話しかけるだけで音楽再生やスケジュール管理、調べものができる「Amazon Echo」発売開始
高機能な聞き取り・コマンド処理能力を内蔵したデバイス
Amazonは、かつてSF小説の中にしか存在しなかった近未来的な新製品を発表した。話しかけるだけで人が要求することを理解し、返事をして作動するデバイス「Amazon Echo」だ。
「Amazon Echo」は、見かけはただの黒い筒に過ぎない。しかし、この円筒形デバイスは常時オン状態で待機しており、内部ではバーチャルアシスタントが利用者の命令を聞いて情報を知らせたり、作業を開始あるいはストップしたりする。スピーカーが内蔵されており、人間のような声で返事もする。
上部にある7つのマイクロフォンは、ビーム形成技術を使ってユーザーの声を特定し、部屋のどこから話しかけられても聞き取ることができる。もしも、周囲の音が大きすぎるときは、その音をフィルタにかけて、命令を聞きやすくすることもできる。また、音声はAmazonのクラウドベース・ウェブサービス経由で処理されるため、要求の認識は時間とともに改善されていく。
360度全方向スピーカーを内蔵し、ユーザーの端末からBluetooth経由で接続するほかに、Amazon Music Library、Prime Music、TuneIn、およびiHeartRadioの音楽再生機能が標準でサポートされている。
さらに、地方ラジオ局やNPR、TuneIn経由のESPNその他の情報源によるニュースや気象情報を聞くこともできる。ユーザーの質問には、Wikipediaから得た基本情報や単語の意味など、即座に答えてくれる。
身近になった近未来SFの世界
「Amazon Echo」は、胴体の下半分はメッシュ状になっており、上部にはコントロール関連のボタンを集中して配置されている。
サイズは直径約8㎝×高さ23.5㎝。本体の一番上は回転式のボリュームリングやコントロール関連を内蔵し、その下には低音用と高音用の専用スピーカーが内蔵されている。
最上面には7つのマイクを内蔵して話しかける声だけを検出する技術を採用。部屋中のどこから話しかけても操作を行えるように設計されている。
指示を出すときは、最初に「ウェイクワード」と呼ばれる特定のワードを言う。全く知らない第三者が、勝手に指示を出すことはできない。アメリカの家庭が舞台となっている英語版のPRムービーでは「アレクサ」という名前になっている。
たとえばお姉さんが「アレクサ、私のダンスミュージックリストを再生」と言うと、音楽が始まる。そこへ弟が入ってきて「音楽をストップ」というと音楽が止まる。
「エベレストの高さは?」といった質問にはすぐに答えられるし、「『カンタロープ(マスクメロン)』ってどう書くの?」と聞くと、「cantaloupeです」と答える。「今朝のニュースを聞かせて」と言えば、ラジオ局のニュース番組を聴くこともできる。
お母さんが料理をしながら「テーブルスプーン1杯は、ティースプーンで何杯分?」と聞くと、ちゃんと答える。
天気予報やカレンダーの確認、単語検索など、パソコンやスマートフォンで行っていた作業の多くを音声だけでできる。
まさしくSF小説の人工知能装置のようだが、その本当の心臓部はクラウド上に存在している。インターネットを通じて多くの情報を得られるようになっているのだ。また、専用のアプリからコントロールすることも可能だ。
将来は「声」だけでショッピングも
「Amazon Echo」は通常価格199ドル(約2万3000円)、また同社のPrimeメンバーであれば99ドル(約1万1500円)という大幅な割引額で入手できる。ただし、実際に製品を入手するためにはAmazonからの招待を受けることが必要で、サイト内から招待リクエストを送ることができるようになっている。
このようなデバイスが普及して行けば、近い将来、音声だけで商品を買うことも可能になるだろう。実際、アマゾンでは「Amazon Echo」を通じアマゾンのサイトで商品を買ってもらうという青写真は持っているように思われる。
ただし、似たような機能を持つiOS向け秘書機能アプリ「Siri」の場合、誤作動による問題が起きたこともある。
「声」で買い物をするとなると、似たような別の商品が届いたり、予測を超えて高価な品物が届いたりする怖れもあるため、現実にはまだ精度を上げていく必要があるだろう。
それでも未来世界への扉が開かれたという新鮮な驚きは禁じえない。