動画コマースとは?国内外の市場規模やおすすめプラットフォーム、導入事例を紹介

ECのミカタ編集部

動画コマースとは?国内外の市場規模やおすすめプラットフォーム、導入事例を紹介

動画コマースは、動画を視聴したまま直接商品を購入ができる、新たな通販のシステムです。動画を用いることによって、写真や文章のみの場合よりも、具体的に消費者へ商品の魅力をアピールできます。本記事では動画コマースの市場規模、メリット・デメリットやおすすめのプラットフォームなどについて紹介します。

動画コマースとは

動画コマースとは、商品の紹介動画を視聴して、ECサイト上で購入できる通販システムです。従来、ECサイトでは、写真と文章のみで商品説明を行うのが一般的でしたが、アイテムの使い方や着こなしを伝えるのが難しいという問題がありました。

しかし、動画コマースであれば消費者により詳細な情報を伝えられるため、具体的な利用シーンをイメージさせつつ、商品の魅力をアピールできます。

ライブコマースとの違い


ライブコマースとは、生放送で視聴者とコミュニケーションをとりながら商品を紹介していく手法です。一方、動画コマースはかならずしもリアルタイムの配信のみを対象とするものではありません。収録動画を配信してコンバージョンへの導線とする販売方法も動画コマースにあたります。そのため、ライブコマースは動画コマースのなかの一つのジャンルと考えるとよいでしょう。

動画コマースの市場規模

動画コマースの市場をみたとき、とくに多く利用されているのはファッション・アパレル業界です。服を購入する際には、質感や着心地のよさなどがポイントになりますが、これらのポイントは画像よりも動画の方が伝わりやすい点が要因として考えられます。

また、食品・化粧品業界においても、動画コマースはさまざまなシーンで導入されています。たとえば、製造過程を動画で紹介して食品の安全性を訴求したり、レビュー動画によって化粧品の使用感を伝えたりするなどです。

日本国内の市場規模と成長予測


日本では、動画広告市場が急成長しています。サイバーエージェントが2018年8月~10月に行った調査では、2018年の国内動画広告市場は約1,843億円と発表されています。

前年比にしてプラス134%の成長を示しており、成長率の大きさは圧倒的です。その後の市場規模の推移は、2019年には2,312億円、2020年には2,900億円、2024年には4,957億円に達する見込みとなっています。

今後も、動画専門メディアの普及などを背景にして、動画広告市場は急速成長を続けていくとみられています。

世界トップクラスの中国市場


動画コマースの市場を世界全体でみると、もっとも大きいマーケットは中国です。中国のEC業界では、静止画によるコマースはすでに時代遅れとなっており、近年では動画コマースが急成長しています。

中国のライブコマース市場は、2019年時点で4,338億元(約6兆9,408億円)に達しています。中国商務部によると、2020年上半期における中国ライブコマース市場の実績は、以下のとおりです。

●イベント回数:1,000万回
●ライブコマースで活躍するキャスター数:40万人
●視聴回数:500億回
●販売商品数:2,000万点

また、一時はライブ動画が流行していましたが、2022年現在ではショートムービーの動画コマースが増えています。今後も動画コマース先進国として、市場の動向を注視していく必要があるでしょう。

動画コマースのメリット

動画コマースは、画像やテキストよりもリアルなイメージを伝えられる方法として人気です。しかし、動画コマースのリアリティによって、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。

以下では、動画コマースのメリットについて解説します。

コンバージョン率の向上につながる


動画によって商品を使用しているイメージを伝えられると、コンバージョンにつながりやすくなります。消費者心理として、商品の購入によって得られるベネフィットがわかると、商品購入に対する熱量が高くなる傾向があります。そのため、動画によって具体的なイメージを伝えることは、購入意欲を高めるうえで非常に効果的です。

