注目のライブコマースとは? 世界のトレンドや注目の背景、市場規模を解説
2023年5月8日に新型コロナウイルス感染症が「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から「5類感染症」に移行したことで、消費行動が変化しました。こうした中、アパレル、化粧品を中心に広がってきた「ライブコマース」も、進化が期待されています。
では現在、ライブコマースの市場規模はどれくらいなのでしょうか。本記事はECサイト運営者の方に向けて、世界におけるライブコマースの現状や市場規模、今度の予測などについて解説していきます。各国の成長要因や様子を知り、ライブコマースの市場がどのようになっていくか、日本で行うにはどうすれば良いかイメージしていきましょう。
ライブコマースとは
ライブコマースとは、ライブ配信を通じてオンラインで商品を売ることができる新しい販売形式のことを指し、「ライブ配信」と「eコマース」を掛け合わせた造語となっています。ライブコマースにおいて、視聴者はライブ配信をみながらリアルタイムで配信者に向けてコメントしたり質問することができ、ECサイトでは難しい双方向のコミュニケーションが可能になるので顧客を商品購入へつなげやすいことがメリットです。
ライブコマースの仕組み
ライブコマースは、ショップの販売員やインフルエンサーが自社サイトやライブ配信機能をもつアプリなどを通して配信を行い、ライブで商品を紹介しながら商品ページに誘導することで購入を促す仕組みです。
日本の現状は? どれくらいの人が視聴している?
日本の現状はどうなっているでしょうか。
2023年2月にNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本良江)が運営するインターネットアンケートサービス「NTTコム リサーチ」が発表した調査結果によれば(※)、「ライブコマース」についての認知は31.9%。視聴経験があるのは3.9%。調査当時のライブコマース視聴経験者は多いとは言えないものの、視聴経験者の商品購入経験率は54.8%と半数を超えており、可能性は十分といえます。
特徴的なのが、特に20代・30代の若年層ほど商品購入経験率が高いこと。視聴経験はなくても、視聴意向がある人も全体の2割強で、利用者拡大は確実といえそうなのです。
※<調査概要>
1. 調査対象 : 「NTTコム リサーチ」登録モニター
2. 調査方法 : 非公開型インターネットアンケート
3. 調査期間 : 令和4年12月7日(水)~令和5年1月17日(火)
4. 有効回答者数 : 566名(スクリーニング調査:20,644名)
5. 回答者条件 :●スクリーニング調査:15歳以上の男女・全国 ●本調査:ライブコマース認知者
6. 回答者の属性 :スクリーニング調査
ライブコマースの市場規模
では改めて、世界的にはライブコマースの市場規模はどうなっているのでしょうか。世界最大規模である中国を始め、日本、アメリカのEC・ライブコマースを覗いていきましょう。
中国
中国では、アリババ傘下のECサイトである淘宝(タオバオ)が2016年に「淘宝直播(タオバオライブ)」を開設したことをきっかけに、さまざまなプラットフォーム上でライブコマースが広まっていきました。PMGとアリ研究院が発表した調査によると、中国のライブコマース市場は2019年では4,338億元(約8兆2,422億円)であったのに対し、2021年には1兆9,950億元(約37兆9,050億円)近く成長したと予想されておりライブコマースの市場は大きく拡大しています。
中国でライブコマースの拡大が進んだ要因の1つとしてインフルエンサーマーケティングも挙げられます。中国のインフルエンサーはKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれ、1時間で数億円の売り上げを作り上げる人も出現するほど。さらには、元々中国のECサイトでは偽物が出回っており、ユーザーの商品に対する信頼性が低いと言われているため、安全への意識や生産元の確認といった意味でもライブコマースへの関心は高まっている状態です。
中国での事例
・百思寒(BAISIHAN)
引用:http://www.baisihan.com
中国のアパレルブランドである百思寒は、認知度向上と顧客獲得のためにライブコマースに注力しました。顧客のニーズを満たすために、ライブ前に商品の選出やクーポンの配布などさまざまな工夫を施したようです。その結果、1日の配信で300万着以上を販売し、2万人以上のファンを獲得しました。
日本
日本でライブコマースは2017年に始まったと言われていますが、ライブコマースの認知率は、全体の30%と言われており中国ほど普及してはいません。しかし、新型コロナウイルスの感染流行に伴い、オンラインショッピングが勢いを伸ばしていることから今後成長していくことが予想されます。コロナの影響で実店舗での販売ができない中、ライブコマースで店舗スタッフによる商品紹介やコミュニケーションの場を設けたことで、アパレルを中心に規模を拡大させているようです。
日本での事例
・ベイクルーズ
引用:https://baycrews.jp/
ベイクルーズは大手アパレル企業の中でもいち早くライブコマースに着手し、成功しました。自社サイトでライブを配信し、平均で5000名近くの視聴者を獲得しています。ライブ経由では1週間で平均90万円ほどの売り上げを出したり、スタッフに人気も出てくるなどといった効果が出ているようです。
