EC市場で売上拡大につながる、「不正検知による安全性」と「シームレスな購入体験」とは? Riskified事業戦略発表会レポート
Eコマースにおける不正取引防止およびリスクインテリジェンスを提供するRiskified(以下、同社)が2022年に日本法人を設立して1年。2023年8月29日に事業戦略発表会を行った。「今後、日本市場でのEコマースの健全化を目指していく」という同社が行った最新の市場調査も発表。ここではその概要を紹介していく。
安全かつスムーズな決済を ネットショッピングにおける消費者の動向
ネットショッピングの際に面倒だと感じることについて、同社の調査によると「住所など配送先情報の入力(33.1%)」「SMSを使った本人認証(31.8%)」「3Dセキュア(28.1%)」が上位に上がっていたという。また、面倒だと感じたことが原因で買い物を辞めた割合は56.7%にも及び、EC事業者にとっては大きな売上の機会損失だといえる。
ネットショッピングで決済がスムーズにいかなかった場合の行動として、「他の決済方法に変える(38.8%)」「他のサイトで買う(36.9%)」「購入することを諦める(21.9%)」の順で回答。2025年3月末をめどにECサイトへの本人認証(EMV3-Dセキュア)の導入義務化が経済産業省から発表され、安全にかつ消費者の手間を省く決済方法の提供がEC事業者に求められている。
安全性と購入体験向上の二軸でアプローチ
安全にかつ決済をスムーズにしたい消費者の要望に対して、同社アカウント・エグゼクティブのナボン恵子氏は「不正を阻止することだけに焦点をあてた従来型の不正検知ツールでは、売上上昇の視点は考慮されていない。売上上昇と不正阻止はどちらも紙一重であり、不正阻止の安全性と購入体験の向上の両軸でアプローチする」と述べる。
また従来型の不正検知ツールではデバイス情報の認識はできても、デバイスのなりすましを見抜く技術はないという。Riskifiedでは、デバイスのなりすましを見抜く技術はもちろんメールアドレスがいつ作られたのか、ソーシャルアカウントとの不一致等も加味して不正判定を行う。
最新技術とAIを活用し、一瞬で不正を見抜くことでシームレスな決済と購入体験を向上させ、かつリピート顧客増加にもつながるとしている。
販売ポリシー関連の課題と対策に注目が集まる
ナボン氏は、海外不正事情について「販売ポリシーをはじめとするポリシーの悪用が深刻な被害を与えている。被害額は43兆円規模であると推定される」という。販売商品をお一人様2点と制約を設けた場合、1人が複数のアカウントを作成し商品を業者レベルになる量を購入するなど事業者側としては好ましくない買い手を販売ポリシーの不正に該当するとしている。
また返品ポリシーでは、度を越した返品により事業者側は返品に伴う送料や返品後のプロセス等で1つ物が売れたとしても利益につながらない場合がある。1つの商品が返品された場合、販売価格の26.5%ほどが返品にかかる費用だとされているが、悪い時で50%にのぼるのではないかと同社のナボン氏。
販売ポリシーや返品ポリシーなどのポリシー関連の課題が海外では大きく認識されており、対策に注目が集まっているようだ。
Eコマース市場は国内外問わず右肩上がりで成長しているが、決済のみならず全体の健全化が必要とされている。9月以降、ポリシー関連のレポートがRiskifiedから発表されるとのことでEC事業者は不正対策と売上向上のための手段として参考にしたい。
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