【楽天市場「二重価格」の真相(1)】「広告枠」で不当表示か
楽天が11月3日から7日にかけて「楽天市場」で実施した「楽天日本一セール」において、不当な二重価格表示を行った疑いのある店舗が含まれていた問題で11日、同社は17店舗が審査プロセスを経ることなく元値を大幅に引き上げ、不当な価格表示により商品を出品していたことを明らかにした。
業界関係者によれば、店舗がこうしたセールに参加するためには、割引販売する商品の価格表示や説明などに問題ないかどうか、事前に審査を受ける必要があるという。審査に通った場合は、セール公式サイトからジャンル別にリンクされるセール用ページに当該商品が掲載されるほか、公式サイトの検索窓から商品が検索できるようになる。
こうしたプロセスを経由せずに割引商品を販売するのが、一部報道で三木谷浩史社長が7日の会見で発言したとされる「勝手セール」だ。公式サイトからの導線こそないものの、商品名に「77%オフ」などと入れておけば、楽天市場の通常検索や検索エンジンなどからの流入は期待できるわけだ。
楽天の説明では「勝手セール」で不当な価格表示をしていたのが17店舗。大きく報じられたシュークリームのほか、スルメイカ、ダイコンの計3店舗については「新規登録された商品で過去の比較できる元値がなかった場合や、 以前からその元値が表示されており、元値の不当な引き上げとセール前の審査で認定できなかった事例」(楽天市場事業PR推進グループ)としている。
7日の会見で三木谷社長は「正式な日本一セールは厳正な審査をやっていた」と話したと一部メディアで報じられたが、11日の会見で同氏は「ミスリーディングだった」と述べたと同じく一部メディアで伝えられており、事前に価格設定を確認した商品にも不当表示があったことを事実上認めている。
同社では「引き続き詳細確認を進めている」としているが、不当表示は本当にこれしかないのか。セール公式サイトで紹介された、タイムセール商品にも不当表示の疑いがあることが本紙調査で分かった。
タイムセールで「77%OFF」として紹介された掃除機(=上画像)。「当店通常価格 7万8975円、価格9195円」で販売していたが、12日現在、この店舗は「改装中」となっている。
当該店舗では、楽天側が強制改装措置を取ったことを認めた上で「『通常価格』という表記や価格の根拠を(楽天から)求められている」と明かす。この店舗では米国からの並行輸入品を安く販売しており、比較対照となる価格には日本の正規代理店が定めた価格を設定していた。ただ、米国で販売する同等商品は、日本で流通しているものとは型番が異なっており、このため楽天側から比較対照価格について問題視されているようだ。
業界関係者によると、タイムセール商品の枠「広告枠」として販売されているが、「一部有料枠はあるものの、実際には人気店舗が優先で、基本的には無料で掲載されている」という。ただ、当然のことながら楽天が審査した商品が掲載されるわけだ。当該店舗では「いろいろな思いはあるが、出店者という立場上、説明を求められた場合は回答を用意するしかない」と話す。
この店の場合、セール前に「残り20個」と表示されていたセール品が実際には1個しか販売していなかったと匿名掲示板などで指摘されており、「合わせ技」での改装措置となったようだ。この点について、当該店では「管理ミスで通常時にセール対象の商品が想定より売れてしまい、セール開始時に在庫が残ってない状態になってしまった」と釈明している。
セールの「顔」ともいうべき商品でこうした問題が発生しているのはなぜか。業界関係者は「確かに事前審査はしているが、『通常価格』の設定については店舗にゆだねている部分が大きいようだ」と実情を明かす。本紙では「セール開始時からさかのぼった8週間のうち、4週間での販売実績がない」疑いのある価格を比較対照として使ったタイムセール商品を、他にも確認している。
楽天では「店舗へのメールやRMS(店舗管理システム)ログイン画面などを通じて、日ごろから二重価格の正しい表示に関する確認を促すなど、事業者の意識を高める取り組みを実施している」(楽天市場事業PR推進グループ)と説明しており、出店店舗の関係者によれば、RMSのログイン画面には「(不当な二重価格などの)行為が発覚した場合には、たとえ月商規模が1億円を超える店舗様であっても契約解除とさせていただいております」との文面もあったという(=下画像)。楽天では「勝手セール」で不当表示のあった17店舗については1カ月のサービス停止処分を下したことを公表しているが、処分が甘すぎるのではないか。この点についても楽天に問い合わせたが、具体的な返答はなかった。(つづく)