販売チャネルを増やせる


動画コマースを導入する際は、動画配信プラットフォームを利用するのが一般的です。プラットフォームとしては、YouTubeやInstagramのように動画に特化したSNS、MILをはじめとする専用サービスなどがありますが、いずれにしても販売チャネルの幅が広がります。

とくに近年では、動画配信プラットフォームを利用するアクティブユーザーの数も増加傾向にあるため、新規顧客の獲得や売上の拡大にもつながるでしょう。

情報の拡散を狙える


動画コマースならではのメリットとして、SNSなどの媒体において拡散が期待できる点があげられます。SNSでは気になったコンテンツを気軽にシェアできるため、動画コマースを目的として制作した動画がシェアされる可能性もあります。

動画内で紹介されていたコーディネートが気になったとき、思わず友だちに知らせたくなるような新商品を見つけたときなどに、SNS上でシェアしたくなるユーザーは一定数います。SNS上の口コミやシェアをもとに認知度を高める方法は、バイラルマーケティングとも呼ばれており、近年トレンドとなっているマーケティング手法の一つです。

より多くの情報を伝えられる


画像やテキストに比べて、より多くの情報を伝えられる点も動画ならではの強みです。動画コマースによって伝えられる情報量は、一般的なECサイトに比べて5,000倍ともいわれています。ECにおいては情報量の不足が原因となって、ユーザーが離脱してしまうケースもあるため、多くの情報を伝えられる点は大きなメリットです。

動画コマースのデメリット

前述のとおり、動画コマースには従来型のECにはないメリットが多くあります。一方、導入や運用にあたっては、ハードルが高い部分もありデメリットといえるでしょう。

以下では、動画コマースのデメリットについて解説します。

コンテンツの制作コストが大きい


動画コマースを導入する場合、当然ながら商品を紹介するための動画が必須です。しかし、動画を制作するには、撮影や編集用の機材、照明やスタジオなどを用意する必要があります。

金銭的なコストはもちろん、工数やリソースの面でも負担は大きく、余力のない企業においては導入が難しいといえます。また、動画制作のスキルやノウハウが社内にない場合は、制作業務を外注しなければならないため、さらにコストがかかる可能性もあるでしょう。

効果の測定が難しい


動画コマースの効果測定は、Webサイトの分析とは大きく異なります。Web上のECサイトやLPであれば、アナリティクスでセッション時間やコンバージョン率を調べたり、ヒートマップを確認したりする方法が一般的です。

一方、動画の場合は再生完了率や総再生時間などを分析する必要があり、独特のマーケティングノウハウが求められます。そのため、はじめて動画コマースに挑戦する際は、効果測定や検証改善のフローを整備するにも苦労するかもしれません。

ユーザー側が受け取る情報を選びづらい


動画コマースでは情報量の多さが強みとなる一方、ユーザーにとっては受け取る情報を選びにくいデメリットもあります。とくに複数の商品を一つの動画内で紹介している場合には、自分の興味のありそうな商品がどこで紹介されるかわからず、ずっと見続けるのは負担にもなりかねません。

ECサイトのようにグロナビやメニューから候補を絞れないため、目当ての商品を探しにくいという意見もあります。

動画コマースにおすすめのプラットフォーム

動画配信プラットフォームとは、動画を作成・管理するツールのことです。近年、動画を活用する事例が増えていることから、初心者でも簡単に使用できるプラットフォームも多くリリースされています。

以下では、動画コマースを導入する際に、おすすめのプラットフォームについて解説します。

firework


fireworkは、動画制作から集客までを網羅できるオールインワンプラットフォームです。スタジオや特殊な撮影機材なども必要なく、専用アプリを利用するだけで5分でセットアップが完了します。

また、自社サイトにおける動画配信も可能となっており、購入までスムーズな導線を敷ける点も魅力的です。ライブ配信後の動画はアーカイブとしても利用できるため、ストックを貯めていきたい企業にも適しています。

