また、中国は国内で独自のマーケットを発達させており、天猫や京東などのECモールを利用するユーザーが多いのも特徴です。
天猫国際(Tmall Global)
天猫国際は、中国最大のECモールである天猫が運営する海外事業者向けモールです。中国国内では最大級のマーケットである一方、出店審査が厳しいことでも知られており、出店にあたっては入念な準備が必要です。
考拉海購(Kaola)
考拉海購は、2015年1月のサービス開始以来、急激に成長しているECモールです。生活雑貨やコスメをはじめ、ライフスタイル関連の商材が多く、ユーザー全体のうち8割程度が女性であるともいわれています。2017年には日本法人を立ち上げており、日本企業の出店に対しても前向きに取り組んでいます。
京東国際(JD worldwide)
京東国際は、天猫に次いで中国2位のマーケットとなっているECモールです。もともと家電を中心とするモールとして事業を開始しており、総合通販モールとなった現在でも家電関連の商材が多く出品されています。また、初期費用や利用料などがほかのモールに比べてリーズナブルに設定されているため、コストを抑えやすいのも魅力的なポイントです。
アメリカの越境ECモール
アメリカは、EC事業をいちはやく発展させた国として知られています。日本企業の越境EC市場においても、中国に次いで取引の多い国となっており、主要なマーケットといえるでしょう。
eBay
eBayは、1995年にサービスを開始した老舗ECモールです。アメリカだけではなくヨーロッパ諸国やカナダ・オーストラリアにおいても広く利用されており、幅広いユーザーをターゲットとする事業者に適しています。
もともとCtoCのオークション型プラットフォームとして立ち上げられましたが、現在ではBtoCのマーケットプレイスへの出品がメインとなっています。マーケットプレイス・オークションの2つの販売方式を選択できるため、通常商品はマーケットプレイス形式で販売しつつ、数量限定品や中古品などはオークション形式で販売するといったように使い分けることも可能です。
Amazon
Amazonは、日本を含めた19の国と地域で展開されるECモールです。日本でもなじみの深いECモールとして利用されているうえ、基本的な出品方法は日本版のAmazonとほとんど変わらないことから、出品のハードルが低い点が魅力です。
ただし、販売手数料が商材によって異なるため、事前に確認しておく必要があります。
Walmart
Walmartは、アメリカではAmazonに次いで人気を獲得しているECモールです。Shopifyと連携しているため、Shopifyで自社ECサイトを構築している企業にもおすすめのプラットフォームです。現状、日本企業の出店数はそれほど多くないため、商材のジャンルによっては先駆者としてアドバンテージをとれる可能性も高いでしょう。
アジア圏の越境ECモール
アジア圏は物理的な距離が近いことに加えて、日本と文化が似ている国が多く、越境ECのターゲットとして展開するのに適しています。近年では経済的な成長も進んでおり、効果価格帯の商材も販売しやすい環境となっています。
【シンガポール】Shopee
シンガポールのECモールであるShopeeは、東南アジアでもっとも勢いのあるECモールです。最大の特徴は出品者と購入者が直接やりとりできる点で、プラットフォーマーの担当者が対応するよりも円滑なコミュニケーションが可能です。販売手数料・リスティング手数料が無料となっており、コストを抑えて出品できるモールの一つといえるでしょう。
【台湾】PChome
台湾のECモールであるPChomeは、台湾国内でトップシェアのECモールです。店舗数は12万以上、取扱商品数は4億点以上にものぼっており、あらゆる商品が販売されています。日本企業の出品商品のなかでは、食品関連が人気となっている傾向があります。
【タイ】Lazada Thailand
タイのECモールであるLazada Thailandは、天猫やタオバオで知られるアリババグループが運営するECモールです。タイ・マレーシア・フィリピン・ベトナム・シンガポール・インドネシアの6か国でサービスを提供しています。1日あたり500万以上のアクティブユーザーが利用しており、毎年20%ほどのペースで安定成長を続けています。