・株式会社三越伊勢丹ホールディングス
引用:https://www.mistore.jp/shopping
三越伊勢丹ホールディングスは、ライブコマースでお中元やギフト商品を紹介することによって、たった2回の配信で3万人を超える視聴者を集めました。さらに、お中元ストア全体の売上が前年比2倍となる成功を収めています。
アメリカ
アメリカのオンラインショッピングの市場規模は中国に次いで世界第二位であり、ライブコマースの認知度が高まってきています。近年では、大手企業GAFAのうちの3社であるGoogle、Amazon、Facebookがプラットフォームでライブ配信サービスを提供し始めたことも、ライブコマース拡大の一因となっているようです。
さらにコロナウイルスの影響もあり、2020年に60億ドルであった売り上げが2021年には110億ドル、さらに2024年には350億ドルに到達すると予測されています。アメリカの大手ショップであるWalmart(ウォルマート)もライブコマースに力を入れてきており、さらなる成長が見られるでしょう。
引用:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00886/
アメリカでの事例
・Walmart shop live
引用:https://www.walmartshoplive.com/
ウォルマートでは、月に1、2回提携ブランドのライブコマースを行っています。2021年のクリスマスに4つのライブコマースの特別番組を配信して功を奏したことをきっかけに、自社サイトで配信するようになりました。TwitterやYoutube、Facebookとも連携してライブを配信することで多くの視聴者を集めているようです。
なぜライブコマースが注目されているのか
それでは、なぜライブコマースが注目されているのか、その理由を探っていきましょう。
ライフスタイルの変化
コロナウイルスの感染拡大で自宅で過ごす時間が増えたことが、ライブコマースの注目につながる大きなきっかけとなっています。従来の実店舗での接客販売が困難になったことで、購入者が家にいながらも実店舗のような購入体験ができるライブコマースに興味を持つ人が増加しました。コロナ前の生活に戻りつつある現在でも、ライブコマースはその利便性からさらなる発展が期待できますね。
デジタル化の進展
近年では、情報源がテレビなどのマスメディアからインターネットに移行している影響もあり、幅広い世代がSNSを利用しています。そのため、普段から使用する端末で気軽に見れるライブ配信はより身近となり、ユーザーにとって受け入れやすいものとなってきているのです。特に若い世代に人気のあるInstagramといったSNSにもライブ配信機能が追加され、この流れに乗ったライブコマースはより拡大を見せるでしょう。
ECの課題解決につながる
ライブコマースの利点の1つに、「商品を実際に手に取れない」といった商品に対する不安を解決できるということが挙げられます。オンラインショッピングに抵抗がある人でも、ライブコマースで配信者が実際に使用している様子を見せたり、ユーザーの疑問に答えたりすればある程度の不安感は払拭され、購入のハードルは下がるでしょう。ECサイト(配信)側にとっても、1回のライブ配信で多くの人に商品魅力を届けられるといったメリットがあります。
ライブコマースの今後
男性商材のニーズが増加する
ライブコマースは、女性の方が利用者が多いと考えられる方も多いかもしれませんが実は男性の需要も高まっているのです。その背景にはメンズコスメ市場の成長があります。近年では、「メイク男子」という言葉があるように男性のメイクアップが一般的になりつつあり、コスメ業界全体で性別の障壁を取り除くイメージ改革が行われています。これまでは実店舗に入りづらかったという男性も、オンラインであれば気軽に購入でき、使用感や使ってみた感想がわかるライブコマースは、需要が高まりそうですね。
ライバーの台頭
日本でも中国のように、ライブ配信を専門とするインフルエンサーである「ライバー」が増加していく可能性があります。インフルエンサーの起用が増えていくにつれて、インフルエンサーの事務所やライブ配信をサポートする企業の出現など、ライブ配信周辺の環境もより整えられていくでしょう。
国境を超えてつながりやすくなる
ライブコマースは今後国境を超えていくことが予想されます。特に、中国は日本製品に定評があり、中国市場に展開したいと考えている日本企業にとって、全世界と繋がれるライブコマースは良い機会となるでしょう。今はありませんが、今後はライブコマースに字幕や翻訳機能がついたり、越境ECへの対策も必要となってくるかもしれません。
まとめ
本記事では、ライブコマースの世界での市場規模や事例、今後の展開などを解説してきました。ライブコマースは日本では認知度や利用率はそこまで高くなく、まだ浸透しているとは言えませんが、さらなるデジタル化等によって今後も成長していくであろう販売形式です。特に相性が良いアパレルやコスメ産業などは、さらなる発展がみられるでしょう。
黎明期である今のうちにライブコマースを始めてみれば、早期参入のメリットを受けられるかもしれませんね!ぜひ、導入を検討してみてください。
資料DLはこちら
https://ecnomikata.com/docrequest/category/164/