買えるAmebaTV


買えるAbemaTV社は、サイバーエージェントとテレビ朝日が共同で運営するプラットフォームです。もともと芸能人が「ハンバイヤー」となって商品を販売する番組をAbemaTVで展開しており、新たなテレビショッピングのスタイルとして確立したものです。

しかし、のちに自社で企画・製造した商品を販売する形式となり、現在ではD2Cサービスとして、複数のプロダクトを手がけています。

MIL


MILは、次世代の動画マーケティングツールです。ストーリー分岐、ポップアップ、360°映像などを駆使して、クオリティの高い動画を制作できる点が強みです。企画や制作はもちろん、分析や改善までワンストップで対応できるため、さまざまなニーズに応えられます。

Instagram


Instagramは、画像や動画に特化したSNSプラットフォームです。主なコンテンツとしては、通常投稿のタイムラインである「フィード」、24時間で投稿が消える「ストーリーズ」、短尺動画に特化した「リール」などがあります。
さまざまな種類の情報をユーザーに情報を届けられる点が強みです。

YouTube


もっとも有名な動画配信プラットフォームであるYouTubeも動画コマースに利用可能です。世界的なプラットフォーム上に動画を掲載できるため、露出を増やす機会の創出にもつながります。一方、規約の面では厳しく規制されているため、ステマなどには気を付けましょう。

動画コマースの成功事例

動画コマースは従来型のマーケティングとは異なり、独自のノウハウが求められます。そのため、導入する際は他社の事例をもとに、自社の運用方法を検討するのがおすすめです。

以下では、動画コマースの成功事例について紹介します。

【インテリア】ニトリ


https://www.nitori-net.jp/ec/
株式会社ニトリが運営するECサイト「ニトリネット」内にある動画コマースは「ウチソト」です。シーズンに合わせた商品を動画で紹介しており、動画内の商品をタップすると、商品詳細や購入画面に遷移できます。商品を実際に活用しているシーンを見せることで、視聴者に購入後のイメージを伝えて購買意欲を高めている事例です。

【アパレル】RUNA


https://store.world.co.jp/s/ladies/runa/
株式会社ワールドが運営するファッションサイト「RUNA」の動画コマースです。洋服単体の動画ではなく、スタイリングを重視することによって、視聴者に着用イメージを伝えることに成功しています。

画面上に出現する二重丸マークをタップすると商品の詳細をチェックでき、コーディネートをタップするとアイテム詳細が記載されたポップアップが表示されます。また、お気に入りボタンをタップすると、動画視聴後にもう一度まとめて見られるため、独自のユーザー体験を実現している事例です。

【食品】ミウラタクヤ商店


https://miuratakuya.store/
ミウラタクヤ商店は、fireworkを導入して動画コマースを実装しています。チャコールバターコ―ヒーなどの健康食品を販売するほか、ダイエットに関する情報を発信しており、ユーザーのあらゆるニーズに応えています。
ECにおける課題でもある、売り手の顔が見えない点を動画コマースによって解消しており、顧客との信頼関係構築に成功しています。

【アパレル】三愛水着楽園


https://www.san-ai.com/rakuen/
三愛水着楽園では、動画制作に特化したプラットフォームmilを利用して、動画コマースに取り組んでいます。動画コマースを目的としたクリエイティブを制作するのではなく、イベントで撮影された映像を動画コマースにも転用しています。既存の動画をもとに制作できれば撮影工数を抑えられるため、より手軽に動画コマースを導入できるでしょう。

【アパレル】INSECT COLLECTION


https://insect-collection.jp/
INSECT COLLECTIONは、俳優の香川照之氏が監修するアパレルブランドです。動画コマースの場合、興味のある商品を探しにくい点がネックとなりやすいのですが、目次を用意することによって顧客体験の改善を図っています。

まとめ

動画コマースを導入すると販売チャネルが広がるほか、消費者の商品購入までのステップを省略できます。うまく活用できれば、従来のECサイトよりも消費者の購買意欲を促進できるため、今後も成長が期待されている分野です。


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