【韓国】G-Market
韓国のECモールであるG-Marketは、日本語・英語・中国語に対応する越境ECモールです。楽天と提携して日本への展開にも力を入れており、ユーザーは楽天ポイントを貯められる仕組みとなっています。
ヨーロッパ圏の越境ECモール
ヨーロッパ圏は、アジア圏に比べて展開のハードルは高いものの、その分展開している日本企業の数も少なく、比較的ブルーオーシャンであるといえます。一方、文化や商習慣が大きく異なることから、現地ユーザーのニーズをしっかりとリサーチしておくことが重要です。
【イギリス】John Lewis
イギリスのECモールであるJohn Lewisは、家電やインテリアをはじめ、幅広いジャンルを展開するECモールです。iOSアプリでは、AR機能を用いて実際の商品を室内に置いた様子を確認でき、先端技術にも積極的に投資しています。
【ドイツ】Otto
ドイツのECモールであるOttoは、アパレルや生活雑貨などのライフスタイル用品を中心に展開するECモールです。ドイツ国内での知名度はもちろん、近隣諸国でも多くのユーザーから利用されており、欧州圏のマーケット参入を狙っている事業者におすすめです。ドイツではじめてリアルタイム送金を実現した企業としても知られており、フィンテック領域にも注力しています。
【ドイツ】Zaland
ドイツのECモールであるZalandは、ドイツ国内で人気のファッションECモールです。日本の大手ファッションECであるZOZOTOWNと比べても約10倍の規模となっており、アパレル分野では圧倒的な知名度を誇っています。
越境ECプラットフォームを選ぶ際のポイント
前述のとおり、越境EC事業を開始するには、ECシステムやECモールなどのプラットフォームを選定する必要があります。
以下では、越境ECプラットフォームを選ぶ際のポイントについて解説します。
商材やターゲットとのマッチング
まず、前提として商材やターゲットとのマッチングは重視すべきです。たとえば、食品を販売するのにアパレルに特化しているモールを選んでしまうと、売上にはつながりにくくなります。同様に、モールによって男女比や年齢層なども変わるため、ターゲットにアプローチしやすいプラットフォームを選ぶことが重要です。
サポート体制の充実度
越境ECの場合、日本企業が運営しているプラットフォームはほとんどなく、海外発のプラットフォームを利用するケースが一般的です。しかし、はじめて利用する際にはサポートが必要となるケースも多いはずです。そのため、サポート体制の充実しているプラットフォームを選ぶことをおすすめします。たとえば東南アジアに展開する場合、日本人スタッフのサポートを受けられるShopeeであればEC構築に慣れていない事業者でも安心です。
自社EC・モール型ECの併用
EC事業を開始するには、自社ECサイト・ECモールの2種類があります。しかし、それぞれ性質が大きく異なります。本格的に運用する場合、自社ECサイトを選ぶ企業が多いですが、はじめから自社ECに絞るのはあまりおすすめできません。海外における知名度がないと自社ECのみで売上を伸ばすのは難しいため、悩んでいる方はECモールと併用するとよいでしょう。
越境ECの種類は?
主な販売方法としては、自社サイトとECモールの2種類となっていますが、それ以外にも越境ECを構築する方法はあります。海外の保税区を活用する方法、日本貿易振興機構が支援する買取型、代行販売などを検討してみるのもよいでしょう。
越境ECのやり方は?
越境ECを始めるには、販路の確保・仕入れ・決済や配送の整備などが必須です。国内取引の場合とは異なる法律や制度・関税などがあるため、注意しましょう。
越境ECで何を売る?
アメリカの大手ECモールであるeBayは、越境ECで売れ筋となっている商品について、以下のようにまとめています。
まとめ
越境ECの一般化にともなって、越境ECを構築できるシステム、越境販売をメインとするECモールが増えています。選択肢の増加はメリットである一方、悩ませてしまう原因にもなりかねません。プラットフォームを選ぶ際は、商材やターゲットとの相性、運用体制に応じて選択するのがポイントです。自社に応じたプラットフォームを選択できるとよいでしょう。